德薙零己の読書記録

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鳥嶋和彦著,霜月たかなか構成協力「Dr.マシリト 最強漫画術」(集英社)

Dr.マシリト 最強漫画術 (ジャンプコミックスDIGITAL)

令和6(2024)年3月8日金曜日、衝撃的なニュースが駆け巡った。

鳥山明氏死去。

このニュースの衝撃は日本国内に留まらず、国境を越えて世界中に響き渡り、鳥山先生の作品を愛する世界中のファンから、鳥山先生の死を惜しむ声が、そして、鳥山先生への追悼の声が寄せられ、鳥山先生がどれだけ愛される作品を生み出してきたかを改めて知ることとなった人も多かった。

しかし、鳥山明ほどの卓越した漫画家であっても順風満帆な漫画家人生であったわけではなく、デビューに至るまでに500ページものボツ原稿を生み出さなければならなかったこと、初連載作品となったDr.スランプを毎週送り出すのに苦労し続けたこと、もっと言えば当初想定していた発明家を主人公とした作品ではなく、その発明家の生みだしたロボットを主人公とする作品となったこと、Dr.スランプを終わらせるためにDr.スランプを超える作品を求められたこと、その作品であるドラゴンボールの苦心、その全てが伝説であり、多くの人の知るところである。

そして多くの人は知っている。

その伝説の全てに絡む人物、すなわち、Dr.マシリトこと鳥嶋和彦氏のことを。

鳥嶋氏は漫画雑誌の編集者になりたいと考えたわけではなく、集英社に入社した後の配属が週刊少年ジャンプ編集部であったという人である。そもそも漫画に精通しているわけではなく、漫画に真正面に向かい合ったのも漫画雑誌編集部に配属されてからという人である。

そのために、従来の編集者と異なるアプローチができた。

マンガを読みやすくすることへのアプローチである。

マンガを頻繁に読む人であれば多少の読みづらさがあっても気にしない。しかし、漫画が数多くのコンテンツ接種手段の一つであるという人にとっては、マンガが読みづらいというのはその作品を敬遠する理由になる。ゆえに、面白いだけでなく読みやすい作品を作り出すことに注力する。さらにここに、ジャンプの人気至上主義が加わる。描きたい作品を描いていれば済むのはアマチュアであり、プロの漫画家であるなら、描きたい作品ではなく読者の求める作品を誌面に送り出さなければならない。

これを鳥嶋氏は徹底させた。

では、具体的にどのように徹底させたのか?

その回答は本書にある。