いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2026-01-01から1年間の記事一覧

小野圭司著「太平洋戦争と銀行:なぜ日本は「無謀な戦争」ができたのか」(講談社現代新書)

私事で恐縮だが、私は銀行で働くITエンジニアである。窓口に座ることが業務ではないとは言え、多少なりとも銀行業務について理解しているつもりではいる。 いや、理解していたつもりであった。 本書を読んでその自負が完全に消えた。 我々の先人達の尋常なら…

鷲田清一著「京都の平熱:哲学者の都市案内」(講談社学術文庫)

京都とは何とも奇妙な都市である。徹底した人工的な都市でありながら、雄大な歴史が都市全体に重なって日本随一の歴史都市となっている。ゆえに、観光客や修学旅行の学生の多くは京都の歴史を巡ろうとする。 しかし、京都は現在進行形で日本有数の大都市であ…

大島正二著「漢字伝来」(岩波新書 新赤版 1031)

来月8日投開票日の衆議院議員総選挙に向けて立憲民主党と公明党が合併して「中道改革連合」が誕生し、新たなロゴマークが作られたことに対し、「中国共産党の関係組織に『中革連』という組織があり、そのロゴマークに似ている」という話がネットに出ている。…

ジョナサン・ハイト著「社会はなぜ左と右にわかれるのか:対立を超えるための道徳心理学」(紀伊國屋書店)

衆院選が来月8日投開票となることがほぼ決まった。 高い支持率もあって、高市内閣の与党である自民党と日本維新の会が今回の衆院選で優位に立つと見られていたが、ここに来て新たな勢力が誕生して、そこまでの与党圧勝とはならないのではないかという観測が…

ジェームス・M・バーダマン&里中哲彦著「はじめてのアメリカ音楽史」(ちくま新書)

年末になるとベートーヴェンの交響曲第九番、いわゆる「第九」が流れる。第九は今でこそクラシックの名曲となっているが、作品発表当時は斬新な音楽であり、当時の最先端の音楽であった。ナポレオン戦争後の貧困に喘ぐウィーンだからこそ生まれた音楽であり…

藤尾潔著「大震災名言録」(アドレナライズ)

平成7(1995)年の昨日、阪神淡路大震災が襲いかかった。 この点について忘れてはならないことがある。 それは、平成7(1995)年1月17日だけが阪神淡路大震災の被害に苦しんだ日ではないという点である。 たとえば震災翌日である平成7(1995)年の今日は、阪神淡路…

岡本勝著「禁酒法:酒のない社会の実験」(講談社現代新書 1284)

何度かネタにしているが、私はたしかに禁酒に成功した人間である。酒を呑まなくなったのは令和になってすぐの頃だから、もう7年になろうか。厳密に言えば父の葬儀後の会食で献杯したときに日本酒を微量飲んだから、全くのゼロではないが。 だからといって、…

タラ・スワート著,土方奈美訳「脳メンテナンス:無限の力を引き出す4つの鍵」(早川書房)

スピリチュアル。それは学力で負けた知的弱者が、いっさい努力することなく今までの自分のままで社会的弱者から社会的強者へと一発逆転するために用いる似非科学。 本来ならば。 ところがここに科学のメスが入ると、やっていることはスピリチュアルと同じで…

橋場弦著「民主主義の源流:古代アテネの実験」(講談社学術文庫 2345)

どうやら、2月8日、もしくは、2月15日に投開票というスケジュールで衆議院解散総選挙が執り行われる情勢である。現在の国会が民意を反映しているか否かを考えたとき、必ずしも是とは言えない。多少なりとも民意を正しく国政に反映させることを考えたとき、こ…

岡田哲著「明治洋食事始め:とんかつの誕生」(講談社学術文庫)

かの有名な漫画はこのように語っている。 人間そんなに偉くなることはねえ。ちょうどいいってものがあらあ。いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間偉過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいっ…

森枝卓士著「カレーライスと日本人」(講談社)

第二次大戦まで日本には徴兵制があった。日本人男性は20歳(玉音放送直前は19歳)になったら徴兵検査を受け、合格となったら軍人として最低でも2年間、軍人として過ごさねばならなかった。 これがものすごく不評であった。圧倒的大多数の日本人が軍人になど…

德薙零己著「おじいちゃんといっしょ:成人式?」

昭和12(1937)年生まれの佐藤善次さんは、戦争で両親と父方の祖母と兄を失い、三歳下の弟とともに祖父のもとで生きていた。 その祖父が亡くなったのは佐藤善次さんが高校一年生のときの夏休み。善次さんは弟と養うために高校をやめ、工場で働き始めた。高校の…

島田裕巳著「帝国と宗教」(講談社現代新書)

去年の12月26日、といっても二週間前のことであるが、Thredsでの私の投稿が世界的にちょっとした話題になった。hatenaの仕様上動画そのものを掲載できないが、リンク先をクリックすると12月26日にこの動画を上げることに意味、賛同、批難をご理解いただける…

櫻井孝昌著「アニメ文化外交」(ちくま新書)

失われた30年。かつて経済の各分野で全世界のトップランナーであった日本は、電子機器で脱落し、家電で脱落し、そしていま、自動車が脱落しつつある。そんな日本経済において、数少ないトップランナーであり続けている分野、それが、コンテンツ産業である。 …

谷川多佳子著「メランコリーの文化史:古代ギリシアから現代精神医学へ」(講談社選書メチエ)

気が沈む。憂鬱な気分。今に苦しみ、過去を悔い、未来が見えなくなる。 どうしてこのような心情に陥るのかは医学や薬学に携わる多くの人が研究し、苦しむ人を救っている。たしかに完全ではないかもしれない。たしかに今もなお苦しみの末に最悪の選択を選んで…

クレイトン・M・クリステンセン著,依田光江訳「ジョブ理論:イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン)

アメリカでの話。 そのフードコートチェーンではミルクシェイクがよく売れていた。評判のミルクシェイクなのだろうと調べてみたが、特にこれといって特色のあるものではない。何ならどの店でも買えるミルクシェイクだ。 しかし、多くのドライバーがその店に…

一ノ瀬俊也著「戦場に舞ったビラ:伝単で読み直す太平洋戦争」(講談社選書メチエ)

本書については一度、当ブログにて記事を載せた。それでももう一度記事をアップするのは、現在、一つの問題が起こっているからである。 ネット上で数多くの投稿と論考が繰り広げられており、そのどれを取り上げるべきか悩んだが、元議員で某政党の副党首であ…

前坂俊之著「太平洋戦争と新聞」(講談社学術文庫)

年末年始の帰省や親戚との集まりの中で、去年流行語となった「オールドメディア」という言葉をより実感できたという人はいるのではないだろうか。かくいう私もそうした人間の一人である。親戚の中にテレビや新聞という既存メディアだけが情報源であり、もっ…

ニコラス・ウェイド著,山形浩生&守岡桜訳「人類のやっかいな遺産:遺伝子、人種、進化の歴史」(晶文社)

この本を買ったのは10年前のことになる。 たしかにその通りなのだろうと言いたくなる反面、さすがにそれは言い過ぎだろうと言いたくなる内容も、また、これは間違っていないかと感じる内容も含まれている。本書の毒を洗い流してくれているのは安心の山形訳で…

金谷治訳注「論語」(岩波文庫)

私事ですが、本日1月4日は私の誕生日である。 誕生日なので何か特別な一冊を紹介しようと思った私の目に飛び込んできたのが、この一冊、そう、論語である。 本日の記事のリンク先は電子書籍版であるが、私の持つ本書は紙の書籍であり、仕事終わりに書店に寄…

桜井万里子著「古代ギリシア人の歴史」(刀水書房)

民主主義は古代ギリシアで誕生した。これは事実である。 今の我々の民主主義は古代ギリシアで誕生した民主主義と同じである。これは否である。 古代ギリシアの民主主義は、そのポリスの市民権を持つ成人男性にしか認められない権利であり、また、義務であっ…

西内啓著「統計学が日本を救う:少子高齢化、貧困、経済成長」(中公新書ラクレ)

今から10年前、この本を読んで衝撃を受けた。 衝撃の理由は簡単で、それまで自分が感覚的に捉えていた諸々のことが、ある一面では否定され、ある一面では肯定された。それも、客観的な証拠とともに突きつけられたのである。 先に肯定について記すと、介護で…

德薙零己著「おじいちゃんといっしょ 第56話:和装?」

実はこの作品、おじいちゃんとよし子、となりの章子ちゃんの三人の着ている和装は生成AIで作成した画像である。また、ラスト2ページの女の子二人の冬物衣装も生成AIで作成した画像である。 AIによる作品製作については賛否両論あるし、否定意見のほうが強い…