いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

新古代史の会編「歩いて学ぶ日本古代史 2:律令国家の成立と天平の世」(吉川弘文館)

日本列島が原始から古代へと移り変わった結果、この国は律令制に基づく中央集権国家の時代を迎えた。 それは何も中央集権国家を作りたかったからでも、作る必要性を感じて国民が総力を挙げたからでもない。 そうしなければ生き残れなかったのだ。朝鮮半島で…

新古代史の会編「歩いて学ぶ日本古代史 1:邪馬台国から大化改新まで」(吉川弘文館)

𝕏(旧Twitter)でマンガ家のこいずみまり氏が、日本の歴史区分における古代と中世の境界が平安時代と鎌倉時代にあることに疑問を投じる投稿をした。 すんごい細かい事なんだけど、日本の「古代」って縄文時代〜平安時代。源義経の死亡が1189年で、この頃まで…

澤田典子著「アテネ民主政:命をかけた八人の政治家」(講談社選書メチエ)

民主主義の源流が古代ギリシャの都市国家アテネにあることを認めない人はいないであろう。参政権は男性にしか認めない、奴隷には参政権を認めない、両親ともにアテネ生まれでなければ参政権はないという不十分なものであったが、それでも民主主義は画期的な…

ランディ・ザッカーバーグ著,三輪美矢子訳「ピック・スリー:完璧なアンバランスのすすめ」(東洋経済新報社)

本書のコンセプトは極めて単純明快である。 仕事、睡眠、家族、運動、友人 毎日このうちの三つを選ぶことで生活は向上するというものである。 一つだけ選ぶのでもなく、四つ以上選ぶのでもない。仕事に専念するために家族をないがしろにするのではなく睡眠を…

オリヴィエ・ブランシャール&ダニ・ロドリック編,月谷真紀訳,吉原直毅解説「格差と闘え:政府の役割を再検討する」(慶應義塾大学出版会)

格差など問題ではないと考る人はいない。しかし、格差問題を抜本的に解消できる人もまたいない。いるのは、いかにすれば格差問題をより減らすことができるかを論じる人であり、そして、格差問題を解決するために取り組もうとしている人である。 本書はそうし…

「平安時代はどんな時代か―摂関政治の実像―」(小径選書)

平安時代叢書を書き始めたのは平成20(2008)年だからもう17年前になる。思えば長いこと平安時代につきあい続けてきたものだし、今もなお平安時代につきあってきている。 しかし、それでもなお平安時代の実相の全てを描き切れているとは感じていない。まあまだ…

トマ・ピケティ&ロール・ミュラ&セシル・アルデュイ&リュディヴィーヌ・バンティニ著,尾上修悟&伊東未来&眞下弘子&北垣徹&「差別と資本主義:レイシズム・キャンセルカルチャー・ジェンダー不平等」(明石書店)

差別を肯定する人はいない。いるのは、差別であると訴える人と、差別ではないと応える人である。 日曜日(2025/07/20)の参院選での結果に多くの人が戸惑いを見せ、自分の知らぬところで何かが起こっていると感じた人も多いであろうが、それもまたこの国に起こ…

「完全図解でよくわかる 承久の乱」(廣済堂ベストムック)

昨日、一昨日と、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に関連した書籍としてのムックを紹介してきたが、本日も同じく鎌倉殿の13人の時代を扱ったムックである。 rtokunagi.hateblo.jp rtokunagi.hateblo.jp 一昨日、昨日と、ムックで扱っている時代が徐々に拡大してい…

本郷和人監修「日本史大図解 承久の乱」(宝島社)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の影響で承久の乱に関連する書籍が多数刊行されたことは昨日記した通りである。 rtokunagi.hateblo.jp 昨日紹介したムックは承久の乱にフォーカスを当てて一冊の本としているが、本書は承久の乱の前史も取り上げることで、源平合…

歴史REAL承久の乱 (洋泉社MOOK 歴史REAL)

鎌倉殿の13人の大河ドラマでの放送に合わせて、数多くの関連書籍が書店に並んだ。 平安時代叢書の作者である私は現在、まさにこの時代のことを書いている。 平安時代叢書のラストは承久の乱とすることは決めていたので、鎌倉殿の13人が放送されている頃に大…

アルベルト・マングェル著,原田範行訳「読書の歴史:あるいは読者の歴史」(柏書房)

活字中毒の人間から本を取り上げるとどうなるか? 本を読まなくなるのはその通りであるが、読むことを中止するわけではなくなる。たとえばテーブルの上のふりかけの空き袋の裏面にある原材料や賞味期限を読むようになる。 ただ、よく考えてみると、動物とし…

内務省研究会編「内務省:近代日本に君臨した巨大官庁」(講談社現代新書)

現在の日本では 選挙は総務省が 公共事業は国土交通省が 感染症対策は厚生労働省が 貧困対策も厚生労働省が 警察は都道府県が 消防は消防庁が それぞれ職掌としている。 また、都道府県知事は住民の選挙により選ばれ、都道府県知事はその都道府県における最…

ベン・アンセル著,砂原庸介監訳,工藤博海訳「政治はなぜ失敗するのか:5つの罠からの脱出」(飛鳥新社)

我々は民主主義の世界に生きている。チャーチルが言ったとおり、民主主義にも欠陥はある。ただ、民主主義以外に比べれば民主主義のほうが優れている。 では、民主主義の欠陥とは何か? 民意に基づいた選択と行動は、必ずしも最高の結果ではないということだ…

西部邁著「どんな左翼にもいささかも同意できない18の理由」(幻戯書房)

戦争はたくさんの人の命を奪う。 大規模自然災害やパンデミックもたくさんの人の命を奪う。 しかし、これらよりもはるかに大量の命を奪う愚行がある。 革命がそれだ。 今の世の中がダメだと考え、世の中を変えようとする。ただ、どのように変えれば世の中が…

ジョージ・オーウェル著「一九八四年」

この頃参議院議員選挙に関連しての投稿を続けているが、その根底には、本書で描かれたような全体主義への恐怖が根底にある。現在の政権に対する批判をする人は多く、また、それらの批難の中には的を射ているものがあるものの、その多くが不寛容で自由を阻害…

小林慶一郎編「財政破綻後 危機のシナリオ分析」(日本経済新聞出版)

日曜日の参院選次第では、政権交代ではなく、どの政党勢力も衆参両院で過半数を獲得できずに国会運営が空転する事態に陥る可能性がある。 それは何も決まらない政治が始まることを意味する。何であれ反対し、些細なことに難癖つけて国会を空転させるしか能の…

中野剛志著「世界インフレと戦争:恒久戦時経済への道」(幻冬舎新書)

これまでの経済システムが壊れてきているように感じる。まず、COVID-19で壊れ始め、2022年2月のロシアのウクライナ侵略戦争で戦争が常態化し、各国の選挙結果が不穏なものとなってきている。日本もその流れでいうと例外ではない。 この流れは果たして正しい…

大村大次郎著「宗教とお金の世界史」(ビジネス社)

現在繰り広げられている参議院議員選挙で、それが真実なのかどうかはわからないが、宗教団体が背景に絡んでいるという話が飛び交っている。 今回の参議院議員選挙は置いておいて、宗教と政治との関係はなかなかに複雑なつながりがあるのは珍しくない。宗教と…

ヤマザキマリ&中野信子著「パンデミックの文明論」(文春新書)

アダム・スミスの国富論(諸国民の富)は経済学の本であるが、同時にもう一つの側面を持っている。それは、アメリカ独立前のイギリスの社会情勢を伝える同時代史料の側面である。 特に社会科学書が顕著であるが、同時代の人に向けて記された同時代の分析の書…

鈴木孝夫著「日本語と外国語」(岩波新書)

日本語にオレンジ色はない。 このように書くと「お前は何を言っているんだ?」と思われそうであるが、日本語の色に対する概念の中でオレンジ色という概念はない。朱色やえんじ色、そしてオレンジ色も全て含めて赤色である。赤、青、白、黒、そして黄色。これ…

山口謠司著「ん:日本語最後の謎に挑む」(新潮新書)

「ん」。 日本語の中で頻繁に登場する音でありながら、五十音表には存在しない。 わ行の空欄に埋めるか、あるいは別の行を設けて書き記すかである。実際に発音してみればわかるが、「ん」の発音のときに、「わ」を発音するときのように口を一瞬小さくするわ…

さやけん著「家族全員でいじめと戦うということ。」(KADOKAWA)

娘がいじめという名の犯罪の被害者になった。 そのことに気づいたとき、娘はもう四年間、犯罪の被害を受け続けていた。 娘にとって学校に行くということは、犯罪の被害を受けにいくということであった。 そのことに気づいた親は何をできるのか? そもそも、…

ジェフリー・フェファー著,村井章子訳「悪いヤツほど出世する」(日本経済新聞出版)

謙虚で真面目で、親や、教師や、上司から好かれる人は優秀な人と扱われる。本人も自分を優秀と考えるし、周囲もその人を優秀と扱う。 しかし、その人の上に立つ存在がいなくなり、その人がリーダーとなったらどうなるか? 結論から記すと、優秀なリーダーと…

コンデックス情報研究所著「話したくなる世界の選挙:世界の選挙をのぞいてみよう」(清水書院)

日本はいま、7月20日投開票の参議院議員選挙に向けて、各政党が選挙運動を様々な形で繰り広げ、参議委員議員の投票システムに合わせた投票をしてもらうよう促している。すなわち、基本的には都道府県単位では候補者名を、比例代表では政党名もしくは比例代表…

デビッド・デボーキン&ロバート・W.スミス著「ビジュアル ハッブル望遠鏡が見た宇宙」(日経ナショナル ジオグラフィック)

天の川を挟んで離ればなれになってしまった織り姫と彦星が、年に一度だけ遭うことのできる日、七夕。 これは伝説であるが、織り姫も彦星も実際に存在する星であり、実際に夜空を眺めると、晴れていて空気が澄んでいるならばの話であるが、アルタイルとベガと…

リチャード・P・ルメルト著,村井章子訳「良い戦略、悪い戦略」(日本経済新聞出版)

第二次ポエニ戦争で、ハンニバルはたしかに特別なことをした。しかし、奇をてらったことはしていない。合理的な判断に基づき単純明快な戦略を遂行したのである。強いて挙げればゾウを連れてのアルプス越えが奇をてらった戦略であったと言えるが、それも当時…

カール・セーガン著,森暁雄監訳「惑星へ(上・下)」(朝日新聞出版)

世界中のセンセーションを沸き起こしたCOSMOSは1980年に刊行された書籍であり、1980年時点の知見に基づいた惑星科学の成果を中心とした科学啓蒙が書籍の主題となっている。 rtokunagi.hateblo.jp その際に根幹となっていたのはボイジャー計画であるが、1980…

カール・セ―ガン著,木村繁訳「COSMOS(上・下)」(朝日選書)

1980年、世界を席巻したテレビドキュメンタリーが放送された。当時の私は幼稚園児だったか小学生だったか、その放送を見た記憶はある。調べてみると夜10時からの放送だったとあるが、おぼろげながらの記憶では、夕方に放送されていたはずである。当時の夕方…

池川玲子著「ヌードと愛国」(講談社現代新書)

明治維新より前の日本の芸術に裸体はほとんどなかった。このように書くと露骨なまでの性描写もある浮世絵もあったし、小説の世界での描写はかなりどぎついものがあったではないかと考える人もいるであろうが、それらの作品は、読んでもらいたい人がいる、見…

有田シュン,吉野正裕,太田幸彦著「アウトサイダー・プラモデル・アート:アオシマ文化教材社の異常な想像力」(双葉社)

昭和50年代、ガンプラブームの少し前からその渦中、奇妙なプラモデルがおもちゃ屋の店頭に並びだした。 ガンプラが1個300円なのに対し、そのプラモデルは1個100円。 ガンプラは接着剤を用いなければ組み立てられないのに、そのプラモデルは接着剤不要ではめ…