いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

加谷珪一著「ポスト新産業革命:「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書」(CEメディアハウス)

今日はもう11月の最終日、明日からはもう12月、もう2025年も終わりである。 本書が上梓された2018年にとっての2025年とはもう少し先の未来というイメージであり、二つのことを除いては既に本書において2025年の経済が予期されていたのである。 その二つとは…

松原隆一郎&荒山正彦&佐藤健二&若林幹夫&安彦一恵著「〈景観〉を再考する」(青弓社)

昨日、𝕏(旧Twitter)で東京の日暮里で建設中のマンションの写真についての投稿がタイムラインを賑わせていた。 建設中のマンションがこんなに大きいとは思わなかった。夕やけはもう見えない。 pic.twitter.com/aBEgqW4NO4 — Ian McEntire (@ikurobiscuits) …

長谷山彰著「罪と罰の古代史:神の裁きと法の支配」(吉川弘文館)

日本国憲法には以下の条文がある。 第三十一條何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 大日本帝国憲法には以下の条文がある。 第二十三條日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮󠄁捕監禁審問處…

小山慶太著「〈どんでん返し〉の科学史:蘇る錬金術、天動説、自然発生説」(中公新書)

科学の歴史を語る書物は数多いが、その多くは一直線の「進歩の物語」として描かれる。すなわち、誤った古くさい旧説が、真新しい新説に取って代わられ続けてきたというのが科学の歴史の描写だ。 しかし、科学とはそんなに単純なものだろうか? 本書はそのよ…

亜月ねね著「みいちゃんと山田さん」(講談社)

「ねえ、みいちゃん。こうして私達は出会って、いろんな事があったよね。私達の日々は確かにあったよね。これは、みいちゃんが殺されるまでの12か月のお話」 山田マミという名でキャバクラで働いていた女性が、10年前に殺害されたキャバクラの元同僚であるみ…

原田勝正著「鉄道の語る日本の近代 読みなおす日本史」(吉川弘文館)

先に記しておくと、吉川弘文館から刊行された本書はたしかに令和7(2025)年の奥付であるが、本書の原本は昭和52(1977)年の刊行であり、平成2(1990)年の改訂版を底本として再刊されたのが本書である。これはどういう時代かというと、JRでなく国鉄であり、新幹…

德薙零己著「ゆるしてと言えない」

舞台は曇天の墓場から始まる。一人の少女が墓参りをしているところを一人の少年が眺め、少年の存在に気づいた少女はその場を少年に譲る。 墓から離れていく少女。 だんだんと降り出す雨。 少女は傘をささずに濡れながら歩き、少年の差し出した傘の中にも入ろ…

武光誠著「世界地図から歴史を読む方法:ナショナリズムと移民編」(河出書房新社)

本書の「はじめに」でいきなり核心が書いてある。 「民族と民族とは、本来は対立し合うものだ」 人間の心の中には、「自分と異なる習慣や文化を持つ者」を拒否しようとする自然な感情がある その上で、こう書いてある。 異なる民族が出会わなければ紛争は起…

アダム・グラント著,楠木建監訳「HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学:あなたの限界は、まだ先にある」(三笠書房)

アダム・グラント氏の著作は楠木建氏が翻訳するものであるという図式が成立している。ドラッカーの著作とは上田惇生氏が翻訳するものであり、トマ・ピケティの著作とは山形浩生氏が翻訳するものであるという図式が成立しているように、同じ方の著作を同じ方…

畑中三応子著「体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか」(ベスト新書)

結論から先に言うと、「栄養学をナメるな」である。 特定の食べ物だけ食べて健康になることもないし、特定の食べ物の効能でダイエットできることもない。 同じ食品でも、時代、研究方法、そして資金提供元によって結論が180度変わることがある。具体的には健…

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2025年12月号 特集「P. F. ドラッカー 『真摯さ』とは何か -経営と人生の指針-」(ダイヤモンド社)

真摯さ。 ドラッカーの提唱するこの単語を知らないビジネスパーソンはそう多くはないであろう。 しかし、今回の特集はその単語そのものにあえて向かい合っている。 Integrity という単語を「真摯さ」と訳した先人の方々は慧眼であったといえる。経営を為す上…

木村尚三郎&渡辺昌美&堀越孝一&堀米庸三著「中世の森の中で」(河出文庫)

自然を守ろう。 このフレーズを生まれてからこれまで何度耳にしてきたことか。 今に生きる全ての人は自然を守るのを当たり前とし、自然環境破壊を悪と捉えて糾弾する。それが正しいと思っている。 しかし、今から1000年前のヨーロッパはそのような悠長なこと…

廣瀬匠著「天文の世界史」(集英社インターナショナル)

地球上に人類が誕生する前から夜空には星が存在していたわけで、夜空を見上げられるならたならば星という概念は必ず理解できる。しかし、その正体はわからない。太陽と月を除いたなら暗闇に浮かぶ点であり、ごく稀に現れる彗星を除けば色とりどりの点でしか…

デイヴィッド・マクレイニー著,安原和見訳「思考のトラップ:脳があなたをダマす48のやり方」(二見書房)

中国の駐大阪総領事である薛剣のSNSへの書き込みの異常さに端を発する中国の暴走は、中国外交部や報道官が高圧的な文章を添付する画像をネットに載せるというわけのわからない事態になっている。 おそらくであるが、高圧的な文章をネットにアップすることで…

雨穴著「変な地図」(双葉社)

「変な家」や「変な絵」の作者である雨穴氏の最新作である。 rtokunagi.hateblo.jp rtokunagi.hateblo.jp rtokunagi.hateblo.jp 図書と言う語の語源を調べると四書五経の一つである易経にたどり着く。 「河出図洛出書聖人則之」が図書と言う語の語源であり、…

ハンナ・アレント著,ジェローム・コーン編,中山元訳「責任と判断」(ちくま学芸文庫)

社会が全体主義と化して人が人を殺すのを厭わなくなるとき、そこには全体主義特有の社会の空気が存在する。ナチスが、ファシズムが、共産主義が人を殺してきたとき、人を殺して良いと考える空気が全体主義の社会を覆い、多くの人の命を奪い去ることを厭わな…

キャシー・オニール著,久保尚子訳「あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠」(インターシフト)

私事であるが、私はITエンジニアとして給与を稼いでいる身である。そして、日常においては否応なくAIにもビッグデータにも接しなければならないという立場になっている。といっても、操るというわけではなく、手のひらに載せられているという感じか。どうい…

山本紀夫著「ジャガイモのきた道: 文明・飢饉・戦争」(岩波新書)

本書にも掲載されているが、アイルランドのダブリンにはジャガイモ大飢饉の記念碑が存在する。アイルランド人にとっては絶対に忘れることのできない惨劇の記録であり、飢饉に苦しむ人を描き出している像を目にするだけで、ジャガイモ大飢饉がいかなる惨劇で…

デビッド・ロブソン著,土方奈美訳「The Intelligence Trap:なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」(日本経済新聞出版)

頭がいい人ほどバカな間違いをする。 一見するとあり得ない言葉である。多くの人は高いIQや学歴を持つほど正しい判断ができると信じている。「あの専門家が言うのだから」「有名大学を出ているのだから」といったバイアスで、間違ってはいないと考えることが…

マシュー・ハインドマン著,山形浩生訳「デジタルエコノミーの罠」(NTT出版)

従来であれば莫大な時間、莫大な予算、莫大な人員を必要としてきたことを、インターネットの普及は短期間で、廉価で、極論すると自分一人でできるまでにした。そこには本来であれば「平等で民主的な空間」ができあがる、はずであった。 本書を著したマシュー…

磯田道史著,備前やすのり画,河田惠昭監修「マンガでわかる災害の日本史」(池田書店)

どんなにマンガを目の敵(かたき)にする人であろうと、我が子がマンガを読んでいたらそれだけで発狂するような人であろうと、このマンガは絶対に文句を言わない、そういうマンガである。 何しろ日本がこれまでどのような災害に遭ってきたのか、日本に生きる…

魚柄仁之助著「国民食の履歴書:カレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃが」(青弓社)

カレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃが。好き嫌いは別として、この中の一つとして日本人であれば知らない人はいない。同時に、江戸時代の人が食べていたところを想像できる食事や調味料もない。 本書は日本のカレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃ…

詫摩佳代著「人類と病:国際政治から見る感染症と健康格差」(中公新書)

人類が感染症と向かい合うとき、一つの現実が突きつけられる。 感染症に国境は無いという現実である。 国境を接している隣国や海を挟んだ近隣の国で感染症が観られた場合、それはかなりの可能性で自国でも感染症が起こることを意味する。また、自国で感染症…

兵藤裕己編注「説経節 俊徳丸・小栗判官 他三篇」(岩波文庫)

来日した12歳の少女を性的な店で働かせていたとして逮捕されたというニュースが流れてきた。この事件に対する怒りは多くの人が表明していることであり、私もまた、この犯人に、また、この店の利用者に対する怒りを表したい。表したいが、この犯人とこの店の…

ローレンス・レビー著,井口耕二訳「PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」(文響社)

今年の秋、そして冬と、日本のアニメーション産業の一つの現実が露見した。 放送延期を余儀なくされている作品が多々発生しているのだ。 本来であれば今年の秋もしくは冬に放送予定であったのに来年の放送予定となった作品もあれば、半年間、すなわち26週間…

フリードリヒ・ハイエク著,村井章子訳「貨幣発行自由化論 改訂版:競争通貨の理論と実行に関する分析 」(日経BP)

リンク先の書籍そのものは2020年の刊行である。 しかし、ハイエクの記したこちらの書籍は今から半世紀以上前の書籍であり、もっと言えば私の生まれる前の論文である。 その本が脚光を浴びたのはビットコインをはじめとする暗号通貨が話題になったからである…

川本重雄著「住まいの日本史」(吉川弘文館)

本書冒頭にもあるように、日本の住まいとは兼好法師が徒然草で書き記した「家の造りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にもすまゐ、あつきころわろき住居(すまい)はたえがたきことなり」である、はずであった。 ところが、本書巻末でフランスの地理学…

髙井ホアン著「戦前不敬発言大全:落書き・ビラ・投書・怪文書で見る反天皇制・反皇室・反ヒロヒト的言説(戦前ホンネ発言大全)」(パブリブ)

以前紹介した「戦前反戦発言大全」。実は第二巻であり、第一巻は別途刊行されている。 rtokunagi.hateblo.jp 本日紹介するのはその第一巻である。 昭和21(1946)年の今日に公布され、昭和22(1947)年5月3日に施行された日本国憲法は、国民に日本国の主権がある…

スティーブン・デスーザ&ダイアナ・レナー著,上原裕美子訳「「無知」の技法:不確実な世界を生き抜くための思考変革」(日本実業出版社)

今年の9月19日(金)から、病院や薬局での受付での保険証確認手順の一つとして、マイナンバー機能を搭載したスマートフォンでの保険証確認が加わった。これまでマイナンバーカードを置いて、暗証番号を入力するか顔認証をするかを選択するという手順に変わり、…

小田中直樹著「感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか:世界史のなかの病原体」(日経BP)

本書は2020年7月に刊行され、COVID-19が世界中で猛威を振るい、緊急事態宣言が出され、まだワクチンが開発されていない時期に急いでまとめられたものである。 著者の小田中直樹氏は社会経済史を専門とする歴史学者であり、医療従事者ではない。しかし、歴史…