いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

サイモン・シン著,青木薫訳「フェルマーの最終定理」(新潮社)

Cubum autem in duos cubos, aut quadratoquadratum in duos quadratoquadratos, et generaliter nullam in infinitum ultra quadratum potestatem in duos eiusdem nominis fas est dividere cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. Hanc margin…

金田章裕著「なぜ、日本には碁盤目の土地が多いのか」(日経プレミアシリーズ)

碁盤目の土地といえば京都を思い浮かべる人が多いであろうが、実は京都以外にも碁盤目になっている土地が日本中のあちこちに存在している。その多くは古代日本に起源を持つことができ、京都のように条里制に基づいて計画され建設された都市、あるいはそれら…

ミン・ゾン著,土方奈美訳「アリババ:世界最強のスマートビジネス」(文藝春秋社)

中国のITを世界最先端と見做さない人はもういないであろう。いたとすればそれは認識が21世紀に入ることなく、20世紀のままで留まってしまっている人である。 なぜ中国にできて日本にできなかったのか、あるいは本書に従うとアメリカを除く先進国にはできなか…

宮田健著「Q&Aで考えるセキュリティ入門:「木曜日のフルット」と学ぼう!」(エムディエヌコーポレーション)

間もなく六月も終わりを迎える。多くの会社では新入社員の社内研修を終えて七月からの新人配属という頃合いであろう。 それは新人が配属されることとなる職場においても、これからやってくるであろう新人をどのように受け入れるか思案を巡らせることが多いで…

花房尚作著「田舎はいやらしい~地域活性化は本当に必要か?~」(光文社新書)

現在開催されているFIFAクラブワールドカップ。我らが浦和レッズは残念ながらグループステージを突破できなかったが、サポーターの勢いと選手の気迫は世界に伝えることができたというのが二試合目終了時の評価である。 ただ、同時に世界との格差を感じた。 …

中川右介著「萩尾望都と竹宮惠子:大泉サロンの少女マンガ革命」(幻冬舎新書)

今でこそマンガは表現方法の一つとして確立しているし、マンガ家という職業も性別を理由とした差別をかなり早い段階で破棄することに成功した職業の一つとなっていた。無論、今でもマンガを子供のためのものと考えている人、教育上良くないものと考えている…

原武史著「歴史のダイヤグラム〈3号車〉:「あのとき」へのタイムトラベル」(朝日新書)

私事であるが、先週火曜日に私の母が救急搬送されて救急車に同乗し、病院内の患者親族待合室でずっと待ち続けていた。そのときに読んでいたのが本書である。 既に第一巻、第二巻を読み終え、新たに刊行された第三巻である本書を電子書籍で買って読もうとして…

原武史著「歴史のダイヤグラム〈2号車〉:鉄路に刻まれた、この国のドラマ」(朝日新書)

前作に引き続き、近代日本史の研究者である著者が、自身の研究で接してきた鉄道に関する話題、また、著者個人の鉄道に関する思い出を書き記してきた新聞連載コラムをまとめた書籍である。 第一章 天皇の祈りの旅 出雲大社へと至る鉄路 駅名から見える官民関…

原武史著「歴史のダイヤグラム:鉄道で見る日本近現代史」(朝日新書)

本作は筆者が朝日新聞土曜版に連載しているコラムの再編集版である。本欄記載時点では第三巻まで刊行されており、本作は第一巻にあたる。 本書の著者は鉄道への造詣の深い人物であるが、鉄道についての研究が叙述が本業というわけではない。近現代の皇室や近…

稲田大樹著「極彩色の京都:四季の名所めぐり」(KADOKAWA)

書籍について電子がよいか紙がよいかは、キノコタケノコ論争にも匹敵する諍いのネタであるが、私の個人的な思いでいうと、写真や絵画を載せている媒体については圧倒的に電子がよい。 本書は京都の四季折々の風景を写真に収めた写真集であり、ページをめくる…

田中広明著「豪族のくらし:古墳時代~平安時代」(すいれん舎)

豪族、貴族、大名、そして国会議員。 この国の地域の有力者は太古から存在していたが、その在り方は時代とともに変遷を迎えていた。中央と地方との相対的な力の差の関係で地域の有力者としての権威や権勢が抑えられることもあるし、現在では一度の選挙でそれ…

フィリップ・コトラー,ヘルマワン・カルタジャヤ,ホイ・デンフアン,ジャッキー・マセリー著,恩藏 直人監訳,藤井清美訳「コトラーの起業家的マーケティング:伝統的手法から脱して創造性とリーダーシップ重視型アプローチへ」(朝日新聞出版)

世界的な曲がり角は既に目の前に広がっている。COVID-19やロシアのウクライナ侵略などの不穏な社会情勢などは予期できぬ話であったが、それより前から存在していた、それでいてここに来て大問題となってきている曲がり角が広がっている。時代そのものが変わ…

オードリー・タン&E・グレン・ワイル著,山形浩生訳,⿻ Community「PLURALITY:対立を創造に変える、協働テクノロジーと民主主義の未来」(サイボウズ式ブックス)

⿻。プルラリティ。 日本語に訳せば「多元性」。しかし、本書の概念はより包摂的な意味を有する。 そのために、本書の概念を示す一つの記号が使われる。その記号こそ、⿻。 価値観を刷新しようと、新たな価値観が単一的であれば、それは人類は過去に何度も経…

清水京武&東園子著「知らないと損をする!国の制度をトコトン使う本」(KADOKAWA)

重い税金、あるいは所謂“国の借金”、こうして集めた国家予算はいったいどこに使われているのか? 大企業が儲けるためか? 無駄なハコモノか? あるいは“軍備拡張”か? 違う。この国の予算の大部分をつぎ込んでいるのは社会福祉である。一人一人が生きていく…

高田かや著「カルト村の子守唄」(文藝春秋社)

過去二回、こちらではカルト村出身の著者がどのような人生を過ごしてきたかのエッセイ漫画を紹介した。 rtokunagi.hateblo.jp rtokunagi.hateblo.jp 本作はその前、すなわち、作者の両親がどのような経緯でカルト村での生活を選んだのか、そして、どのように…

山田寛著「ポル・ポト〈革命〉史:虐殺と破壊の四年間」(講談社選書メチエ)

宗教にしろ、政治団体にしろ、激しい反発を受ける団体というのはどの時代にもどの社会にも存在する。そして、その団体に属する人は、その団体に向けられた反発の声に対し、「我々に対してこれだけの迫害の声が届いているというのは、それだけ我々を恐れてい…

ハロルド・ジェニーン著,アルヴィン・モスコー編,田中融二訳「プロフェッショナルマネジャー:58四半期連続増益の男」(プレジデント社)

辞書などの例外はあるが、基本的に本というのは最初のページから読み始め、最後のページへと向かっていくものである。一方、経営というものはその逆である。終わりが先にあり、終わりに到達するために前のページを積み上げていくものである。それが本書第二…

高田かや著「さよなら、カルト村。:思春期から村を出るまで」(文藝春秋社)

前作「カルト村で生まれました。」で、個人所有を禁止する独自の思想のもとに集まった集団のもとで生まれた子供の生活を描いた作者が、その続き、中学から高校卒業までに至る経緯を描いたコミックエッセイである。 rtokunagi.hateblo.jp その村では、子供も…

高田かや著「カルト村で生まれました。」(文藝春秋)

カルトの村で生まれ19歳までカルトの村で育った女性の自伝エッセイ漫画である。 カルトの村というと、教祖を崇め奉り、日々礼拝をして過ごしながら、外との関係を絶った集団生活をするというイメージが湧くだろうが、作者の体験してきたカルトの村はそのよう…

小林昌樹著「立ち読みの歴史」(ハヤカワ新書)

想像していただきたい。今から1000年前の人は源氏物語を立ち読みできたであろうか? 源氏物語が大ヒット作品であることは知っているとはいうものの、どうやってその本を入手しようか、どうやってその本を読もうか、この問いは現代人よりもはるかに難しい問題…

あらいぴろよ著「虐待父がようやく死んだ」(竹書房)

衝撃的なタイトルのエッセイ漫画であるが、中身はさらに壮絶である。 作者と作者の二人の兄、そして作者の母は、作者が物心ついた頃から外面だけは良い父親と父方の祖父母から虐待を受け続け、一事は父と別れて暮らすこととなるものの、経済的理由で再び父と…

ユニプラン編集部編著「その時清盛は、後白河院は、頼朝は、院政・源平年表帖:清盛誕生~後白河院政~武家政権 鎌倉幕府成立 院政時代、そして源氏と平氏が武士の二大勢力として覇を争う」(ユニプラン)

平安時代叢書は基本的に編年体である。ベースとなる年表があり、それぞれの出来事を調べるところから小説を書き始める。 ベースとなる年表は詳しければ詳しいほどいい。大学受験レベルの日本史の年表では大雑把すぎて平安時代叢書のベースとして使うには不十…

ジョセフ・ヒース著,栗原百代訳「啓蒙思想2.0〔新版〕:政治・経済・生活を正気に戻すために」(ハヤカワ文庫NF)

令和になってから、日本国に生きる我々は人間の理性と理論、そして現実を目の当たりにする局面に出くわした。それも二つ。 ひとつはワクチンを巡る狂騒。 もう一つは買いだめを巡る狂騒。 前者はどうあがいても反ワクチンを止めることができずにいた。どんな…

小川幸司著「世界史とは何か~「歴史実践」のために~:シリーズ歴史総合を学ぶ③」(岩波新書)

地下鉄サリン事件の一年前、長野県松本市でサリンを用いた犯罪が発生したことを記憶している人も多いであろう。そして、翌年の地下鉄サリン事件が発生するまで、全くの無関係な人が犯人扱いされていたことを知っている人も多いであろう。 本書の著者はまさに…

moro著「誹謗中傷犯に勝訴しました:~障害児の息子を守るため~」(竹書房)

「息子が通う小学校の小学校の保護者」なる人物が、小学1年生の我が子の学校での様子をネットに書き込んだ。 悪意を込めて。 そこから筆者家族の地獄の日々が始まる。ネット上で容赦ない誹謗中傷が沸き起こり、小学校が特定され、自分の子は筆者の子の被害者…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第10巻」(講談社)

鳴海の元彼の配偶者は悩んでいた。子供を産み育てることそのものである。彼女にはまだ子供がいないが、これから先も子供を産まないのか。彼女は悩み続けた末に子供を産まないことを決意する。配偶者はそのことについて特に感想を見せずにいる。 一方。鳴海の…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第9巻」(講談社)

入院。それは家族としか接することのできない隔離空間に入ることもでもある。かつてであればもう少し鷹揚であったが、COVID-19以降は家族である人が病院の許可を得た上ではじめて患者に接することができるという状況になっている。 そのような状況において家…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第8巻」(講談社)

鳴海の弟嫁は、普通の田舎に生まれて、頭の悪い両親のもとに生まれ育ち、偏差値の低い高校に進んだ女性であった。ただ、このまま地元でデキ婚をして親と同じ道を歩むつもりはなかった。高校を卒業してから上京し、「自分より頭が悪くて従順で可愛げのある女…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第7巻」(講談社)

鳴海の弟嫁は高卒であり、若くして結婚して出産した。 鳴海は親の資産で大学に通い、奨学金に頼ることなく大学を卒業した。 主婦として育児に専念すると弟嫁と、結婚せずキャリアを積み重ねていく鳴海。 この構図はまさに鳴海の母と鳴海の伯母との関係と同じ…

カレー沢薫著,ドネリー美咲原案協力「ひとりでしにたい 第6巻」(講談社)

鳴海と那須田はつきあうこととなった。ただ、それは恋愛要素がゼロであるとは言えないものの、自らの生涯を考えた末に孤独死を逃れる手段を求めている鳴海と、家族を持たぬ人生を過ごしてきた那須田との相互妥協の結果であった。 そんな最中、鳴海の母から鳴…