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玉木俊明著「世界史を「移民」で読み解く」(NHK出版新書)

世界史を「移民」で読み解く (NHK出版新書)

極論すれば、全てのホモサピエンスはアフリカ大陸で誕生したイヴの子孫であり、イヴの誕生した地を除き、全ての人類は移民とその子孫である。

もっとも、それは極論であって現実的な話ではない。あなたも私も誰もが移民ではないかと言われて納得する人などそうはいない。移民は昔も今も社会問題であり、ときには国家の命運を左右する問題に発展し、歴史を動かすこともある。新しくやってきた人達と以前から住んでいる人達との間で衝突することなど珍しくもなんともない。

本書は人類の歴史を移民の視点から捉えた一冊である。すなわち、衝突の歴史であり、また、移民による社会構築の歴史である。

神聖不可侵と扱われるギリシア文明も移民という軸で観るとオリエント起源の一面として捉えることができる。世界史の教科書で扱われることの多いゲルマン民族フン族の大移動、日本史の教科書でも取り上げられるモンゴル帝国のように移民が文明の伝播を促したという点も無視できない要素である。

また、移民ということは人が移動できる手段を手にしていることを意味する。前述は陸路の移動であるが、海洋交易に視点を向けると、陸路を遙かに上回る広範囲で人が移動し、移動により豊かさを手に入れることが見られる。大航海時代だけでなくムスリム商人やヴァイキング永楽帝の時代に限定するが中華帝国の航海があげられる。交易とは移動した先にコミュニケーションを取れる相手がいてはじめて成立する。交易先に移り住んでいる自国民であることもあるし、交易先の国の人であることもある。

移動による豊かさにには積極的に豊かさを求める移動もあるが、消極的な移動もある。現在の土地に住み続けるのであれば生きていけないと考えて、生きていける土地へと住まいを移すことは良く見られることである。ジャガイモとアイルランドという言葉で思い浮かぶあとの光景はその例証と言えよう。

また、消極的な移動の中には本人の意思に寄らない移動も存在する。ユダヤ人が受けてきたことやイスラエルがいまやっていることも忘れはならないし、アフリカ大陸から奴隷として運ばれていった人達のことも忘れてはならない。

そうした歴史の延長上に現在の移民問題も存在する。プラスもあればマイナスもある。それが移民と歴史との関係である。こうした移民問題が今後の人類をどのようにしていくか。その答えを歴史から求められるのかもしれない。