いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧

トーマス・セドラチェク著,村井章子訳「善と悪の経済学:ギルガメシュ叙事詩、アニマルスピリット、ウォール街占拠」(東洋経済新報社)

この本が出てからもう10年になる。 経済学と言えばアダム・スミスから始まるモノ尾いう概念が当たり前であった時代に旧約聖書の時代から、あるいはギルガメシュ叙事詩の時代から、経済を見つめ人類の歴史を経済という側面から捉えていく。人が複数名いれば必…

あんの秀子著,館尾冽&サイドランチ画「マンガでわかる徒然草」(池田書店)

徒然草は古典の名作であり、古典の教科書には間違いなく載っている。 ただし、古典の宿命として言葉の壁が存在する。鎌倉時代末期から南北朝時代に生きた人であるならばリアルタイムのこととして、出来事も、言葉も何ら障壁となることなくスムーズに読める。…

永嶺重敏著「読書国民の誕生:近代日本の活字メディアと読書文化」(講談社学術文庫)

図書館司書であれば絶対に知っている英文がある。 Bools are for use. Every person his or her book. Every book its reader. Save the time of the reader. Library is a growing organimsm. 私が図書館司書資格をとったときは二番目が Books are for all.…

ディミトリ・マークス&ポール・ブラウン著,小林啓倫訳「データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」」(日経BP)

世の中を嘆く声の一つに「スマホでサイトを開くと、本文はともかくエロティックな広告がついている」というのがある。その答えは「あなたがスマホをどう使っているかが調べられていて、あなたがスマホを使うたびにあなたに合わせた広告を表示している」であ…

トーマス・H・ダベンポート著,小林啓倫訳「データ・アナリティクス3.0:ビッグデータ超先進企業の挑戦」(日経BP)

ビッグデータという言葉が初めて登場したとき、ビジネスにおける誇大広告の、それも、よくある誇大広告と考えた人が多かった。そして、そのフレーズを通り過ぎた人は今も誇大広告と考え続けている。しかし、ビッグデータに接した人はその概念を完全に捨て去…

ロレッタ・ナポリオーニ著,村井章子訳「人質の経済学」(文藝春秋)

人身売買は過去の話ではない。北朝鮮が複数の日本人を拉致しておきながら未だに返さずに平然としていることは許されざる蛮行であるが、拉致をやらかしている北朝鮮の言い分では「拉致問題は解決済み」とのことらしい。当然ながら、北朝鮮の拉致問題は拉致被…

ロレッタ・ナポリオーニ著,村井章子訳「イスラム国:テロリストが国家をつくる時」(文藝春秋)

今から10年前、Twitter(現𝕏)上で世界中に日本のネットユーザーの悪ふざけが拡散された。ことの始まりは中東のテロ組織ISISが2015年1月20日に日本人を人質にとり殺害予告動画を公開したことに始まる。このようなやり口はISISのいつものやり口であり、他国…

会田大輔著「南北朝時代:五胡十六国から隋の統一まで」(中公新書)

三国志の時代がおわって統一国家である晋が誕生したものの、晋は永続的な長期王朝とはならなかった。隋による統一を迎えるまでのおよそ300年、中国大陸には統一王朝が存在していなかった。その代わりに数多くの国が誕生しては滅び、万里の長城の向こうからの…

清水義範著「暴言で読む日本史」(メディアファクトリー新書)

日本の歴史を通史で眺めると、時代時代でその時代の代表するフレーズが出てくる。 本書はそうしたフレーズのうち、暴言として扱われることの多いフレーズを時代順に列挙し、フレーズの背景、フレーズを生んだ時代の背景、そして、フレーズの真偽について記す…

数土直紀著「日本人の階層意識」(講談社選書メチエ)

先に平等についてトマ・ピケティとマイケス・サンデルが語った書籍についての記事を公開した。 rtokunagi.hateblo.jp さて、ここ日本において、日本人の中でどのような平等意識が形作られているかを考えるとき、合わせて考えなければならないのが、そもそも…

トマ・ピケティ&マイケル・サンデル著,岡本麻左子訳「平等について、いま話したいこと」(早川書房)

平等を望まない人はいない。しかし、平等を求める人もいない。 どういうことか? 自分より恵まれている人がいるのを知ったとき、人は平等を求める。具体的には自分の境遇を、自分より恵まれていると同じ水準にまで引き上げることを求める。それを平等と主張…

倉本一宏著「平安貴族列伝」(日本ビジネスプレス)

六国史は平安時代初期までの日本の正史であり、日本書紀が律令制成立まで、続日本紀が奈良時代を扱っている。そして残る四つの歴史書、すなわち、日本後紀、続日本後紀、日本文徳天皇実録、日本三代実録で、四〇〇年間続いた平安時代のうちはじまりの一〇〇…

リーアンダー・ケイニ―著,関美和訳「ジョナサン・アイブ:偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー」(日経BP)

いま、多くの人がiPhoneを使っている。iPadを使っている。しかし、思い浮かべていただきたい。そもそも今世紀の初めには存在しなかったのだ。素晴らしい商品が存在するとき、もっと素晴らしい商品を世に送り出す企業は多々ある。だが、存在しないときに素晴…

橘木俊詔著「ポピュリズムと経済:グローバリズム、格差、民主主義をめぐる世界的問題」(ナカニシヤ出版)

ポピュリズムやポピュリストという言葉は今世紀に入ってから盛んに喧伝されるようになっている。特に、自らと異なる政治信条の人に対する罵倒語として頻繁に使われる。 しかし、概念としてはもっと前から存在している。そして、世間一般でポピュリズムやポピ…

武田尚子著「チョコレートの世界史:近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石」(中公新書)

本日は日本中でチョコレートで一喜一憂する日であるが、改めて振り返るとチョコレートとは奇妙な存在である。 本書はチョコレートの歴史を振り返って一冊の新書にまとめた書籍であり、本書を読むと、チョコレートという奇妙なお菓子が数奇な歴史を経て現在の…

ジョージ・オーウェル著,照屋佳男訳「全体主義の誘惑:オーウェル評論選」(中央公論新社)

「動物農場」や「一九八四年」といった全体主義社会への警鐘を鳴らした作家のジョージ・オーウェル。オーウェルの思想や主張はこうした作品のみに現れているのではなく、数多の評論にもまた、数多くの形で現れている。 本書はオーウェルの残しら評論の中から…

上横手雅敬著「源平争乱と平家物語」(角川選書)

平家物語は軍記物の白眉であり、栄華を極めた平家が滅び行く様子を“基本的には”史実に則って語りあげていく壮大な物語である。この国の全てを手にしながらわずか五年で壇ノ浦に沈んだ平家、その平家に滅亡寸前に追い込まれながら勢力を手に入れてこの国を手…

雨宮寛二著「サブスクリプション:製品から顧客中心のビジネスモデルヘ」(角川新書)

ビジネスにおける有名なフレーズがある。 「顧客がほしいのはドリルでは無い。穴である」 穴がほしいからドリルを買いに来るのであり、ドリルを買わなくても穴が開けられる方法があるならばドリルを買わずに済ませるのは当然の帰結だ。仮にここにドリルを貸…

ぴよぴーよ速報著「小学生でもわかる世界史」(朝日新聞出版)

YouTubeでこちらの動画を御覧になった方は多いのではなかろうか? www.youtube.com 本書は、こちらの動画を作成している方が、動画で解説する世界史の内容をより詳細に書き記した一冊であり、小学生向けのわかりやすさを前面に押し出しながら、実際には中学…

小林賢章著「「暁」の謎を解く:平安人の時間表現」(角川選書)

「平安時代を歴史小説で全部書く」という野望のもと、平安時代叢書を書き始めてから今年で17年目になる。平安時代叢書の中で記している日付は基本的に旧暦であり、また、元号での表記を基本として西暦は補完に用いている。 ところがここで二つ問題がある。 …

高橋慎一朗著「武士の掟:中世の都市と道(読みなおす日本史)(吉川弘文館)

鎌倉時代以降の武家政権が定めた法律、特に都市部に課したルールをまとめた本であるが、何というか、そのようなルールを定めなければならないほど我が国の祖先の民度は低かったのかと、ただただ愕然とする。 盗むな 殴りつけるな 襲いかかるな 人を誘拐して…

加藤陽子著「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)

戦時中の言論や証言を聞く限りでは、日本全体が戦争に賛成し、戦争に全てを捧げていたように思えてしまう。しかし、意外に感じるかも知れないが、明治から戦前の言論は現在の生きる我々が考えるよりは自由があり、戦争反対の意見も普通に存在していた。軍人…

釘貫亨著「日本語の発音はどう変わってきたか:「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅」(中公新書)

次の単語を読んでいただきたい。 「一匹」「二匹」「三匹」。 日本人はこれらの語を「イッピキ」「ニヒキ」「サンビキ」と読み上げる。 「匹」は「ヒキ hiki 」なのだが、前の数字が1だと「ピキ piki 」になり、3だと「ビキ biki 」になる。bとpとの行き…

山際康之著「プロ野球VS.オリンピック:幻の東京五輪とベーブ・ルース監督計画」(筑摩選書)

昭和6(1931)年、全米選抜野球チームが来日し、東京六大学選抜チームと対戦したことで日本国内での野球熱が高まり、プロ野球創設の気運が高まってきた。 ただ、問題も起こった。 この日米野球を契機とする文部省からの通達により、学生はアメリカなど他国でプ…

中野剛志著「政策の哲学(集英社シリーズ・コモン)」(集英社学芸単行本)

令和7(2025)年1月28日火曜日、埼玉県八潮市で信じられない事故が起こった。道路に突然穴が空き、トラックが頭から道路に空いた穴に落ちてしまったのである。 これだけでも信じられないニュースであるのに、このニュースによってもっと信じられないニュースが…

村中直人&大利実著「脱・叱る指導:スポーツ現場から怒声をなくす」(カンゼン)

「〈叱る依存〉がとまらない」(紀伊國屋書店)や「「叱れば人は育つ」は幻想」(PHP新書)で、叱ること、叱られることの現実を書き記してきた臨床心理士の村中直人氏が、スポーツの世界における叱ることの無意味さと叱られることのマイナスについて、スポー…

村中直人著「「叱れば人は育つ」は幻想」(PHP新書)

「〈叱る依存〉がとまらない」で叱ることの現実を書き記した村中直人氏の著作である。 rtokunagi.hateblo.jp 前作では叱ることの現実と叱られることの影響について記したが、本作では様々な分野で活躍する四名の有識者との対談で、叱ることと叱らないこと、…

村中直人著「〈叱る依存〉がとまらない」(紀伊國屋書店)

2025年1月27日(月)のフジテレビの10時間以上に亘る記者会見を観た人は多いであろう。全時間をフルで観続けたわけでなくとも、その抜粋を御覧になった人も多いであろう。それがネットの都合に合わせた切り貼りであったにしろ、記者会見がどのように繰り広げら…