いささめに読書記録をひとしずく

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橘木俊詔著「中年格差」(青土社)

中年格差

団塊ジュニア世代にとっての平等とは、理念であって現実ではない。

家族を持ち、自分が建てた戸建てやマンションに住み、資産を形成して将来の年金の心配も無い。

家族もなく、狭い賃貸や親の残した住まいに住み、資産など夢物語で将来の年金など期待もできない。

よく、同窓会で格差を思い知った――そして、小学校や中学校でいじめられていた側が成功し、いじめていた側が落ちぶれていた――という話があるが、格差は同窓会で明らかになるほどの甘いレベルではない。そもそも同窓会そのものが開催されず、開催されるにしても通知が来るのは同学年における格差社会の勝者、さらに参加するのは現実社会の格差の勝者に限定されることとなる。もっとも、学校という社会での格差の敗者が実社会で格差の勝者になることは珍しくないといえばその通りであるが……

それでも本書に記されている中高年世代の身に起こっている格差、それもかなり闇の深い格差は厳しい現実を突きつける。正規か非正規か、既婚か未婚か、資産はどれだけ構築しているか、将来の年金はどうなのか、数少ないパイを数多くの人間が奪い合って来た結果が少数の勝者と多数の敗者という構図を生み出し、取り返しの付かない格差を生み出している。

この現実をいかに解消していくのか?

たとえば非正規雇用で不安定な暮らしを余儀なくされている人を正規雇用にするというのは一つのアイデアである。私もそのようなアイデアを一冊にまとめて公表したことがある。

実は、本書冒頭に記されているエピソードも私のマンガのアイデアの一つなのだ。宝塚市で実施した宝塚市の正規職員募集の競争率、実に400倍である。これが氷河期世代の現実である。すなわち、人手がいないという問題に対する回答は氷河期世代に視点を向けることでかなり解決するのである。それも格差解消という副産物を伴って。

本書は厚生労働省の統計や国勢調査を引用し、非正規労働者の賃金格差や未婚率の上昇、自殺率の高さといった、就職氷河期世代の「一度失敗したら挽回不能」という日本社会の構造的問題を説得力を持って暴き出しているのである。

ここにメスを入れることこそ、今後の日本が生き残るために必要な手術なのだ。