いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2026-01-01から1年間の記事一覧

藤尾慎一郎著「弥生時代の歴史」(講談社現代新書)

初代神武天皇が即位したのは紀元前660年2月11日である。厳密に言うと、日本書紀に記されている「辛酉年春正月庚辰朔」を現在のカレンダーにすると紀元前660年2月11日となるため、明治維新後に2月11日を紀元節とし、戦後22年目を迎えた昭和42(1967)年に建国記…

倉本一宏著「敗者たちの平安王朝:皇位継承の闇」(角川ソフィア文庫)

想像していただきたい。明治維新についての同時代歴史資料として扱われる書籍の中に、令和になってから書かれた書籍が混ざっていたらどうなるか? じつはこれが平安時代の皇位継承についてはあり得る話になっているのだ。 本書は、上代の武烈天皇を例に挙げ…

足達英一郎&村上芽&橋爪麻紀子著「投資家と企業のためのESG読本」(日経BP)

ESGという言葉を知ったのは、私がまだ大学院の経営学研究所に通っていた頃だから、もう10年にもなる。現在でこそありふれたビズワード、さらには時代遅れのビズワードとすら扱われることの多いESGであるが、今から10年前は最先端の概念であり、現在でもESGの…

德薙零己著「おじいちゃんといっしょ 51: 選挙?」

明治時代、選挙で投票できたのは直接国税15円以上の納税者のみであった。現在の感覚で行くと年収800万円以上の人ということになるが、当時は現在よりも格差の激しい時代であり、また、日本国全体が貧しかったこともあって、選挙で投票できるのは総人口の1%ほ…

大村大次郎著「関税の世界史」(宝島社)

人間誰しも税金を払いたくないと考える。税金は使わせるものであっては払うものではないと考える。税金を払うのは他の誰かにすべきだと考える。 そう考えたとき、関税というのは他人に税金を払わせる手段であるとも言える。 実際には他国からの輸入品に対し…

満薗勇著「消費者と日本経済の歴史:高度成長から社会運動、推し活ブームまで」(中公新書)

失われた30年の犯人がどこにいるのかを簡単に突き止めることはできない。誰もが100%被害者であるとは言い切れず、誰かが100%加害者であるとも言い切れない。 一人一人の個人単位における選択が、一社一社の企業単位における選択が、小さな単位ではその時点…

荒俣宏著「決戦下のユートピア」(文春文庫)

戦時中にも人は生きていた。 戦時中にも暮らしはあった。 戦時中に生きた人達も、今に生きる我々と同じ、人間であった。 総力戦、一億玉砕、滅私奉公、欲しがりません勝つまでは……、そうした大仰なスローガンがあふれ、庶民の生活は灰色一色に塗りつぶされて…

橋本努&金澤悠介著「新しいリベラル:大規模調査から見えてきた「隠れた多数派」」(ちくま新書)

ピケティは「資本とイデオロギー」において日本政治の例外性を語っている。「先進国の選挙民主主義における亀裂構造の全般的な発展における唯一の真の例外」とし、長期に亘り政権を担ってきた自民党を地方農民有権者と都市ブルジョワジーの支持政党であると…

山口真一著「炎上で世論はつくられる:民主主義を揺るがすメカニズム」(ちくま新書)

本書刊行は今年の1月である。 もう一度書き記す。本書刊行は今年の1月である。 本書の刊行計画を立案した時点ではまさか、本書刊行のタイミングと衆議院の解散総選挙が重なるとは夢にも思っていなかったであろう。それが何たる運命の悪戯であろうか、これ以…

リチャード・ボールドウィン著,高遠裕子訳「GLOBOTICS:グローバル化+ロボット化がもたらす大激変」(日本経済新聞出版)

現在は衆議院議員総選挙の選挙期間中である。首班指名に直結するこの国で最も重要な選挙と形容してもおかしくない選挙であり、各政党の党首が今後の日本の産業について様々な主張を掲げている。 ここまではいい。 問題は、今後の日本の成長戦略について時代…

古川緑波著「ロッパ食談 完全版」(河出文庫)

古川緑波という人物を御存知であろうか? 戦前から終戦直後にかけて活躍したコメディアンであり、下の名前をカタカナ表記にした「古川ロッパ」という表記のほうがより知られているであろう。文筆業としては古川緑波、コメディアンとしては古川ロッパと二つの…

坂東国男著「永田洋子さんへの手紙:『十六の墓標』を読む」(彩流社)

もし、小学校一年生の夏休みの宿題に読書感想文として原稿用紙三枚分の文章を書いたことがあるならば、あるいは、1+1を暗算で計算できたならば、あなたは誇っていただきたい。 坂東国男よりはるかに優れた人間である、と。 坂東国男とは誰か? こいつであ…

永田洋子著「十六の墓標(上・下・続)」(彩流社)

連合赤軍事件を扱った小説を書いてからもう18年が経つ。 ameblo.jp 平安時代叢書においてもそうだが、私は小説を書くとき、小説の題材に関連する資料に必ず目に通す。今から18年前に連合赤軍事件を扱った小説を書いていた頃は当時の警察資料や新聞記事、その…

カトリーン・マルサル著,高橋璃子訳「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?:これからの経済と女性の話」(河出書房新社)

この頃、テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」で起きた一つの放送回が大きな議論を呼んでいる。小学6年生の男の子が「6人兄妹の長男を代わってほしい」と依頼し、霜降り明星のせいやさんが一家の家事と育児を1日代行するという内容だった。番組のテイストとし…

トマ・ピケティ著,山本知子訳「エコロジー社会主義に向けて:世界を読む2020-2024」(みすず書房)

ピケティの21世紀の資本が大ブームとなってから13年が経過した。あの頃、書店に並んだピケティの本を手にして、ピケティの説く格差拡大の主張に目を通した人は多かったのではなかろうか。 ただ、他国での状況はわからないが、日本では一過性のブームに終わっ…

トマ・ピケティ著,山本知子&佐藤明子訳「来たれ、新たな社会主義:世界を読む2016-2021」(みすず書房)

21世紀の資本を読んだ方であれば御理解いただけるであろう、上位数パーセントへの富の集中と格差の拡大について、21世紀の資本刊行以後、著者の在住するフランスを中心とする世界各国の情勢について述べている。ただし、宇露戦闘についての記述は無い。当然…

德薙零己著「神めのな祭~AI短編漫画集~」

AI漫画短編集と謳っているが、現時点ではまだ一冊のみである。 ただ、今後とも増えていくことは考えられる。 AIでマンガを作る。既に多くの人が着手しているであろう。私もその中の一人に名を連ねる。ただし、完全にAIに委ねているわけではない。 マンガとい…

鎌田浩毅著「日本史を地学から読みなおす」(講談社現代新書)

動かざること山の如し 国破れて山河あり こう考えていられるのはせいぜい数百年程度の話であり、千年規模で考えれば、山も川も動くものである。 何なら数年レベルで捉えれば大地も動くものだと理解できるはずである。令和6(2024)年の元日の能登半島を思い浮…

呉座勇一著「平家物語と太平記:通説の虚像を暴く」(朝日新書)

德薙零己の平安時代叢書は全20集からなっている。1集あたりだいたい25年、長いと50年を一つの作品としているが、第十七集だけは例外である。 治承三(一一七九)年一一月一七日。治承三年の政変。平家が日本国の天下を獲得。 元暦二(一一八五)年三月二四日…

小野圭司著「太平洋戦争と銀行:なぜ日本は「無謀な戦争」ができたのか」(講談社現代新書)

私事で恐縮だが、私は銀行で働くITエンジニアである。窓口に座ることが業務ではないとは言え、多少なりとも銀行業務について理解しているつもりではいる。 いや、理解していたつもりであった。 本書を読んでその自負が完全に消えた。 我々の先人達の尋常なら…

鷲田清一著「京都の平熱:哲学者の都市案内」(講談社学術文庫)

京都とは何とも奇妙な都市である。徹底した人工的な都市でありながら、雄大な歴史が都市全体に重なって日本随一の歴史都市となっている。ゆえに、観光客や修学旅行の学生の多くは京都の歴史を巡ろうとする。 しかし、京都は現在進行形で日本有数の大都市であ…

大島正二著「漢字伝来」(岩波新書 新赤版 1031)

来月8日投開票日の衆議院議員総選挙に向けて立憲民主党と公明党が合併して「中道改革連合」が誕生し、新たなロゴマークが作られたことに対し、「中国共産党の関係組織に『中革連』という組織があり、そのロゴマークに似ている」という話がネットに出ている。…

ジョナサン・ハイト著「社会はなぜ左と右にわかれるのか:対立を超えるための道徳心理学」(紀伊國屋書店)

衆院選が来月8日投開票となることがほぼ決まった。 高い支持率もあって、高市内閣の与党である自民党と日本維新の会が今回の衆院選で優位に立つと見られていたが、ここに来て新たな勢力が誕生して、そこまでの与党圧勝とはならないのではないかという観測が…

ジェームス・M・バーダマン&里中哲彦著「はじめてのアメリカ音楽史」(ちくま新書)

年末になるとベートーヴェンの交響曲第九番、いわゆる「第九」が流れる。第九は今でこそクラシックの名曲となっているが、作品発表当時は斬新な音楽であり、当時の最先端の音楽であった。ナポレオン戦争後の貧困に喘ぐウィーンだからこそ生まれた音楽であり…

藤尾潔著「大震災名言録」(アドレナライズ)

平成7(1995)年の昨日、阪神淡路大震災が襲いかかった。 この点について忘れてはならないことがある。 それは、平成7(1995)年1月17日だけが阪神淡路大震災の被害に苦しんだ日ではないという点である。 たとえば震災翌日である平成7(1995)年の今日は、阪神淡路…

岡本勝著「禁酒法:酒のない社会の実験」(講談社現代新書 1284)

何度かネタにしているが、私はたしかに禁酒に成功した人間である。酒を呑まなくなったのは令和になってすぐの頃だから、もう7年になろうか。厳密に言えば父の葬儀後の会食で献杯したときに日本酒を微量飲んだから、全くのゼロではないが。 だからといって、…

タラ・スワート著,土方奈美訳「脳メンテナンス:無限の力を引き出す4つの鍵」(早川書房)

スピリチュアル。それは学力で負けた知的弱者が、いっさい努力することなく今までの自分のままで社会的弱者から社会的強者へと一発逆転するために用いる似非科学。 本来ならば。 ところがここに科学のメスが入ると、やっていることはスピリチュアルと同じで…

橋場弦著「民主主義の源流:古代アテネの実験」(講談社学術文庫 2345)

どうやら、2月8日、もしくは、2月15日に投開票というスケジュールで衆議院解散総選挙が執り行われる情勢である。現在の国会が民意を反映しているか否かを考えたとき、必ずしも是とは言えない。多少なりとも民意を正しく国政に反映させることを考えたとき、こ…

岡田哲著「明治洋食事始め:とんかつの誕生」(講談社学術文庫)

かの有名な漫画はこのように語っている。 人間そんなに偉くなることはねえ。ちょうどいいってものがあらあ。いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間偉過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいっ…

森枝卓士著「カレーライスと日本人」(講談社)

第二次大戦まで日本には徴兵制があった。日本人男性は20歳(玉音放送直前は19歳)になったら徴兵検査を受け、合格となったら軍人として最低でも2年間、軍人として過ごさねばならなかった。 これがものすごく不評であった。圧倒的大多数の日本人が軍人になど…