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マウンティングポリス著「人生が整うマウンティング大全」(技術評論社)

人生が整うマウンティング大全

「マウントをとる」とはあまり上品な言動ではないが、人間の本質として、自らを賛美する言葉を口にして他者より優越に立とうとするものがある。

本書に挙げられている例だと

「申し訳ありません。その日はあいにくのニューヨーク出張でして、同窓会に参加することができません」

「日本の冬の寒さが苦手で、逃げるようにバルセロナへの移住を決めました。寒さに強い人が本当に羨ましいです」

「知人と話していて、プラトンの『ソクラテスの弁明』で盛り上がりました。彼との議論はいつも刺激的です」

「申し訳ありません。自民党から呼び出しをくらってしまいまして、お先に失礼させていただきます」

といった言葉が交わされる場面は容易に想像できる。何なら、上記に挙げた例ではないものの本書に掲載されているマウントの言葉の中には実際に言われた言葉が複数存在する。

そうした本書に挙げられているマウンティングの語の羅列は読んでいて面白い。しかし、本書の主軸は本書後半にある。すなわち、相手にマウンティングさせるテクニックだ。

ビジネスというのは必ず相手が存在する。その相手をいかに気分良くさせるかというのは、他者と接することの多いビジネスパーソンであれば身につけておかなければならない資質のうちの一つである。優秀な営業は相手にマウンティングさせることで相手を気分良くさせ、自らのビジネスを成功に導く。

また、相手を気分良くさせるのは恋愛をはじめとするプライベートでの人間関係構築にも有意義に働く。相手を自らと親しくさせるには、相手に気分良くなってもらうのがかなり有意である。ついでに言うと、キャバクラやホストクラブで客が気分良くなるのも同種のテクニックを店の人が駆使しているからである。

また、マスメディアだけでなくネットにおいても非難を受けることの多い政治家が、どういうわけか選挙にはやたら強くて当選を重ね、党の重鎮となり、それが与党であれば大臣になるという光景もよく見られるが、そうした政治家も多くが、人垂らしの能力に長けていて、話をする相手を気分良くさせる能力をいかんなく発揮し続けているために、選挙で得票を獲得している人である。

マウンティングは人間の本質であると考えた上で、自らがマウントをとるのではなく、相手にマウントをとらせる。これは対人関係の構築としてかなり有用となるテクニックである。