德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ポール・ミルグロム著,川又邦雄&奥野正寛監訳,計盛英一郎&馬場弓子訳「オークション・理論とデザイン」(東洋経済新報社)

2007年に邦訳版が刊行された本書は刊行当初も脚光を浴びたが、2020年に筆者がノーベル経済学賞を受賞したことでさらなる脚光を浴びることとなった。かく言う私もノーベル経済学賞を契機として本を購入した一人である。 電波周波数の使用権販売に関する同時競…

内田宗治著「関東大震災と鉄道:「今」へと続く記憶をたどる」(ちくま文庫)

関東地方に住む者ならば、大正12(1923)年9月1日の関東大震災を必ず教わる。必ず伝え聞く。必ず語り継ぐ。関東大震災でどのような被害を受けたか、どれだけの命が失われたか、どれだけの混迷を迎えたか必ず知っている。しかし、それらのどれもが、関東大震災…

池田清彦著「人間は老いを克服できない」(角川新書)

私はこのようなマンガを作って、Amazon Kindle で無料公開している。 amzn.to 80歳のおじいちゃんあのに高校生にしか見えない外見で、まさに本書のタイトルの真逆をいくキャラクターなのだが、こおおじいちゃんが本書を読む前と読んだ後との対比でこのような…

K・ポメランツ著,川北稔訳「大分岐:中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成」(名古屋大学出版会)

高校の世界史の教科書はその多くがヨーロッパ史にページを割いている。それに異議を唱える向きは多いが、それでもヨーロッパの歴史を特別視して、ヨーロッパは特別な地域であるとの概念が成立している。 その概念は世界史の教科書に限らず社会科学の多くの書…

ラテン語さん著「世界はラテン語でできている」(SBクリエイティブ)

本書の書名に嘘偽り無し。 ラテン語とは、言わずと知れた古代ローマの公用語である。厳密に言えば古代ローマはラテン語とギリシャ語の二つを公用語とする国家であったが、一般的な概念としては古代ローマの公用語はラテン語であり、古代ローマ帝国滅亡後もラ…

播田安弘著「日本史サイエンス〈弐〉:邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く」(講談社ブルーバックス)

前作に続き、日本史の出来事を理系的素養の側面から分析して解を示す書籍であり、第2巻でもある本書もまた、日本史上の出来事から三つの出来事を取り上げている。豊臣秀吉の朝鮮出兵、日露戦争の日本海海戦、そして、禁断とも言うべき邪馬台国論争である。 …

播田安弘著「日本史サイエンス:蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る」(講談社ブルーバックス)

鎌倉時代の二度の元寇は、二度とも神風によって日本の勝利に終わったとされている。実際に当時の記録にも暴風雨が吹いたことは記録に残っている。だが、それだけが戦勝の要因なのか? 豊臣秀吉の中国大返しは6月5日に備中高松城を出発し、6月13日に京都近郊…

萬代悠著「三井大坂両替店:銀行業の先駆け、その技術と挑戦」(中公新書)

まずは以下のシチュエーションを考えていただきたい。 あなたは日本に住んでおり、アメリカの企業が販売している商品をその企業のWebサイトから買おうとした。料金が支払われ次第ただちに商品の発送をすること、日本への輸送に時間は掛かるが日米両国の法に…

加藤義彦著「発掘テレビ秘話・昭和編」(論創社)

かつて、テレビは娯楽の王様だった。夜7時には一家揃って一家一台のテレビの前に座り、家族揃って同じ番組を観ていた。本書はその時代のテレビ番組、テレビ番組の制作者、そして、そうしたテレビ番組に出演していたタレント達の足跡を追いかけた一冊であるが…

平野多恵著「おみくじの歴史:神仏のお告げはなぜ詩歌なのか」(吉川弘文館)

おみくじを引くと、和歌が記されていることが多い。中には漢詩が記されていることもある。 どうして詩歌が載っているのかと問われれば、その答えは単純で、そっちがおみくじのメインだから。大吉などの部分だけに目を向ける人がいるが、そちらはメインではな…

ダニエル・ピンク著,大前研一訳「モチベーション3.0:持続する「やる気!」をいかに引き出すか」(講談社)

そもそも「やる気」とは何か? やりたくない物を無理矢理やらされたところで、意欲など全く沸かない。それでもやらなければならない、やらなかったら取り返しの付かないことになる、そのような状況では必要最小限でどうにかしようとする。これを著者はモチベ…

イタマール・サイモンソン&エマニュエル・ローゼン著,千葉敏生訳「ウソはバレる:『定説』が通用しない時代の新しいマーケティング」(ダイヤモンド社)

本書は2014年に刊行された "Absolute Value: What Really Influences Customers in the Age of (Nearly) Perfect Information(絶対的価値: (ほぼ)完全な情報の時代に、顧客に本当に影響を与えるものは何か?)" の翻訳書である。(邦訳書刊行年:2016年) …

繁田信一著「わるい平安貴族:殺人、横領、恫喝…雅じゃない彼らの裏の顔」(PHP文庫)

本書は2007年に「王朝貴族の悪だくみ:清少納言、危機一髪」として刊行された書籍の改題新刊であり、また、同著者の「殴り合う貴族たち」(角川ソフィア文庫)の続巻でもある。 rtokunagi.hateblo.jp 前著と同じく本書も平安貴族の悪事を歴史資料からピック…

繁田信一著「殴り合う貴族たち」(角川ソフィア文庫)

平安貴族に対するイメージを源氏物語や枕草子などの古典から作り出すと、そこには雅やかなイメージが生み出される。平安貴族の悪事についてイメージすることがあったとしても、そこでの悪事とは影から犯罪を指図するという図式での悪事であり、平安貴族本人…

キャス・サンスティーン著、田沢恭子訳,齊藤誠解説「最悪のシナリオ: 巨大リスクにどこまで備えるのか【新装版】 」(みすず書房)

本書は、原著刊行年が2007年、邦訳が2012年、そしてこの新装版が2022年という一冊である。 邦訳の前年に何があったか? それは何も書き記さなくても御理解いただけるであろう。まさに「最悪のシナリオ」が具現化してしまった。 新装版刊行の前々年に何があっ…

ロバート・スキデルスキー著,村井章子訳「ジョン・メイナード・ケインズ 1883-1946:経済学者、思想家、ステーツマン」(日本経済新聞出版)

ケインズはマルクスと決定的に違うことがある。 マルクスは権力と無関係の一評論家として理論を語ったのに対し、ケインズは権力の一翼を担う責任を伴って現実に向かい合っていた。第一次大戦も、第一次大戦後のイギリスの混乱も、大恐慌も、第二次大戦もケイ…

酒井隆史著「ブルシット・ジョブの謎:クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか」(講談社現代新書)

本書はデヴィッド・グレーバー著「ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論」(岩波書店)の邦訳を担当された酒井隆史の著作である。 rtokunagi.hateblo.jp どうして社会的価値の高い仕事ほど報酬が低いのか?報酬の高い仕事を誰も見ない書類をひた…

八條忠基著「詳解『源氏物語』文物図典」(平凡社)

ヤベェ本の著者の送り出したヤベェ本である。 www.itmedia.co.jp 本書は源氏物語全五十四帖を一帖ずつ解説する書籍であり、今年の大河ドラマの影響もあって源氏物語や紫式部、藤原道長の時代について解説する書籍が数多く刊行されている中にあって本書は白眉…

デヴィッド・グレーバー著,酒井隆史&芳賀達彦&森田和樹訳「ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論」(岩波書店)

1930年にジョン・メイナード・ケインズは予言した。技術の進歩によって労働時間が短縮されるはずであると。たしかに人類の歴史を振り返ってみると、そもそも労働時間はそこまで長くないことのほうが多い。平安時代叢書を書いていて感じるうちの一つに、平安…

倉本一宏著「増補版 藤原道長の権力と欲望:紫式部の時代」(文春新書)

今年の大河ドラマ「光る君へ」。このドラマでは紫式部の時代を扱った作品であり藤原道長が重要人物として登場している。 今から1000年前の日本国の最高実力者であり、藤原摂関政治のピークを築き上げた人間ということもあって、藤原道長は例外なく日本書の教…

田渕句美子著「百人一首:編纂がひらく小宇宙」(岩波新書)

今に生きる我々は、思いを伝えたいときに、文章を使い、写真を使い、音声を使い、動画を使う。ネットに載せて多くの人に届けるのであっても、ただ一人に届けるのであっても、あるいは自らのみが届ける相手であったとしても、その手段は、文章であったり、写…

飯島渉著「感染症の歴史学」(岩波新書)

今に生きる全ての人は、COVID-19を無視することなどできない。2019年末に発生したこの新たな肺炎は2020年になると全世界的なパンデミックとなり、数多くの人が命を失い、命を取り留めても後遺症に悩まされる人は少なくない。感染を食い止めるために経済を停…

網野善彦&宮田登著「歴史の中で語られてこなかったこと・おんな・子供・老人からの『日本史』」(朝日文庫)

網野善彦&宮田登著「歴史の中で語られてこなかったこと・おんな・子供・老人からの『日本史』」(朝日文庫) これは日本史に限ったことではないが、歴史に登場する人物の多くは壮年期の男性である。青年期であったり老年期であったりすることもあるが、大人…

大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 10」(講談社)

あさきゆめみし完全版第10巻は 第四十八帖 早蕨(さわらび) 第四十九帖 宿木(やどりぎ) 第五十帖 東屋(あずまや) 第五十一帖 浮舟(うきふね) 第五十二帖 蜻蛉(かげろう) 第五十三帖 手習(てならい) 第五十四帖 夢浮橋(ゆめのうきはし) が範囲で…

大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 9」(講談社)

あさきゆめみし完全版第9巻は 第四十二帖 匂兵部卿(におうひょうぶきょう) 第四十三帖 紅梅(こうばい) 第四十四帖 竹河(たけかわ) 第四十五帖 橋姫(はしひめ) 第四十六帖 椎本(しいがもと) 第四十七帖 総角(あげまき) が範囲である。 光源氏はも…

大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 8」(講談社)

あさきゆめみし完全版第8巻は 第三十九帖 夕霧(ゆうぎり) 第四十帖 御法(みのり) 第四十一帖 幻(まぼろし) そして、雲隠(くもがくれ) が範囲である。 光源氏の時代は少しずつ終わりを迎え、光源氏を取り巻く女性達もそれぞれの運命を迎える。 そして…

大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 7」(講談社)

あさきゆめみし完全版第7巻は 第三十五帖 若菜下(わかなげ) 第三十六帖 柏木(かしわぎ) 第三十七帖 横笛(よこぶえ) 第三十八帖 鈴虫(すずむし) が範囲である。第6巻でも触れたが、当ブログの記事では若菜を上下に分ける帖を採用しているため、第三十…

大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 6」(講談社)

あさきゆめみし完全版第6巻は 第三十一帖 真木柱(まきばしら) 第三十二帖 梅枝(うめがえ) 第三十三帖 藤裏葉(ふじのうらば) 第三十四帖 若菜上(わかなじょう) が範囲である。なお、源氏物語の帖としては、第三十四帖「若菜上」と第三十五帖「若菜下…

大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 5」(講談社)

あさきゆめみし完全版第5巻は 第十九帖 薄雲(うすぐも)(第4巻の続き) 第二十帖 朝顔(あさがお) 第二十一帖 少女(おとめ) 第二十二帖 玉鬘(たまかずら) 第二十三帖 初音(はつね) 第二十四帖 胡蝶(こちょう) 第二十五帖 蛍(ほたる) 第二十六帖…