德薙零己の読書記録

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ペリー・メーリング著,山形浩生訳「21世紀のロンバード街:最後のディーラーとしての中央銀行」(東洋経済新報社)

本書は金融市場と中央銀行の役割について深く掘り下げた一冊である。

著者は、中央銀行が「最後の貸し手」としての役割を果たすことが常識となっていることを明確に説明していると同時に、近年の金融危機においては、中央銀行がその役割を超えて Dealer of last resort(最後の買い手)として機能することを指摘している。つまり、誰もポジションを取って価値のバックストップを提供しないときに、あえて大量の資産購入を通じて現在の価値の根拠を提供する機能を果たしている。

その上で本書は、従来の経済学や金融論が見落としてきた金融市場の特質を捕捉している。すなわち、金融市場が単なる「貸し手」と「借り手」の間の取引場所であるだけでなく、市場全体がどのように機能するか、そしてそれがどのように社会全体に影響を与えるかという視点である。

本書において著者は、この問題を深く理解し、読者に対して明確で洞察に富んだ説明を提供している。金融市場と中央銀行について深く理解したい読者にとって、本書は非常に価値ある一冊といえるであろう。