いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

若松邦弘著「わかりあえないイギリス:反エリートの現代政治」(岩波新書)

2025年9月28日、珍妙な投稿が𝕏(旧Twitter)に現れた。インプレッションを伸ばしたくないので画像添付にするが、どうやらパレスティナはともかくロシアを支持することが“世界の構図と潮流(西側諸国の欺瞞と衰退)を正しく理解した真の情強知識人”とされ、そ…

斉藤利男著「平泉:北方王国の夢」(講談社選書メチエ)

平安時代の最大の都市は京都である。そのほかの大都市となると、難波、奈良、太宰府といった都市の名が挙がる。これが当たり前であった。 それが、院政期を迎えると同タイミングに、誰も予期しなかった都市が日本第二の都市として名を示すようになった。 平…

デヴィッド・ノヴァク&ラリー・ビショップ著,楠木建監訳,児島修訳「Learning: 知性あるリーダーは学び続ける」(ダイヤモンド社)

「義務教育の敗北」というネットスラングをよく見る。 また、「○○は学校で教えろ」という意見もよく見る。 いずれも現代社会における無知がもたらす損失に対する危惧が根底にある話であり、その危惧自体は同意できる話であるが、大きな問題が一つある。 何で…

新島繁著「蕎麦の事典」(講談社学術文庫)

こういう「○○の事典」をタイトルとする本は多いが、実際に本を開くと、事典と名乗れるレベルで○○の部分を網羅しているのは納得できるものの、書籍の構成は章項段構成が細かい書籍である。 しかし、本書は紛れもなく事典である。いや、辞典である。 以下が本…

広井良典著「科学と資本主義の未来:<せめぎ合いの時代>を超えて」(東洋経済新報社)

2025年9月22日(月)、気になるニュースが流れてきた。若者の移住先として東京都西部の青梅市やあきる野市が注目を集めているというニュースである。 news.tv-asahi.co.jp そのこと自体は特に問題ない。移住先にどこを選ぼうとそれは当人の自由だし、青梅市や…

石井寛治著「日本の産業革命:日清・日露戦争から考える」(講談社学術文庫)

明治時代に日本は二度の戦争をした。日清戦争と日露戦争である。 その双方とも日本社会を大きく変動させる出来事であるが、戦争そのものだけが社会を変動させたわけではない。欧米列強を模範とする社会の醸造を求めており、製糸業や紡績業を中心とする産業の…

山口仲美著「男が「よよよよよよ」と泣いていた:日本語は感情オノマトペが面白い」(光文社新書)

「犬は「びよ」と鳴いていた: 日本語は擬音語・擬態語が面白い」を上梓された山口仲美氏の新刊である。 rtokunagi.hateblo.jp 私事であるが、私は昨年(2024年)3月に父を亡くし、喪主として葬儀を取り仕切った。その間、一度も涙を流さなかった。参列者から…

山口仲美著「犬は「びよ」と鳴いていた:日本語は擬音語・擬態語が面白い」(光文社新書)

今の日本に生きる我々にとって、犬の鳴き声はワンワン、あるいは英語でバウワウといったところであろうが、そしてそれは、本書の著者にとっても変わらぬ感情であったが、調べてみると平安時代の歴史書である大鏡には犬の鳴き声として「ひよ」とある。当時の…

中川右介著「山口百恵:1970年代が生んだスーパースター」(朝日新書)

本日の記事を書き記す前に一つだけ記させていただきたい。本日の記事の中ではあえて敬称をつけていない。「~氏」や「~さん」という敬称を付けるのはかえって失礼になってしまうと感じたからである。ゆえに以下の文章中に敬称は存在しない。 私事であるが、…

平井吉夫編「スターリン・ジョーク」(河出文庫)

昨日、こんな投稿をした。 トレンドワードに河出書房新社さんの社名が出ているので、河出書房新社の担当者の方に届いてくれることを願って書き込みたいことがあります平井吉夫編「スターリン・ジョーク」(河出文庫)この本を再販してください pic.twitter.c…

谷川健一著「埋もれた日本地図」(講談社学術文庫)

本書は在野の民俗学者として活躍した谷川健一氏が、実際に現地に赴いて、現地の声を拾い上げ、書籍として文字に起こした一冊である。 下北半島に足を運んだとき、その視線は津軽海峡の向こうに向くと同時に、北から南を眺める視線となる。奈良や京都、鎌倉や…

原田泰著「なぜ日本経済はうまくいかないのか」(新潮選書)

本書刊行は2011年5月、すなわち民主党恐慌の最中である。 そして、本書の著者である原田泰氏は愚策中の愚策たる事業仕分けの委員の一人であった人物である。 すなわち、失われた20年から立ち直ろうとし、実際に立ち直りつつあった日本経済をぶっ壊して、太平…

かみゆ歴史編集部編,渡邊大門監「平安時代と藤原氏一族の謎99」(イースト新書Q)

このテの新書というのはたまにトンデモが混ざっていることがあるが、本書はなかなかどうして、藤原氏の誕生から平安時代末期までの大まかな流れをコンパクトにまとめてくれている。 振り返ると高校までの歴史の教科書における平安時代は、400年間という長き…

ロンゴス著,松平千秋訳「ダフニスとクロエー」(岩波文庫)

異世界モノ、異世界転生モノ、なろう系小説、あるいはファンタジーもの。こうした一つのジャンルとして確立されている作品群には一つの特徴がある。中世や古代世界を模した世界が舞台であり、そうした世界に転移や転生することになった人を現代の視点で描い…

山際康之著「戦争に抵抗した野球ファン:知られざる銃後の職業野球」(筑摩選書)

プロスポーツは、集団主義の敵である。ファシズムの敵であり、ナチズムの敵であり、コミュニズムの敵であり、戦争の敵であり、独裁の敵である。ゆえに、右にしろ、左にしろ、集団主義に染まっている人はプロスポーツを嫌悪する。どうにかして統制しようとし…

德薙零己著「おじいちゃんといっしょ」

作者自身が自分の作品を紹介するのもなんだが、本日は敬老の日なのでこちらの作品を紹介させていただく。 80歳のおじいちゃんと、高校一年生の孫娘の話であるのだが、孫娘は少し大人びて見える以外ごく普通の高校一年生であるのに、おじいちゃんは80歳なのに…

瀧口美香著「カラー版 キリスト教美術史:東方正教会とカトリックの二大潮流」(中公新書)

ポンペイ遺跡から発掘された風景画を見ると、現代絵画ではないかと思わせるリアリティを感じ取ることができる。彫刻についても発掘された塑像を見る限り、現代美術とつながるリアリティを感じる。そこにあるのは人間のそのままの姿であり、人間の住む生活の…

中川右介著「昭和20年8月15日:文化人たちは玉音放送をどう聞いたか」(NHK出版新書)

昭和20(1945)年8月15日の正午、昭和天皇の声がラジオから伝えられた。 ポツダム宣言受諾。 それは長く苦しんだ戦争が終わった瞬間であり、直面していた死からの解放の瞬間であり、生き残るために何でもしなければならない瞬間であった。 そして、多くの人は…

リチャード・クー著,川島睦保訳「「追われる国」の経済学:ポスト・グローバリズムの処方箋」(東洋経済新報社)

戦前の日本ではこのようなことが言われていた。「戦争をすると景気が良くなる」、と。 そしてこれは、戦前の日本だけでなく、むかしから世界の各地で見られていることであり、また、ロシアでは実際にそうであるように、自分から侵略を仕掛ける、すなわち、多…

大村大次郎著「経済危機の世界史」(清談社Publico)

人類はこれまで何度も、大規模な経済変動に直面してきた。それは必ずしも本書のタイトルにあるように経済危機だけを意味しない。急激な経済成長も大規模な経済変動に含まれる。 本作では以下の出来事について経済の側面から分析している。 17世紀から18世紀…

中川右介著「サブカル勃興史:すべては1970年代に始まった」(角川新書)

サブカルチャー。社会全体に共有される文化に対し、社会の中の特定の集団によって共有される文化。マイナーな趣味という扱いを受けることもあるが、時代の変遷によりサブカルチャーとしてスタートした文化がメインカルチャーへと昇華することもある。 近年の…

市川歩美著「チョコレートと日本人」(ハヤカワ新書)

去年からコメの値上がりが話題になっているが、食料品の値上がりは去年に始まったことではない。価格変動の激しい野菜や果物が顕著であるが、わかりやすい例としては菓子類が挙げられる。 板チョコ1枚はいくらか? 少し前までは100円でおつりがきた。 今はそ…

高田貫太著「渡来人とは誰か:海を行き交う考古学」(ちくま新書)

歴史の教科書を読むと、この国が国家として成立するにあたって多くの渡来人がやってきたことが記されている。渡来人の多くは朝鮮半島からやってきた人達で、その人達がこの国に様々なことを伝えてきたと教科書には書いてある。 ただ、ここで二つ疑問が生じる…

板谷敏彦著「日露戦争、資金調達の戦い:高橋是清と欧米バンカーたち」(新潮選書)

日露戦争は、字義だけを捉えれば日本とロシアとの戦争である。 しかし、戦場となったのは日本海や黄海、渤海といった海洋や、旅順から奉天にかけての遼東半島の一帯であり、当時はロシア領であった樺太が戦場となったことを除けば戦争当事国が戦場となっては…

片山慶隆著「日露戦争と新聞:「世界の中の日本」をどう論じたか」(講談社選書メチエ)

2025年9月は第二次大戦終結から80周年であると同時に、日露戦争終結から120周年でもある。 日露戦争の時代、ネットは無論、テレビはもちろんラジオもない。メディアとして存在していたのは新聞と雑誌であり、前者は即時性、後者は詳細性を売り物とし、明治38…

中藤玲著「安いニッポン:「価格」が示す停滞」(日経プレミアシリーズ)

30年前の人に言ったら信じてもらえないであろう。 21世紀の日本は、物価も安い代わりに給料も安い国になったと、なってしまったのだ。 本書は日本の安さの現実を如実に示している一冊であり、また、この安さが日本経済を生きながらえさせていると同時に衰退…

太平洋戦争研究会著「写真が語る敗戦と占領」(ちくま新書)

昭和20(1945)年8月15日正午、玉音放送で日本国民は敗戦を知った。同時に、この国は占領下に置かれることが決まった。それから昭和26(1951)年のサンフランシスコ平和条約に至るまでのこの国の様子は多くの人が証言をし、また、当時の映像も報じられることが多…

スティーブ・ブルサッテ著,黒川耕大訳「恐竜の世界史:負け犬が覇者となり、絶滅するまで」(みすず書房)

地球の歴史はおよそ46億年。地球誕生を1月1日として地球の歴史をカレンダーに置き換えると、恐竜誕生は12月13日、恐竜滅亡が12月26日、そして人類誕生は大晦日、12月31日になる。つまり、恐竜の歴史も、人類の歴史も、地球の歴史からするとつい最近の出来事…

アルベルト・アンジェラ著,関口英子&佐瀬奈緒美訳「古代ローマ帝国 1万5000キロの旅」(河出書房新社)

昨日の「古代ローマ人の24時間:よみがえる帝都ローマの民衆生活」の続編ともいうべきアルベルト・アンジェラ氏の著作である。 rtokunagi.hateblo.jp 古代ローマ帝国の版図を現在の地図で説明すると、イギリス、フランス、モナコ、ベルギー、ルクセンブルク…

アルベルト・アンジェラ著,関口英子訳「古代ローマ人の24時間:よみがえる帝都ローマの民衆生活」(河出文庫)

テルマエ・ロマエで古代ローマに興味や関心を抱いた方は多いであろうが、本書は今から1900年前の世界最大の都市であるローマに住む人達の24時間を描写した一冊である。 本書の舞台は西暦115年、古代ローマ帝国最大版図を築き上げたトライアヌス帝の時代であ…