德薙零己の読書記録

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中室牧子著「『学力』の経済学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「学力」の経済学

さいたま市緑区にはヘビークレーマーがいる。いや、いたと言うべきか。さいたま市議会議員であった加川義光である。こいつはさいたま市政に留まらず、埼玉県政、そして国政に関しても例外なく難癖を付け続け、選挙カーを乗り回してスピーカーで騒音を叫き散らし、駅前に陣取って騒音をぶちまけ続けてきた。

そのクレーマーの中にもたった一つだけ納得できる訴えがあった。少人数学級の導入である。市議になる前、そのクレーマーは小学校の教師であったという。その経験から訴えてきたのが少人数学級の導入なのだが、そのクレーマーの唯一の検討材料と言える少人数学級の導入について、本書は明確に否定している。

そんなもの何の結果も生まないのだ。

たしかに教育における教師の負担の重さは無視できるものではない。しかし、その解決は少人数教育ではなく、問題児の排除と成績順のクラスの導入のほうが結果を出すのだ。つまり、そのクレーマーは何の役にも立たないことを訴え、そうでないときは他社のやることなすことに難癖を付け続けていた人生だったわけだ。

ただ、考えてみれば極めて簡単な話である。その子に合わせた教育をするという視点で重要なのは、その子に合わない存在に邪魔されない環境を作りあげることである。たとえばイジメの加害者を排除し、授業のレベルをその子に合わせることが重要なのだ。少人数学級というのは、一見すると合理的だが、実は何の解決にもなっていない愚策なのだ。

もっとも、そのことをあのクレーマーは絶対に受け入れないであろう。成績順のクラスを設けたり、問題児を排除したりするなど認められないという表向きの名目と、そいつが小学校の教師であったとき、学年で最も問題をくりかえし、学年で最も成績の悪かった人間というのが、教師であるはずのそのクレーマーだったのだから。