いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第5巻」(講談社)

鳴海は35歳としては幼かった。それは鳴海の生きてきた環境がもたらしたものだった。 那須田は24歳にしては大人びていた。それは那須田の生きてきた環境がもたらしたものだった。 キャリア官僚として美術館にやってきた那須田は、官僚として各部署を巡る宿命…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第4巻」(講談社)

経済的問題が理由で熟年離婚を思いとどまることとなった鳴海の両親であるが、まさにその経済的問題が鳴海の両親を行動させてしまう。 投資だ。 定年退職するまでキャリアを積んでいた鳴海の父は、銀行の投資信託に手を出そうとする。那須田の手助けもあって…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第3巻」(講談社)

鳴海の母が熟年離婚を考えているのではないか、そう思わせる場面が出てきた。 実際に熟年離婚となった場合、本人はどうやって生活していくのかの問題が生じるし、子である鳴海にとっても、面倒が二倍、経済的リスクも二倍になる。老夫婦が互いに支え合うこと…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第2巻」(講談社)

鳴海はマネーリテラシーを実感する最新について行けなくなり、お得な情報を知らないまま生きたことを知る。そこに鳴海は老いを感じるものの、親の介護をしている同僚女性から伝えられる現実の老いを聞き、そして、孤独死した伯母に思いを馳せる。仕事に生き…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第1巻」(講談社)

昨日の日経モーニングプラスFTを視聴した方の中には、番組で紹介されたこの漫画に興味を持った方も多いであろう。 www.bs-tvtokyo.co.jp 実は私は現時点で刊行されている10巻までを全て初版刊行時に購入しており、機会があればこの本を紹介しようと思ってい…

諸富徹著「私たちはなぜ税金を納めるのか:租税の経済思想史」(新潮選書)

税には三つの役割がある。 財源確保。 懲罰。 格差解消。 この三つである。 著者はこの三つの視点から、三十年戦争期のイギリスの財政問題より著述をスタートし、21世紀現在の租税の状況についてまでを叙述する。 議会制民主主義はイギリスより始まるが、イ…

ダニエル・ヴァルデンストロム著,立木勝訳「資産格差の経済史:持ち家と年金が平等を生んだ」(みすず書房)

2013年、センセーショナルな書籍がフランスで刊行された。トマ・ピケティの「21世紀の資本」である。翌年四月に英語版が刊行されると世界的なセンセーショナルを沸き起こし、年末には日本語版が刊行されで日本国内でも一大ブームを沸き起こした。格差の拡大…

マイケル・サンデル著,小林正弥&杉田晶子訳「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)」(早川書房)

先日、大谷翔平選手の年収が世界中のプロスポーツ選手の中で第9位になったというがニュースになった。その途方もない金額に仰天し、世界のスポーツ史上の金額の高さに圧倒させられた人も多かろう。 同時に、このように考える人もいるのではないだろうか? 「…

カーマイン・ガロ著,井口耕二訳,外村仁解説「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」(日経BP)

昨日の記事でも掲載したこちらの動画を御覧いただきたい。 rtokunagi.hateblo.jp この発表を耳にした人は誰もが熱狂している。英語をさほど理解せぬ私も、この発表から18年後に改めてこの動画を観てこの発表を聞いて改めて熱狂した。 一方で、全く熱狂させな…

カーマイン・ガロ著,井口耕二訳「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション」(日経BP)

まずはこちらを御覧いただきたい。 今でこそ iPhone は日常に当たり前に溶け込んでいる存在であるが、2007 年まではこの世に存在しなかった。スマートフォンという概念はあったが一般的ではなく、上記の動画のサムネイルにもあるように表面の半分近くをキー…

マイケル・サンデル著,鬼澤忍訳「これからの「正義」の話をしよう:いまを生き延びるための哲学」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

暴走したトロッコがこのままでは五人を轢き殺してしまうが、目の前にレバーがあり、レバーを切り替えればトロッコは別の線路へ行くので五人の命は助かる。しかし、別の線路に向かうと一人を轢き殺してしまう。あなたにできるのはレバーを切り替えないか切り…

野口悠紀雄著「マネーの魔術史:支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか」(新潮選書)

本書を一言でまとめると、マネーの視点から捉えた世界史概説である。 本書の主な流れについては目次を御覧いただきたい。 無人島に漂着して一人暮らしをするのでもない限り、人間は必ず金融と結びつく。金融の無い生活など存在しない。それこそ、ナチスや共…

アビジット・V・バナジー&エステル・デュフロ著,村井章子訳「絶望を希望に変える経済学:社会の重大問題をどう解決するか」(日本経済新聞出版)

来週日曜日、さいたま市長選挙は投開票日を迎える。今回のさいたま市長選挙には五名が立候補しており、五名が五名ともそれぞれ異なる政策を提言して有権者の支持を得ようとしている。ここまでは民主主義におけるごく当たり前の光景であり、世界のどの国にお…

五味文彦著「学校史に見る日本:足利学校・寺子屋・私塾から現代まで」(みすず書房)

古代日本に学校は存在した。平城京や平安京には大学、正確に言えば大學寮が存在し、大學寮を卒業して式部省の試験に合格することで役人となって任官できた。なお、中国では父や祖父や兄がどのような地位にある者であろうと特別扱いされなかったのに対し、日…

シナン・アラル著,夏目大訳「デマの影響力:なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」(ダイヤモンド社)

1181年から1185年までの足かけ五年間に亘る源平合戦において、鎌倉に留まり続けていた源頼朝がどうして勝利を手にすることができたのか? その理由は多々あるが、その理由のうちの一つに、源頼朝が当時としてはあり得ないレベルで情報網を形成し、京都から遠…

平野千果子著「人種主義の歴史」(岩波新書)

差別は人類の負の歴史であることに異を唱える人はいないであろう。 また、今なお差別が重大な社会問題であることに異を唱える人もいないであろう。 人種、宗教、言語、見た目、性別、年齢、趣味嗜好、性自認……、差別のネタはよくもまあこれだけ見つけ出せる…

プリヤ・パーカー著,関美和訳「最高の集い方:記憶に残る体験をデザインする」(プレジデント社)

イベントに招かれることはあっても開催することは少ない、あるいはイベントそのものに興味が無いので招かれても応じないという人は多いであろうが、それでも人生に置いては多かれ少なかれ、自分が主催者として人を集める機会、あるいは人が集まる場所に参加…

三浦清美著「ロシアの源流:中心なき森と草原から第三のローマへ」(講談社選書メチエ)

2022年2月24日、ロシアがウクライナへ侵略し始めた。ウクライナは抵抗を続け国家を存続させているものの、現時点でもウクライナの領土の一部はロシアの侵略を受け、占領下に置かれ、奪われ、殺され、犯され続けている。 ロシアの言い分を目にし、耳にするこ…

桃崎有一郎著「「京都」の誕生:武士が造った戦乱の都」(文春新書)

延暦13(794)年、桓武天皇の時代に平安京へ遷都。以後、平清盛の時代に一時的に福原に都が移された例外の時期を除き、明治2(1869)年の東京奠都まで京都はこの国の首都であり続けた。*1 さて、平安京は現在の京都であるが、京都は平安京とイコールの都市ではな…

鷲田清一著「だれのための仕事:労働vs余暇を超えて」(講談社学術文庫)

本書刊行の平成8(1996)年は団塊ジュニア世代の就職氷河期が既に深刻な問題となっていた頃である。人生の全てを捧げて一流大学に進みながら、最後の最後、就職することで人生のキャリアを成就させようというタイミングでどこにも就職できずに放置される人が続…

しろやぎ秋吾著「娘がいじめをしていました」(KADOKAWA)

想像していただきたい。自分の子供が犯罪者となったらどうなるかを。 世間一般では「いじめ」と称しているが、やっていることは犯罪である。相手を死に至らしめることのある犯罪であり、相手が死を選ばなかったとしても永遠に消えない傷を相手に残すこととな…

バーナード・マー著「生成AI活用の最前線:世界の企業はどのようにしてビジネスで成果を出しているのか」(東洋経済新報社)

思考とは何か? 概念と概念の結合による新たな概念の創出である、 人間で言うと、脳細胞の中に記録されている記憶を呼び起こし、他の記憶と結合することで新たな概念を作り出す。 言語とは概念を明瞭化させる道具であり、言語を用いることで概念群の結合によ…

峰岸純夫著「享徳の乱:中世東国の「三十年戦争」」(講談社選書メチエ)

人口に膾炙されるところでは、応仁の乱により戦国時代が始まったということになっている。しかし、本書の著者はその概念を否定する。応仁の乱より13年前に、関東地方で戦乱が起こっていた。そのスタートが享徳3(1455)年であることから著者は関東地方の戦乱を…

宮澤暁著「ヤバい選挙」(新潮新書)

この頃選挙が喧しい。今は比喩的な意味であるが、もうすぐ比喩的はない意味で喧しい。 ならば昔の選挙はどうだったのかというと、昔は昔で問題がある。それどころか、昔に比べれば今のほうがマシだと言えるほどだ。 本書は、この国の選挙で発生したトピック…

楠桂著「不育症戦記~生きた赤ちゃん抱けるまで~」(大洋図書)

いま話題のマンガ家である楠(くすのき)桂(けい)氏の妊娠・出産のエッセイ漫画である、と、一言でまとめればその通りなのだが、その内容はただただ壮絶と形容するしかない。 本書のストーリー開始時点で作者は一人の娘を出産しているが、その前に一度流産…

アンディ・ミッテン著,澤山大輔訳「ダービー!!:フットボール28都市の熱狂」(東邦出版)

サッカーというものは、基本的に1週間に1試合、多くても1週間に2試合である。つまり、年間50試合もすれば多い方、70試合となったら尋常ならざる過密日程となる。 そしてこれはどの国のサッカーでも同じだが、その国の中から選び抜かれたクラブが集まってリー…

井上寿一著「日中戦争:前線と銃後」(講談社学術文庫)

この国がなぜ、先の戦争に突き進んでいったか? この問いに対しもっとも安直でもっとも危険な考えは、「自分は戦争に反対する人間だから関係ない」という前提で当時の世相を分析することである。仮にその時代に生まれていたとしても戦争に反対する人間になっ…

マット・エイブラハムズ著,見形プララットかおり訳「Think Fast, Talk Smart:米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力」

1970年代の日本のテレビは二人のコメディアンが時代を席巻していた。 アドリブの笑いを徹底的に追求していた萩本欽一氏。 アドリブの笑いを徹底的に排除していたいかりや長介氏。 互いが互いを意識し、アドリブに対する真逆の考え方を追求し続け、時代を切り…

いしいさや著「よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話」(ヤングマガジンコミックス)

本年5月25日(日)は、任期満了に伴うさいたま市長選挙の投開票日である。本記事の記載時点で現職を含む数名の立候補予定者がおり、その中にはさいたま市議会議員であった共産党の加川義光もいる。 私はさいたま市緑区に住んでおり、加川義光はさいたま市緑区…

カーメン・M・ラインハート&ケネス・S・ロゴフ著,村井章子訳「国家は破綻する:金融危機の800年」(日経BP)

最初に述べておくと、本書の日本語訳タイトルは内容を正確に反映していない。原著のタイトルは "This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly(今回は違う:金融の愚行の8世紀)" であり、内容は原著のタイトルにより近い。 その上で、「自…