スエトニウスはカエサルを初代皇帝と扱ったが、名実ともに初代ローマ皇帝となったのはオクタヴィアヌスである。しかし、オクタヴィアヌスは自らを皇帝と考えることはなかった。それどころかカエサルによって独裁の進んだローマに共和制を取り戻した、ということにしていた。
ただ、オクタヴィアヌスは共和制ローマに存在していた様々な権利を手にしていた。平民の権利を守る護民官であり、宗教のトップである最高神祇官であり、全軍の指揮権を有し、元老院においては第一人者を示す「プリンチェプス」であった。そのどれもが既存の権利と権力であり、これらの全てをただ一人が兼ねることでいかなる権威が発生するのか気づいている人はいなかった。オクタヴィアヌスを除いて。
これら全ての権利と権力を手にしたオクタヴィアヌスは、アウグストゥス(尊厳なる者)の尊称を獲得し、アウグストゥスは以後、事実上の皇帝の称号となる。
オクタヴィアヌス、いや、尊称獲得以後の名であるアウグストゥスと呼ぶべきであろう彼は、ローマの全てを一手に握り、内乱後のローマに平和を構築していく。ただ、アウグストゥスは超一流の政治家であっても軍事的才能は無かった。カエサルのガリア遠征をさらに完結させるべく乗り出したゲルマニア遠征は多大な損害を生み出すこととなる。
友人に先立たれ、後継者と目した家族にも一人を除いて先立たれた孤独な老後の末に、初代皇帝アウグストゥスはこの世を去ることとなる。



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