いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2025-01-01から1ヶ月間の記事一覧

キャサリン・ホーリー著,稲岡大志&杉本俊介訳「信頼と不信の哲学入門」(岩波新書)

小学校の周辺で黄色い旗を手にして子供達の安全を守る人達がいる。その中には我が子を学校に通わせている保護者もいる。当たり前の光景に思えるが、想像していただきたい。中学校や高校で、大学や会社で、同じようなことがあるだろうか? あるわけないだろう…

小林照幸著「死の貝:日本住血吸虫症との闘い」(新潮文庫)

ある意味当然ではあるが、本書の書影に帯はついていない。 しかし、書店で本書を手に取ると、センセーショナルな帯がついてくる。 以下がその帯である。 Wikipediaで「地方病(日本住血吸虫症)」を参照したことのある方ならば、あの記事の内容に圧倒させら…

井坂康志著「ピーター・ドラッカー:「マネジメントの父」の実像」(岩波新書)

私は「SE山城京一のドラッカー講座」という作品を公開している。 ドラッカーが訴えてきた内容や著作の内容をベースにビジネスを解説する漫画である。 しかし、人間ドラッカーについての記載はほとんどできていない。 ドラッカーは終生、異邦人であることを余…

リー・マッキンタイア著,西尾義人訳「エビデンスを嫌う人たち:科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?」(国書刊行会)

世の中に陰謀論は多々あれど、自分で自分のことを陰謀論者であると自覚していることはない。自分は科学的で、真実を語り、正しいことを実践していると主張する。たとえばHPVワクチンに反対してきた(あるいは現在進行形で反対している)人達に、HPVワクチン…

雨穴著「変な絵」(双葉社)

「変な家」シリーズの雨穴氏の作品である。 rtokunagi.hateblo.jp rtokunagi.hateblo.jp 本書の表紙に描かれている四つの絵。 そのそれぞれが本作のテーマになっている。 左上の髪がたなびいている女性は表紙に描かれていない四枚の絵と重なることで一つの絵…

雨穴著「変な家2:11の間取り図」(飛鳥新社)

前作「変な家」の刊行を受けて奇妙な間取り図が多数寄せられた、という体裁でスタートする新たなミステリーである。 rtokunagi.hateblo.jp 本作のサブタイトルにあるように本作は11種類の奇妙な間取り図についてのオムニバス、のように見せた一つの壮大なミ…

雨穴著「変な家」(飛鳥新社)

本作の表紙に描かれているのは本作の冒頭で取り上げられている奇妙な間取りである。一見するとごく普通の二階建ての間取りに見えるが、よく見ると不可解な点がある。二階の子供部屋の位置、シャワー室と浴室とが二階で併存している意味、子供部屋専用のトイ…

すがやみつる著「昭和「コロコロ」マンガ 爆走伝説」(ビジネス社)

漫画家として生きていくとはこういうことなのか。ただ漫画を描けば漫画家になれるというものではない。どのようなタイミングでどのような漫画を生み出していくか、それと自らの人生とをどのように重ね合わせるべきかが本書に冷徹にまとめられている。 漫画家…

斎藤文彦著「力道山:「プロレス神話」と戦後日本」(岩波新書)

改めて振り返ると、四股名とは不思議な概念である。多くの人はそれが本名でないことを知っている。引退したらその名を名乗ることはないと知っている。別の人物が名を継いで土俵に上がることも珍しくないことを知っている。だが、引退後も四股名で呼ばれ続け…

モーリッツ・アルテンリート著,小林啓倫訳「AI・機械の手足となる労働者:デジタル資本主義がもたらす社会の歪み」(白揚社)

もしかしたら、人間の生活様式は古代から変わっていないのかもしれない。 良い暮らしをするためには誰かを犠牲にしなければならないという点で。 また、生活の悪化に至る経緯も古代から変わっていないのかもしれない。 犠牲にされる人が減るという点で。 奴…

田辺旬、前田英之編「京都からみた鎌倉幕府の成立」(小径選書)

吾妻鏡は鎌倉幕府の立場から捕らえた鎌倉幕府の成立に至る歴史書である。そこには多くのバイアスがかかっているし、年月の記載ミスも存在する。それでも鎌倉幕府の成立に至る過程を最も詳しく叙述している史料であることは否定できず、平安時代から鎌倉時代…

エリック・シェイファー&デビッド・ソビー著,山田美明訳「ものづくり「超」革命」(日経BP)

本書は2019年3月に刊行された "Reinventing the Product: How to Transform your Business and Create Value in the Digital Age" の邦訳版である。あと二ヶ月で原著刊行から6年になるが、今後の製造業のあり方を考えるときの示唆は今も通用する。 DX(ディ…

太田省一著「萩本欽一:昭和をつくった男」(ちくま新書)

「欽ちゃん」とこ萩本欽一氏を、物心ついた頃はもう平成であったという世代はどのように伺うであろうか? 知識としては著名人であることを知っていても、萩本欽一氏の生み出した番組を観ることはさほど多くないであろう。おそらく、仮装大賞ぐらいでしか拝見…

エマニュエル・ティエボ著,河村真紀子訳「[ヴィジュアル版]ヒトラーとプロパガンダ:ナチスと連合国のイメージ戦争」(原書房)

プロパガンダとは、既にファンである人はさらなるファンに、既にアンチである人はさらにアンチになる宿命を有している。本書はナチがどのようなプロパガンダを展開してきたか、また、ナチの敵がプロパガンダとしてナチをどのように貶してきたかをビジュアル…

塩野七生著「ローマ亡き後の地中海世界(下)」(新潮社)

地中海世界は現在も、北のキリスト教、南にイスラム教という構図である。 ただし、東端と西端は現在と異なる。かつてはトルコのあたりがキリスト教である東ローマ帝国であり、スペインやポルトガルがイスラム教である後ウマイヤ朝であった。 西ではレコンキ…

塩野七生著「ローマ亡き後の地中海世界(上)」(新潮社)

マルクスの段階発展論は史実によって否定される。本書に存在するのは衰退からのさらなる衰退なのだ。 古代ローマ帝国が滅亡しても、そこに住む人達は存在し続ける。ただし、ローマ帝国という強大な権力が存在していたがゆえに成立していた暮らしは存在しなく…

塩野七生著「ローマ人の物語XV:ローマ世界の終焉」(新潮社)

ローマ帝国は東西に分裂し、東は生き残ったものの西は破壊される。ゲルマン民族に蹂躙され、都市ローマは破壊され、領土は目に見えて縮小し、取り残された土地に住む人たちは生き残るためにゲルマン民族のもとに庇護を求めるたり、地方に留まる軍団が盗賊と…

塩野七生著「ローマ人の物語XIV:キリストの勝利」(新潮社)

コンスタンティヌス大帝の死後、ローマ帝国は再分裂を経て、コンスタンティウス、ユニアヌス、テオドシウスといった皇帝達の時代を迎える。 ただ、これらの皇帝よりも権威権勢を手にするようになったのはキリスト教会であった。キリスト教がローマ帝国内部に…

塩野七生著「ローマ人の物語XIII:最後の努力」(新潮社)

ディオクレティアヌスによって軍人皇帝時代に終わりを迎えたが、後に残ったのは絶対君主としてのディオクレティアヌスであった。広大な領土を統治するのは一人の皇帝で可能ではなく帝国全体を四つに分け、東西双方で正帝と副帝の両名、計四名の皇帝を配置す…

塩野七生著「ローマ人の物語XII:迷走する帝国」(新潮社)

セウェルス朝の創始もローマの混迷の収束にはつながらず、セプティミウス・セウェルス、カラカラ、ゲタ、ヘリオガバルス、アレクサンデル・セウェルスと経た後に、軍人皇帝時代へと突入する。 ローマ人の物語は一人の著者がローマの歴史を全て記すシリーズで…

塩野七生著「ローマ人の物語XI:終わりの始まり」(新潮社)

ローマ人の物語は全15巻のうち第Ⅰ巻から第Ⅸ巻が草創から栄光、特殊な構成の第Ⅹ巻を挟んで、この第XI巻から全5巻で衰退から滅亡の描写となる。 プラトンは哲学者が統治する国家を理想と述べたが、その理想は五賢帝のラストを飾るマルクス・アウレリウス帝で成…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅹ:すべての道はローマに通ず」(新潮社)

ローマ人の物語全15巻のうち、第Ⅹ巻だけは特別な一冊である。 ローマのインフラ、特に道路と水道のインフラ整備ついてまとめた一冊であり、ローマがいかにインフラ整備に心を砕き、国力の少なくない分量をインフラ整備に割いていたかを記している。 ただ、肝…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅸ:賢帝の世紀」(新潮社)

ローマ人の物語第Ⅸ巻をどのような時代かと一言で記すならば、テルマエ・ロマエの時代である。映画にもなったかの作品の舞台は本作にも登場するハドリアヌス帝の終わり頃、その後継者たるアントニヌス・ピウスが次期皇帝として見做されるようになった時代を舞…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅷ:危機と克服」(新潮社)

皇帝ネロといえば、古代ローマ史上最も有名な皇帝の一人であろう。 コロッセオといえば、古代ローマを代表する遺跡の一つであろう。 実は、皇帝ネロはコロッセオを見ていない。 どういうことか? コロッセオはネロの死後に、ネロの宮殿の跡地に建設された建…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅶ:悪名高き皇帝たち」(新潮社)

カエサルは後のアウグストゥスことオクタヴィアヌスという最高の後継者を用意することに成功したが、アウグストゥスは後継者選定に成功したとは言いがたい。およそ半世紀に亘る統治期間の長さもあってアウグストゥスが後継者と考えていた者が一人、また一人…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅵ:パクス・ロマーナ」(新潮社)

スエトニウスはカエサルを初代皇帝と扱ったが、名実ともに初代ローマ皇帝となったのはオクタヴィアヌスである。しかし、オクタヴィアヌスは自らを皇帝と考えることはなかった。それどころかカエサルによって独裁の進んだローマに共和制を取り戻した、という…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅴ:ユリウス・カエサル ルビコン以後」(新潮社)

ガリア戦役を完全に制圧してローマ北方のガリア人問題を根底から解決したカエサルは、救国の英雄ではなく国家の敵と元老院から扱われるが、カエサルはガリア戦役の軍勢をそのまま率いてイタリアに進軍。元老院議員達はローマを捨ててギリシャに逃れ、三頭政…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅳ:ユリウス・カエサル ルビコン以前」(新潮社)

今から過去を振り返るからローマはポエニ戦争後の混迷を収束できたように見える。しかし、この人物がいなければローマは混迷のまま自滅したであろう。ローマ史上最高の英傑、世界史の全てを見渡してもこれ以上の人物は存在しただろうかと考えてしまう英雄、…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅲ:勝者の混迷」(新潮社)

三度に亘るポエニ戦争で地中海世界の覇者となったローマ共和国は、戦争の勝者となったがために国内に問題を抱えるようになった。元老院を中心とする挙国一致体制で戦争を乗り越え、戦争に勝利したために、元老院を中心とする社会そのものがローマの現状問題…

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅱ:ハンニバル戦記」(新潮社)

チュニジアの5ディナール紙幣にはハンニバルが描かれている。 イタリアの国歌にはスキピオが歌われている。 いずれもこの、ローマ人の物語第Ⅱ巻にでてくる人物であり、より厳密に言えば、本書のうちの第二次ポエニ戦争でその名を馳せることとなった人物であ…