いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

髙井ホアン著「戦前反戦発言大全:落書き・ビラ・投書・怪文書で見る反軍・反帝・反資本主義的言説(戦前ホンネ発言大全)」(パブリブ)

誰が言ったか、ネットの書き込みは便所の落書きと称されることがある。 本書は戦前・戦中の特別高等警察(通称「特高警察」「特高」)の記録である「特高月報(特高外事月報)」を中心に、「社会運動の記録」や各種憲兵隊記録、「思想旬報」といった資料に掲…

的場りょう著「限界独身女子(26)ごはん」(KADOKAWA MFコミックスフラッパーシリーズ)

このマンガの主人公である柊美夜子(ひいらぎ・みやこ)さんを大げさに感じたならば、あなたは幸せな人と言える。 限界まで追い詰められて破綻した人間はリアルにこうなるのだ。 私も実際に体験した。 ameblo.jp この作品の第1話の柊さんのように、何かを食…

清水善仁著「公害の記憶をどう伝えるか:「公害アーカイブス」の視点」(吉川弘文館)

昭和時代の日本を震撼させた公害病の一つについて、賛否両論の意見が存在する。 確かになぁ、、、と思った。@水俣 pic.twitter.com/CXDX6CjTRt — あじのり。 (@potaku_ajinori_) 2025年1月6日 たしかにあの公害病について地名を用いると、その土地に対する…

橘木俊詔著「教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか」(NHK出版新書)

公立小学校や公立中学校に通っていた人ならば実感できるであろうことがある。 格差を目の当たりにするのだ。 これは単なる学力の違いにとどまらず、社会的な問題としても大きな影響を及ぼしている。中学受験を経験したり、小学校から私立学校に通っていた人…

村井章介著「定本 中世倭人伝」(講談社学術文庫)

元寇の嵐が過ぎ去り、元による日本侵略の計画が消えた頃、元やその属国であった高麗の間に新たな脅威が現れていた。 倭寇である。 朝鮮半島沿岸部や中国大陸沿岸部を襲う海賊集団は、日本から来た海賊とされ「倭寇」と呼ばれた。しかし、彼らが話す言葉は日…

田口ゆう原作,吉田美紀子著「認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実」(バンブーコミックス エッセイセレクション)

去年の三月に父を見送った。 不思議と悲しみは無かった。それよりも、ようやく地獄の日々が終わったという認識のほうが強かった。 その兆しが見えたのは父が亡くなる七年前、最後の二年間はもはや父ではなく、かつて父であった何かとなってしまっていた。具…

木全美千男著「社員の給料・労働条件の値切り方ご指導いたします: 会社に有利に労働条件を変更するマル秘テクニック」(日本法令)

結論から言う。読む価値は全く無い。 何しろ作者はこいつ ↓ である。 今から10年前、平成27(2015)年の年末に話題になっていたブログ「すご腕社労士の首切りブログ」でお馴染みの有限会社モンジュアソシエイトの木全美千男(きまた・みちお)であるが、当該ブ…

中島茂著「会社と株主の世界史:ビジネス判断力を磨く「超・会社法」講義」(日本経済新聞出版)

本書第8章にも引用されているが、松下幸之助氏は生前、株主についてこのように語っている。 株主というものは、株式会社に出資することによって、国家の産業に参画するという一つの大きな使命があると思う。出資した会社から配当を受ける一方で、会社の経営…

猪木武徳著「戦後世界経済史:自由と平等の視点から」(中公新書)

高市内閣が成立したことに対し、早々に高市内閣に対する批判の声がメディアで取り上げられるようになった一方、発足直後の内閣支持率は60%を突破し、読売新聞の調査では71%に達している。 www.yomiuri.co.jp そこには憲政史上初の女性首相ということもある…

マクローリン・レヴィ著,山形浩生訳,中野毅監修「創価学会:現代日本の模倣国家」(講談社選書メチエ)

過去26年間、公明党は自民と手を組み続けていた。それは2009年の総選挙で自民党が敗れたときも例外ではない。細川内閣の頃のように非自民非共産会派の連合体という枠組みに加わることはなく、1999年からは一貫して自民党とともにあった。 その歴史が昨日、正…

本郷恵子著「天皇家の存続と継承:中世の転換から現代へ」(吉川弘文館)

現在の日本の皇位継承は、日本国憲法の規定に基づいて昭和22(1947)年に改定された皇室典範に基づいている。皇室典範の制定は明治22(1889)年のことであり、厳密に言うと、日本国憲法施行のときにいったん大日本帝国憲法に基づく旧皇室典範を廃止した上で、日…

ミラン・クンデラ著,阿部賢一訳「誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇」(集英社新書)

第二次大戦終結から1989年まで、ヨーロッパは東と西しかなかった。 福祉をイメージさせる北欧や、気質をイメージさせる南欧という概念はあったが、鉄のカーテンを境界線として、カーテンの東の東欧と、カーテンの西の西欧しかなかった。 これを当事者が受け…

益田朋幸著「光の美術 モザイク」(岩波新書)

絵画の技法は多々ある。紙に描く、布地に描く、板に描く、壁に描く。絵の具で描く、墨で描く、マーカーで描く、ペンキで描く。こうして描かれた絵画の多くは、時間経過とともに劣化していき、人為的に、あるいは自然の摂理によって風化する運命を持っている…

樋口健太郎&栗山圭子編「平安時代天皇列伝」(戎光祥出版)

2008年から平安時代叢書を書きはじめ、今年で17年目になる。 その間、数多くの天皇が登場した。 自ら政務を執った天皇がいた。 自ら政務を執ることを狙った天皇がいた。 幼少ゆえに政務を執ることのできぬまま時間が経過し、元服を迎えたかどうかのタイミン…

槇野修著,山折哲雄監修「『源氏物語』の京都を歩く」(PHP新書)

源氏物語は、今から1000年前に記された、今から1100年前を舞台とする小説である。 お前は何を言っているのかと思うかも知れないが、紫式部は紫式部の生きている時代の100年ほど前を舞台として小説を書き記したのである。 ただ、第一帖「桐壺」にて高麗、小説…

ブライアン・クラース著,柴田裕之訳「「偶然」はどのようにあなたをつくるのか:すべてが影響し合う複雑なこの世界を生きることの意味」(東洋経済新報社)

想像していただきたい。 1914年の始まりの弾丸が命中しなかったならば? 第一次世界大戦のスタートとなる暗殺事件は、本来であれば失敗に終わるべき事件であったところを、偶然に偶然が重なってしまったために成功してしまった。成功してしまったためにヨー…

奥森ボウイ著「ユラギ♂ノ♀カラダ」(芳文社コミックス)

主人公、花子太郎(はな・こたろう)は男性である。ただし、常に男性であるというわけではない。戸籍上は男性であるし、本人の性自認も男性である。ただし、本人の意思で制御できない状態で月に1回、脳、身体、そして生殖器が不規則に入れ替わってしまう。本…

里中哲彦著,清重伸之&依田秀稔イラスト,現代書館編集部編「黙って働き笑って納税」(現代書館)

本書は戦前から戦中の日本で展開されていたスローガンをまとめたものであるが、そのどれもが作成者の正気を疑うレベルの暴論である。それを正しいと思って作ったのか、それとも、誰かに作るよう命じられて仕方なしに作ったものなのかはわからない。 そして、…

松尾豊著「人工知能は人間を超えるか」(角川EPUB選書)

本書の内容について記す前に記しておかねばならないことがある。 本書刊行は2015年、すなわち今から10年前なのだ。 今から10年前を思い返すと、その頃にもAIという概念はあったし、AIが世の中を動かす時代もやがていつかはやってくると多くの人が考えていた…

網野善彦著「中世の非人と遊女」(講談社学術文庫)

この国は、差別され虐げられてきた歴史を持つ人達がいる。 法によって差別そのものが禁止され、法の上では平等である、ということになっているものの、現実にはまだまだ差別が残っている。差別は許されない者であるというコンセンサスが成立し、そのような教…

山﨑圭一著「世界史と日本史は同時に学べ!」(SBクリエイティブ)

荘園、封建制度、騎士道と武士道…… 西洋の歴史学に基づく歴史認識が導入された結果であるともいえるが、日本の歴史を振り返ってみると、同時代の地球全域で起こっていた社会のうねりとの類似性を感じ取ることができる。そしてその感覚は日本列島とヨーロッパ…

汐街コナ著,大石雅之監修「ずっとやめたかったこと、こうしてやめられました。」(サンマーク出版)

私事であるが、私は禁酒に成功している、いや、成功してしまっている。何かというと、とある痔情(原文ママ)のため医師より禁酒命令が出ており、二度の手術を終えた現在も酒を呑まないでいられる人生を過ごしているのである。 これが参考にならない例である…

汐街コナ著,ゆうきゆう監修「「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)」(あさ出版)

自民党の高市新総裁のワークライフバランスに関する言葉が世情を賑わせている。 第二次安部内閣以降の自民党政権が取り組み、そして実際に効果を出してきた働き方改革に対し、高市早苗新総裁がストップを掛けるのではないかなどというねじ曲がった解釈が世情…

坂爪真吾著「未来のセックス年表 2019-2050年」(SB新書)

最初に記しておくべきことがある。 本書刊行は2019年3月、すなわち平成である。無論、本書刊行の段階でCOVID-19はまだこの世に存在していない。 それなのに、本書に書かれていることの殆どは既に社会問題として令和の現在を賑わせているトピックになっている…

一ノ瀬俊也著「〈国防〉の日本近現代史 幕末から「台湾有事」まで」(講談社現代新書)

明治憲法下の帝国陸海軍と、現在の自衛隊との違いは大きく三点ある。 一点目は徴兵制では無く志願制であること。 二点目は学力。 三点目は守る対象。 自衛隊と戦前戦中の帝国陸海軍との連続性は無いわけではないが、軍事組織として比較しても大きな違いが存…

フィリップ・コトラー&ゲイリー・アームストロング&スリーダー・バラスブラマニアン&恩藏直人著「コトラー、アームストロング、バラスブラマニアン、恩藏のマーケティング原理」(丸善出版)

ビジネス書の面白さの神髄は豊富なケーススタディにある。経営学書が経営理論の分析と専門知識の把握を主軸に置いた学問としての経営学の習得を目的としているのに対し、ビジネス書は経営の実戦を目的としている。とはいえ、一方が理論のみ、もう一方が実戦…

庭田杏珠&渡邊英徳著「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」(光文社新書)

おじいちゃんといっしょの佐藤善次さんは昭和12年生まれであり、国民学校二年生、今で言う小学二年生のときに玉音放送を聞いている。そんな佐藤善次さんの手元には彼の足跡を刻んでいるアルバムがある。戦争のせいで失われた写真もあるがいくつかの写真が残…

一ノ瀬俊也著「皇軍兵士の日常生活」(講談社現代新書)

80年前まで、日本人男性は軍人となることが当然と考えられていた。厳密に言えば徴兵検査を受けるところまでが義務であり、その結果が不合格であったならば徴兵されずに済んだが、残念ながら合格してしまうと軍人にさせられてしまった。 このあたりをもう少し…

ジェームス・M・バーダマン著,森本豊富訳「アメリカ黒人史:奴隷制からBLMまで」(ちくま新書)

肌の色だけが理由で、最初は人としてすら扱われず、奴隷解放宣言以後は人として認知されたものの、まともな人権のある人間として扱われずにきた。 そもそも多くは移民でない。アフリカ大陸から「商品として」無理に連れてこられた人の子孫である。連れてこら…

瀧浪貞子著「藤原摂関家の誕生:皇位継承と貴族社会」(岩波新書 新赤版2081)

藤原北家は奈良時代の藤原四兄弟のうちの次男である藤原房前を始祖とすることは知識として知っている人は多いであろう。しかし、天然痘で命を落とした藤原四兄弟の時代から平安時代の藤原北家の隆盛に至るまでの経緯を知っている人はどれだけいるであろうか…