いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧

日本共産党員・元党員の有志著「増補版 日本共産党の改革を求めて:#MeeToo#WithYou」(あけび書房)

勇気ある告発の本である。 日本共産党の中で何が起こっているのかという問題だけでなく、日本共産党の中で起こっていることを外に向けて記すこともできないという問題を乗り越えて、公表している本である。 当然のことながら、この書籍に対する日本共産党か…

西岡壱誠著『「数字のセンス」と「地頭力」がいっきに身につく 東大算数』(東洋経済新報社)

この頃、スレッズをはじめとするSNSで中学入試の問題を投稿している。理科や社会科を何度か、国語については一度だけ投稿したが、やはりメインとなっているのは算数である。算数の問題を投稿すると、多くの人が問題を解いてくれる。小学校では習っていないと…

ダグラス・C・ノース著,瀧澤弘和&中林真幸訳「ダグラス・ノース 制度原論」(東洋経済新報社)

平成以降に生まれた人にとって、ソビエトとは歴史の教科書に載っている今は無き国家である。 一方、昭和生まれのうち、少なくとも昭和50年までに生まれていた人達にとってのソビエトとは現実に存在していた国家であり、自らの生きる社会制度とは全く異なる社…

岩永嘉弘著「ネーミング全史:商品名が主役に躍り出た」(日経BPマーケティング)

「缶入り煎茶」。これだけでもどのような商品であるかは容易に想像できるであろう。しかし、スーパーマーケットでたくさん並んでいる飲料の中からこの商品を選ぶであろうかと考えると、少し躊躇する。CMで「缶入り煎茶」の商品を大々的に宣伝したとしても、…

ユヴァル・ノア・ハラリ著,柴田裕之訳「NEXUS 情報の人類史・下:AI革命」(河出書房新社)

AIが囲碁で人類に勝ったのは単なる衝撃ではなかった。 無意味としか思えない一手が勝敗を左右する一手になると人類が気づいたのは、勝敗が決してからであった。それまでの人類が積み重ねてきた以後の歴史、人類が体験してきた囲碁の知識、全ての囲碁の勝者が…

ユヴァル・ノア・ハラリ著,柴田裕之訳「NEXUS 情報の人類史・上:人間のネットワーク」(河出書房新社)

平清盛と源頼朝は源平合戦の両巨頭である。 ともに一大勢力を築き上げ、ともに武力で国家を掌握し、ともに戦乱の勝者として天下を手に入れた。 それでいて、作り上げた平家政権と鎌倉幕府とではあまりにも大きな違いがある。平家政権は5年と経たずに崩壊した…

塩野七生著「わが友マキアヴェッリ:フィレンツェ存亡(塩野七生ルネサンス著作集7)」(新潮社)

君主論の作者、ニコロ・マキャヴェッリ。 権謀術数の権化と思われそうな人物であるが、一人の人間の生涯として追いかけた場合、マキャヴェッリはフィレンツエ共和国に仕える外交官の迎える数奇な運命にたどり着く。 想像していただきたい。これまでずっと勤…

塩野七生著「神の代理人(塩野七生ルネサンス著作集6)」(新潮社)

テレビやニュースでローマ教皇の動静を目にすることは多いであろう。ただし、そこでのローマ教皇とはカトリックのトップに立つ宗教人であり、有力者であることは認めても俗世間における権力についてはイメージしづらくなっている。それが21世紀におけるロー…

塩野七生著「海の都の物語:ヴェネツィア共和国の一千年・下(塩野七生ルネサンス著作集5)」(新潮社)

東地中海の絶対的な海の王者となったヴェネツィア共和国の前に、オスマントルコという強大な敵が現れる。海に生きるしかない小国家ヴェネツィアにとって、莫大な軍勢を抱えて海も陸も暴れ回るオスマントルコは驚異でしかなかったが、ヴェネツィアはそれでも…

塩野七生著「海の都の物語:ヴェネツィア共和国の一千年・上(塩野七生ルネサンス著作集4)」(新潮社)

ローマ帝国の滅亡は、ローマ人達に国家なき生活が求められる出来事であった。 国がなくなれば税も払わなくていいし負担も引き受けなくなるから結構なことではないかとアナーキストならば考えるかも知れないが、ローマ帝国滅亡後のローマ人達にとってローマ帝…

塩野七生著「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷(塩野七生ルネサンス著作集3)」(新潮社)

チェーザレ・ボルジアはローマ教皇アレッサンドロ6世の息子である。 そう、息子である。 妻帯の許されない教皇の息子という出自は、本来であればチェーザレ・ボルジアの人生を狭めるものとなるはずである。父の権勢を利用して枢機卿にまで上り詰めることはで…

塩野七生著「ルネサンスの女たち(塩野七生ルネサンス著作集2)」(新潮社)

マントヴァ侯爵夫人、イザベッラ・デステ。夫がヴェネツィア共和国の捕虜となり、自身もヴェネツィア共和国から執拗に同盟参加と人質の提供を求められるも断固として拒絶し、神聖ローマ帝国の劫掠からマントヴァを守った英傑。 ローマ教皇の娘、ルクレツィア…

塩野七生著「ルネサンスとは何であったのか(塩野七生ルネサンス著作集1)」(新潮社)

「きみの考えているのは、歴史ではない」 著者が大学を卒業したときに教授に言われた言葉である。 それから二年後、著者は日本を出発してイタリアにいた。イタリアに滞在し、イタリアにある歴史記録、歴史遺産、美術品に接し、著者自身が「ルネサンスもの」…

ブラッドフォード・デロング著,村井章子訳「20世紀経済史:ユートピアへの緩慢な歩み(上・下)」(日経BP)

本書は20世紀の経済を振り返った歴史書であり、経済思想の流れであり、経済思想の生み出した社会の変容を著した書籍である。ただし、20世紀になった瞬間に新たな経済思想の潮流が誕生したわけではなく19世紀以前から連綿と続く歴史があり、20世紀が終わった…

ロバート・キャンベル編著「日本古典と感染症」(角川ソフィア文庫)

この国の歴史書には、様々な形でこの国が体験してきた感染症の記録が残されている。 そしてもう一つ、この国の体験してきた感染症の記録を残している文献がある。 古典だ。 万葉集にしろ、小説にしろ、作品完成時のメインターゲットは同時代の人達であり後世…

牧野知弘著「人が集まる街、逃げる街」(角川新書)

COVID-19によって働き方は大きく変わった。毎日職場に出勤するのではなく自宅でのリモートワークが珍しくなくなったことで、社会人の選択肢に、自宅と職場との往復だけでなく、自宅そのものでの過ごし方も加わった。これまでは多少の不便があったとしても職…

ナシーム・ニコラス・タレブ著,望月衛監訳,千葉敏生訳「反脆弱性[上・下]:不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」(ダイヤモンド社)

打たれ強さというか、逆境への強さというか、環境が激変しても平然としている人やモノ、組織、社会がある一方で、順風満帆な中で圧倒的勢力を誇りながら逆境に陥ったと同時にそれまでの圧倒が過去となってしまう人やモノ、組織、社会がある。この両者の違い…

中村淳彦&鈴木大介著「貧困とセックス」(イースト新書)

性を商売にするのはケシカラン。 この感情は多くの人が抱く感情であろう。 しかし、そこで性を商売とする道を塞ぐとどうなるか? 犯罪として取り締まりを強化すると、どのような未来が待っているのか。 性を売り物にしていた人は生きていけなくなり、性を買…

中野剛志著「全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】」(KKベストセラーズ)

同時に刊行された「目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」の続編であり、基本的には前作を読んでいることが本書を読むにあたっての前提になっているが、本書のみでも著者の主張が十分に読み取れるようになっている。 rtokunagi.hateblo.jp 本…

中野剛志著「目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】」(KKベストセラーズ)

平成の30年間の日本経済を一言で表現すると、衰退である。 徐々に悪化し、次第に貧しくなっている。 しかも、これは日本国の有権者自身の選択によるものである。一人一人の有権者が自分にとって最良の選択をし、メディアがその意見を広め、政治家が有権者の…

寒川旭著「地震の日本史:大地は何を語るのか [増補版]」(中公新書)

平成23(2011)年3月11日金曜日のことを今も鮮明に思い出す。自分が受けた被害のことを、報道が伝える被害のことを、今も鮮明に思い出す。 それから毎年、3月11日が近づくとあの日の記憶が蘇り、3月11日を迎えると一日中あのときのことが脳裏を埋め尽くす。 し…

田辺旬&野口華世編著「鎌倉北条氏の女性ネットワーク」(小径選書7)

鎌倉殿の13人で鎌倉時代草創期への注目が伸びてきた。 逃げ上手の若君で鎌倉時代末期から南北朝時代への注目が伸びてきた。 では、その間の時代は? 本書は鎌倉殿の13人の時代から逃げ上手の若君の時代について、北条氏と女性との関係を軸に紀伝体でまとめた…

小宮正安著「ベートーヴェン《第九》の世界」(岩波新書)

「第九」はいつできたか? その問いを見つめたとき、フランス革命、ナポレオン戦争、その後の混迷という、世界史の教科書で必ず習うであろう出来事が背後に控えているのが見て取れる。 フランス革命以前、ホールで開催されるオーケストラの演奏を楽しむこと…

マイケル・プレストウィッチ著,大槻敦子訳「中世の騎士の日常生活:訓練、装備、戦術から騎士道文化までの実践非公式マニュアル」(原書房)

騎士道と武士道との間には類似性がある。 それは戦いを職業とする人であり、戦いのために人生の全てを捧げ、戦場に身を投じるという点で騎士と武士との間に類似性がある。 そしてもう一つ類似性がある。 トマ・ピケティは大著「21世紀の資本」で、格差解消の…

高橋秀樹著「北条氏と三浦氏(対決の東国史)」(吉川弘文館)

源平合戦勃発時の鎌倉方の面々に、北条家と三浦家とどちらが鎌倉方において重要勢力であるかと尋ねれば、百人が百人とも三浦家と解答するであろう。それは北条家も例外ではない。 鎌倉方の誕生時、上総介、千葉、足利、豊島、秩父、畠山、江戸、佐々木、渋谷…

藤川直也著「誤解を招いたとしたら申し訳ない:政治の言葉/言葉の政治」(講談社選書メチエ)

「誤解を招いたとしたら申し訳ない」。失言を追及された政治家がよく口にする言葉である。当人としてはこれで謝罪したということになっているのだろうが、失言によって傷ついた側はたまったものではない。もっとも、本当にそれが失言なのだろうかということ…

千葉芳広著「帝国主義とパンデミック:医療と経済の東南アジア史」(吉川弘文館 歴史文化ライブラリー)

2022年2月22日木曜日、ロシアがウクライナへ侵略した。その前からクリミアを侵略し、ウクライナ東部を侵略してきたが、この日、ウクライナの首都キーウへの爆撃をはじめとする大規模侵略戦争をロシアは始めた。ロシアにとって誤算だったのは、ウクライナが降…

生駒孝臣編「中世東海の黎明と鎌倉幕府(東海の中世史)」(吉川弘文館)

東海道と言えば現代日本の最重要幹線である。東海道新幹線に東海道線、東名や名神といった高速道路を用いて、連日多くの人が移動している。しかし、そうした視点は関東と関西とを結びつける通路としての視点であり、実際に東海に生活する人達を無視した視点…

村瀬信一著「帝国議会:〈戦前民主主義〉の五七年」(講談社選書メチエ 612)

現代日本は議会制民主主義を採用している国である。民主主義の在り方としてはイギリスやドイツい類似しており、大統領に強大な権力が与えられているアメリカやフランスとは異なると言える。ただし、どちらが正しいというわけではない。民主主義であることに…

トーマス・セドラチェク&オリヴァー・タンツァー著,森内薫訳「続・善と悪の経済学:資本主義の精神分析」(東洋経済新報社)

前作「善と悪の経済学」は世界的な大ヒットを巻き起こした。本書はその続編であるが、前作は歴史や神話に主眼を置いた経済の分析を一冊の書籍にまとめたのに対し、本作は人間心理に基づく経済の分析も合わせて行い、その延長上として資本主義を捉えている。 …