いささめに読書記録をひとしずく

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

今井むつみ著「学力喪失:認知科学による回復への道筋」(岩波新書)

学力喪失 認知科学による回復への道筋 (岩波新書)

まずは以下の問題を解いていただきたい。

  • 250g入りのお菓子を30%増量すると、お菓子の量は何gか?
  • 休憩無しで山に登ってから降りるのに5時間10分掛かった。山を登るのに2時間50分掛かったとしたら、山から降りるのは何時間何分か?
  • 1/2と1/3ではどちらが大きい?
  • 次の三つの文章のうち、違う意味の文章はどれ?
    1. あの人は自分では何もやらないのに、文句ばかり言います。
    2. あの人はいつも文句ばかり言います。そのくせ、自分では何もやりません。
    3. あの人は自分では何もやらないので、文句ばかり言います。

いずれも本書に登場した問題である。

これらを簡単な問題に感じたなら、あなたは幸運なことである。

数の概念を掴めない、文章を読み解くことができない、そうした子は数多くいるし、そうした大人も数多くいる。

なぜか?

詳細は本書を読んでいただきたいが、果たしてこの国の教育システムは正しいのだろうかと考えてしまう。それは何も学校教育だけでなく、家庭教育もまた考え直さねばならない話とも言える。

また、「これぐらいの問題簡単だろう」「間違えるなんてありえるのか」と考える人、そして、こういった問題を間違える人の気持ちがわからないという人にも本書を読んでいただきたい。生来劣っているわけではなく、概念の把握に失敗しているのだ。その失敗はどのようなメカニズムで生じ、失敗に直面した人はどのように苦しんでいるのかを知らないと、そこは相互に理解できない断絶が生まれてしまう。

まずはこの認識が必要である。