10月1日、平安時代叢書第二十集「承久之乱」の公開が始まった。平安時代叢書の最終集である。もとより承久の乱までを平安時代叢書で描くと宣言していたので、承久の乱の描写で平安時代叢書は終わる予定である。
さて、源平合戦からの歴史を叙述するにあたって重要な歴史資料となるのが吾妻鏡であるが、吾妻鏡は鎌倉幕府の正式な歴史書であるとは言え、北条家にとって都合良く編纂された歴史書でもあり、吾妻鏡の歴史資料としての正確性については他の史料と比較することで補完する必要がある。
本書はこの吾妻鏡について捉え直し、吾妻鏡に記されている鎌倉幕府の歴史的転換についてトピックをまとめた書籍である。
上記は本書の目次のうち源頼朝から承久の乱までの部分の目次である。章タイトルと項タイトルとを見ていただければ、著者がどのタイミングを鎌倉幕府の歴史における大きな転換点と見做しているか御理解いただけるであろう。
吾妻鏡の原文を読んでみても著者の挙げた箇所はかなり詳細に書き記していることがわかるはずである。編年体である吾妻鏡は現在の新聞と違って、書くべきこと無ければどうでもいいことで紙面を埋めるのではなく、書かないでいる。同時に、重要であるがゆえに書くべきことが大量にある場合は、その大量の書くべきことを全て書き記している。吾妻鏡の記事の文量がそのまま、北条家の視点からの鎌倉幕府の歴史転換としての重要性を意味している。
その結果、本書を読むことで鎌倉時代の大まかな流れを掴み取ることができるようになっている。細部を割愛している書籍と感じてしまうが、それは、平安時代叢書の詳細さのほうが異常なので、こちらが普通なのだと考えていただきたい。