昭和20(1945)年8月15日から同年12月31日までを扱う一冊である。
玉音放送の後、主な大都市は焦土と化した日本にあって、大都市が焦土と化していた時期に、映画、演劇、音楽、出版、スポーツなどの文化の担い手たちがどのように再起し、娯楽産業を復興させていったかを詳細に描いている。それまでの抑圧からの解放と同時に、絶望としか評しえない貧困。そして、終わりなき混乱の渦中にあっても、文化の最高に人生捧げた人達の足跡がここに存在する。
- それぞれの一九四五年八月十五日
- 八月・動き出す人びと
- 九月・幕が開く劇場、封印される映画、新しい歌声
- 十月・檜舞台の役者たち
- 十一月・禁止された芝居、広がった土俵、放たれたホームラン
- 十二月・『櫻の園』に集う新劇人
これが本書の目次である。これだけを見ても、昭和20(1945)年の玉音放送から大晦日までの四ヶ月半の混迷と復興の状況を想像していただけるであろう。
しかも本書は紀伝体形式の歴史書でもある。すなわち、一人一人の足跡を追いかけることで歴史を書き記す形式での歴史書である。そのために、かの困難な時代に立ち向かった一人一人の表情がより強固な物となって目に飛び込んでくるはずである。