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小林照幸著「死の貝:日本住血吸虫症との闘い」(新潮文庫)

死の貝―日本住血吸虫症との闘い―(新潮文庫)

ある意味当然ではあるが、本書の書影に帯はついていない。

しかし、書店で本書を手に取ると、センセーショナルな帯がついてくる。

以下がその帯である。

Wikipediaで「地方病(日本住血吸虫症)」を参照したことのある方ならば、あの記事の内容に圧倒させられたときのことを容易に思い出すであろう。本書はまさにあの記事の圧倒のバージョンアップ版である。

徴兵検査を迎えた二十歳を迎えても声変わりすら迎えていないような外見に留まり、顔は青白く、手足はやせ細っている一方、妊娠したかのように腹がふくれている。そうした症状の者が特定地域にだけ集中して発生している異常事態はどのように迎えてしまったのか?

おそらく寄生虫であろうという見当をつけるも該当する症状は見つからず、ついに新しい寄生虫症状であることを発見したものの、原因はわかっても対処法は見つからずにいる時間を過ごし、ようやく見つけたのは地域に当たり前に存在する小さな貝を媒介とする寄生虫。ならば、その小さな貝を地域から根絶させれば寄生虫に悩まされることはなくなる。

そこから先は、昔ながらの自然を良しとする人からすれば、あるいは自然環境の保護を訴える方からすれば噴飯物の対処だった。河川をコンクリートで埋めたのだ。さらにこれは予期せぬことであったが、だんだんと普及しつつあった家庭用洗剤をこの時代は垂れ流しにしていた。これが小さな貝を殺した。それも絶滅させた。それはたしかに自然を破壊する行為であったが、自然の一部でもある貝を、そして寄生虫を破壊する行為でもあったのだ。

自然環境の破壊を嘆き、元の河川に戻すべきという意見は納得できる意見でもある。だが、この寄生虫を考えたときと、杉花粉を考えたときだけは、自然環境の破壊こそが正義だと実感できるようになるはずである。