德薙零己の読書記録

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アダム・グラント著,楠木建監訳「GIVE & TAKE:『与える人』こそ成功する時代」(三笠書房)

本書の著者は人間のタイプを以下の三つに分けている。

  • ギバー:人に惜しみなく与える人
  • イカー:真っ先に自分の利益を優先させる人
  • マッチャー:損得のバランスを考える人

さて、上記の三つのタイプのうち最も成功するのは誰であろうか?

一見すると攻撃的なテイカーがトップに立つと思われがちである。だが、本書の著者はその意見を否定する。最も成功するのはギバーだというのだ。ギバーやマッチャーがどのようにしてより大きなネットワークを構築し、同僚から最も創造性を引き出し、最も成功した交渉を達成するかを説明しているのが本書である。

本日の冒頭に記したタイプは人との関係構築のタイプである。具体的には他者とどのように協力関係を築き上げるかという分類である。最も成功するギバーが、どうやって他人に価値を提供し、信頼や評判を築き、長期的な関係を構築するかを具体的に指し示している。と同時に、ギバーが陥りやすい落とし穴や、テイカーやマッチャーとどう付き合うかも分かりやすく解説している。

本書の記載に救われる思いになった人は数多いであろう。そして、ある程度の年齢になったならば周囲に気づくことになるであろう。周囲にどれだけテイカーがいるか、そして、マッチャーがいるか。

残酷な話になるが、青少年期にギバーであった者とテイカーであった者とがいて、学校などで同じ環境にいた場合、年齢を重ねると自然に相互に顔を合わせることは無くなる。ギバーであり、また、現在進行形でギバーである者であることが就業における最低条件であり、その人達だけの閉ざされた環境で成功者の社会を作り上げている。その中にテイカーの入り込む隙間は、無い。