德薙零己の読書記録

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朧谷寿著,伊東ひとみ編「平安京の四〇〇年:王朝社会の光と陰」(ミネルヴァ書房)

平安京の四〇〇年:王朝社会の光と陰

現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」。

今のところ、このドラマの舞台は平安京である。無論、紫式部の生涯を追いかけることになるわけであるから、平安京を飛び出して越前国(現在の福井県)に向かうシーンはあるはずであるが、その他の舞台は平安京とその周囲に留まるはずである。

さらに言えば、紫式部ことまひろの過ごす平安京桓武天皇の命令による平安遷都から200年が経過し、計画都市としての平安京から現実に即した都市京都へと移っていった結果の都市京都である。すなわち、当初の計画にあった左右両京からなる平安京ではなく、朱雀大路より東の左京に人が集中し、左京の北部に貴族の邸宅が建ち並び、南部に庶民街が立ち並ぶ時代に平安京である。なお、平安京の敷地の東、鴨川周辺や鴨川東岸については、この頃はまだ都市機能が万全ではなく、雑多な家の建ち並ぶ、言うなればスラム街である。これを都市として整備したのは藤原道長であり、そのあたりのことを大河ドラマで描くかはわからない。

さて、本書は大河ドラマの舞台である平安京の、そして、平安時代の400年間をまとめた一冊である。桓武天皇はいかにして、また、どのような理由で平城京を離れ、この土地に都を築き上げることとしたか。平安京はなぜ完成しないまま放置され、西半分の右京は都市としての機能はいかにして喪失したか。計画都市である平安京は計画が破棄された後に現実に即した都市としていかに変貌していったか。大河ドラマより後の時代となるが、平安京の都市機能がさらに東に進んで鴨川東岸までいたり、白河の地がいかにして京都に組み込まれることとなったか。平安京の南、今は無き巨椋池に広がる鳥羽離宮がいかにして成立したかを本書は書き記す。

本書は平安時代平安京400年間を如実に書き記す。大河ドラマ放送開始から2ヶ月半を経ているが、それでも本書を読むことで、大河ドラマの舞台を、大河ドラマの前を、大河ドラマのあとを詳しく知ることとなるはずである。