德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

永井孝尚著「なんで、その価格で売れちゃうの?:行動経済学でわかる「値づけの科学」」(PHP新書)

ドラッカーは企業の目的を顧客の創造にあると説いた。 本書に記した価格設定戦略は、その全てが企業の顧客創造戦略である。 なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」 (PHP新書) 作者:永井 孝尚 PHP研究所 Amazon 転売ヤーがよ…

早坂隆著「世界のロシア人ジョーク集」(中公新書ラクレ)

昨日紹介した早坂隆氏の著したアネクドート集の最新刊である。 rtokunagi.hateblo.jp 本書のターゲットとなっているのは2022年2月24日に侵略戦争をはじめたロシアであり、プーチン、ロシア軍、ロシアの文化や歴史について容赦ないアネクドートが繰り広げられ…

早坂隆著「世界のマネージョーク集:笑って学ぶお金とのつきあい方」(中公新書ラクレ)

著者の早坂隆氏はノンフィクション作家として有名であるが、本書のように世界各地のジョークを集めた新書も刊行しており、本書はそうしたジョーク集の一冊である。 本書は金銭、経済、マネーの面から見た国際関係についてのアネクドートを掲載し、かつ、その…

高橋慎一朗著「中世鎌倉のまちづくり:災害・交通・境界」(吉川弘文館)

鎌倉は鎌倉幕府によって成立した新しい都市ではない。万葉集の時代から集落が存在し、令制国制定時に鎌倉に郡衙を置く相模国鎌倉郡が成立している。ただし、時代の趨勢を担うまでの大都市になるのは源平合戦期を迎えてからであり、鎌倉時代になると京都と肩…

相澤央著「雪と暮らす古代の人々」(吉川弘文館・歴史文化ライブラリー)

歴史を学ぶのに文献資料だけでは十分ではない。地図を拡げて出来事の起こった場所を確認すると違う姿が見えてくる。その地図が地形図であると、平面の地図ではわからない高低差が出来事を左右する要素であることを知ることができる。 さらにもう一点加えねば…

桃崎有一郎著「平安京はいらなかった:古代の夢を喰らう中世」(吉川弘文館)

何ともミもフタもないタイトルであり、平安時代叢書を書いている私としては逡巡するところのあるタイトルであるが、読んでみればまさにその通りである。 すなわち、平安京は完成しなかったという事実である。 どうして完成しなかったのか? 結論から言えば、…

朧谷寿著,伊東ひとみ編「平安京の四〇〇年:王朝社会の光と陰」(ミネルヴァ書房)

現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」。 今のところ、このドラマの舞台は平安京である。無論、紫式部の生涯を追いかけることになるわけであるから、平安京を飛び出して越前国(現在の福井県)に向かうシーンはあるはずであるが、その他の舞台は平安京とその周…

德薙零己著「おじいちゃんといっしょ」

こちらのブログでの読書記録の紹介は毎朝です。ですが、本日は夕方のこのタイミングです。 いまも落ち着きを取り戻せなくなっている自分がいるからです。 令和6(2024)年3月24日午前1時30分、私の父が亡くなりました。87歳の生涯でした。 だからこそ、今日は…

木全美千男著「誰にも書けなかった賃下げ・首切りご指導いたします:戦略的人件費カットの極意を伝授!Q&A」(日本法令)

昨日のこいつ↓の本である。 rtokunagi.hateblo.jp こいつの悪行についてはこちらを参照。 togetter.com 昨日の記事で有限会社モンジュアソシエイトが倒産していたことは記したが、モンジュアソシエイトを検索するとを検索すると、このページだけは出てくる。…

木全美千男著「賃下げ・首切り・借金切りまとめてご指導いたします 改訂版」(日本法令)

地球上にどれだけの本があるかわからないが、読む価値の無い本というのは一部しか無い。そして、その一部に該当するのがこれである。 その作者がこいつ↓。 平成27(2015)年の年末から話題になっていたブログ「すご腕社労士の首切りブログ」でお馴染みの有限会…

今野晴貴著「ブラック企業2:「虐待型管理」の真相」(文春新書)

何度かネタにしているが、私はX(旧Twitter)上で渡邉美樹にブロックされている。 ブロックされていること自体は特に問題ない。ビジネス解説マンガを描き記し、公開し、マネジメントとはどうあるべきか、会社はいかに人を活かすビジネスを展開していくべきか…

今野晴貴著「ブラック企業:日本を食いつぶす妖怪」(文春新書)

今から12年前にTwitter(現X)でこんなのを作った。 Twitter上では #ブラック企業カルタ というハッシュタグを付けて大喜利的に書き込んでいたが、これらは全て本書にある実話である。 「あ」明るくなってきてからやっと帰れる 「い」命に関わる日々 「う」…

鈴木透著「スポーツ国家アメリカ:民主主義と巨大ビジネスのはざまで」(中公新書)

まずは以下の表を見ていただきたい。 順位 クラブ名 資産価値 所属 (USD) (JPY) 1 Dallas Cowboys 90.00億 1兆3500億 NFL 2 New York Yankees 71.00億 1兆0650億 MLB 3 Golden State Warriors 70.00億 1兆0500億 NBA 3 New England Patriots 70.00億 1兆0500…

鈴木透著「食の実験場アメリカ:ファーストフード帝国のゆくえ」(中公新書)

アメリカという国家は奇妙な国家である。 少なくとも現時点で地球上最強の国家であり、アメリカの影響を受けないでいられる生活を過ごすことのできている人など一人もいない。それこそ、反米を国家の大義として掲げ、アメリカに敵対することを是とする社会に…

飯田一史著「『若者の読書離れ』というウソ」(平凡社新書)

最近の若者は…… このありふれたフレーズは古代エジプトには既に登場している。多くは、年長者の若い頃と比べて現在の若者は劣っていることを年長者が揶揄するフレーズであり、このフレーズを口にすることで自らが優れていることを自賛するために用いられる。…

繁田信一著「『源氏物語』のリアル:紫式部を取り巻く貴族たちの実像」(PHP新書)

源氏物語は現在でこそ古典であるが、今から1000年前は時代の最先端を取り入れた小説であり、読者にとっても源氏物語に描かれている世界は身近な世界であった。源氏物語のリアルタイムの読者にとっては身近な出来事が作品の中で展開されており、紫式部が詳し…

中塚武監,伊藤啓介&田村憲美&水野章二編「気候変動と中世社会」(臨川書店)

日本は国家を作り出したときに中国大陸の国家様式を模倣した。それこそが国家であり正解であると考えたからである。 その前提が崩れた。 必ずしも中国大陸の国家様式が正解であるとは限らず、現実に即した社会を構築してもいいのだと気づかされ、さらには中…

中塚武監編,若林邦彦&樋上昇編「先史・古代の気候と社会変化」(臨川書店)

文字史料が誕生する前から日本列島には人間が住み、日々の生活を過ごしていた。夏は暑く、冬は寒く、梅雨の時期には雨が頻繁に降る世界が続いていた、はずである。 紀元前4000年頃に中国大陸から稲作が伝わってからは定住が珍しくなくなり、それまでのように…

鳥嶋和彦著,霜月たかなか構成協力「Dr.マシリト 最強漫画術」(集英社)

令和6(2024)年3月8日金曜日、衝撃的なニュースが駆け巡った。 鳥山明氏死去。 このニュースの衝撃は日本国内に留まらず、国境を越えて世界中に響き渡り、鳥山先生の作品を愛する世界中のファンから、鳥山先生の死を惜しむ声が、そして、鳥山先生への追悼の声…

木村茂光著「「国風文化」の時代(読みなおす日本史)」(吉川弘文館)

遣唐使が当たり前であった頃、日本の社会は唐からの移植であった。唐の政治制度、唐の律令、唐の文化こそが正解で、唐の社会を日本にも構築することこそ正解と見做されていた。 その唐が無くなった。無くなっただけでなく、その後の五代十国の混乱は日本が手…

中川右介著「文化復興 1945年:娯楽から始まる戦後史」(朝日新書)

昭和20(1945)年8月15日から同年12月31日までを扱う一冊である。 玉音放送の後、主な大都市は焦土と化した日本にあって、大都市が焦土と化していた時期に、映画、演劇、音楽、出版、スポーツなどの文化の担い手たちがどのように再起し、娯楽産業を復興させて…

木暮太一著「すごい言語化:「伝わる言葉」が一瞬でみつかる方法」(ダイヤモンド社)

ジョージ・オーウェルが「1984年」で描いた世界は、ニュースピークと題して言語体系を新たなものに置き換えようとしている過程の世界である。それも執政者にとって都合良く改変しつつある世界である。 たとえば、「1984年」の世界では good はあっても bad …

楠木建&杉浦泰著「逆・タイムマシン経営論:近過去の歴史に学ぶ経営知」(日経BP)

一言で言うと、残酷な本だ。 何が残酷か。 まさに自分が体験してきたことが、同時代の経済や経営を語るのではなく、歴史なのだという現実を突きつけられる残酷さだ。 自分の体験してきたことが歴史になっていることのショックはともかく、まさに体験してきた…

中川右介著「第二次マンガ革命史:劇画と青年コミックの誕生」(双葉社)

昭和20(1945)年8月15日をどのように迎えたか。あの時代を体験した人の多くはその瞬間を、そして、それからの苦労を饒舌に語る。それだけ鮮明な記憶となって脳裏に刻まれている。それからの日本がどのような歩みを見せたかもまた、多くの人が饒舌に語る。苦し…

奥田尚著「石の考古学(読みなおす日本史)」(吉川弘文館)

石はどこにでも存在する。人類が土器を生み出す前に加工してきたのは、まずは石である。ゆえに、日本の歴史を辿ると最初は石器に行き着く。 それでいて、日本の歴史に石はそこまでの重要性を持っていない。全くの不必要な存在であったというわけでも、現在は…

スティーブン・ピンカー著,幾島幸子&塩原通緒訳「暴力の人類史(上・下)」(青土社)

ときおり考えることがある。学生運動や国電の遵法闘争などが猛威を振るっていた時代にSNSがあったらどれだけ荒れたのだろうかと。 SNSが当たり前になった時代になって痛感するのが、そもそもSNSを通じて民意が広く伝わる現在だからこそ、かつてであれば存在…

八條忠基著「詳解 有職装束の世界」(角川ソフィア文庫)

現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」で有職故実にも着目が集まるようになったが、有職故実は何も平安時代だけの話ではない。何なら現在も必要とされる知識である。 平安時代最盛期の文化、習俗、貴族社会の生活を詳細に記録し、時間を越えても再現する。こう…

片木篤著「チョコレート・タウン:〈食〉が拓いた近代都市」(名古屋大学出版会)

中世と近代とを分けるのは何か? 様々な指標があるが、生活基盤が自給自足を前提としているか、自給自足を放棄しているかも一つの指標である。 日本史でも西洋史でも中世世界を思い浮かべていただきたいが、中世世界はそこまで交流が盛んではない。交流が無…

デヴィッド・グレーバー著,片岡大右訳「民主主義の非西洋起源について:「あいだ」の空間の民主主義」(以文社)

民主主義は古代ギリシャで誕生した、特に古代ギリシャの都市国家アテナイで誕生した、というのが一般認識になっている。 その一般認識に真正面から向かっているのが本書である。民主主義の非西洋的起源に目を向け、多くの国や地域で参加型・包括型の統治形態…

坊主 @bozu_108 著「大喜利の考え方――あなただけの「おもしろい発想」を生み出す方法」(ダイヤモンド社)

大喜利。それは、お題という制約のある中でどれだけ多くの人の関心を集める回答を示すことができるかを競う知的遊戯である。本書の著者である坊主 @bozu_108 氏はX(旧Twitter)という場所で日に何度か大喜利のお題を投稿し、多くの回答を集めている人である…