日本は国家を作り出したときに中国大陸の国家様式を模倣した。それこそが国家であり正解であると考えたからである。
その前提が崩れた。
必ずしも中国大陸の国家様式が正解であるとは限らず、現実に即した社会を構築してもいいのだと気づかされ、さらには中央集権国家という概念を破棄するようになったのが日本国における中世である。
本書はその中世における気候を調べた一冊であり、気候が中世世界の成立にいかなる影響をもたらしたかをまとめた論文集である。
本書が描き出す中世日本の現実はバラ色ではない。農業生産性が落ちて飢饉が頻発し、貧しさが治安悪化を生みだして戦乱を招きだした時代である。なぜそのような時代を迎えることとなったのかの答えも残酷な現実を突きつける。
かの時代の人達が直面したのは人間の努力でどうにかなるレベルの気候変動では無かったのだ。
本書は中世日本の気候変動を如実に描き出す。
後世から見ればドラマティックな社会かもしれないが、本書で示されているのは残酷な現実である。