いささめに読書記録をひとしずく

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ヒロユキ著「アニメ化4作品のマンガ家が腕時計にハマった結果5000万円の借金をつくった話」(ワニブックスPLUS新書)

漫画家のヒロユキ氏はこれまで、「ドージンワーク」「マンガ家さんとアシスタントさんと」「アホガール」「カノジョも彼女」と4作品をアニメ化させた、言わば成功した漫画家である。ちなみに、何かと世間を騒がせることの多い西村博之氏のこと「ひろゆき」氏とは同名の別人である。

その漫画家のヒロユキ氏が腕時計にのめり込んで借金5000万円を残してしまった顛末を記したエッセイというのが本書の骨子であるが、本書はその借金に苦しむ様子を描き出したエッセイではない。借金に苦しんでいないとまでは言えないが、時計にのめり込むことで自らの金銭事情を見つめ直し、自らの趣味の拡がりと新たな人との出逢いを見つめたことで、自分自身を省みるようになったエッセイである。

昨日公開した「ラグジュアリー戦略:真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか」にも関連するところであるが、高級な腕時計というのは、所持していることそのものがステータスである。腕時計自身にそのステータスに見合うだけの品質が保証されているが、極論すればスマートウォッチのほうがはるかに高い品質を有しており、持っていることの必要性となると、あるとは言えない。だが、腕時計に付随するステータスとなると話は別である。

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家やマンションを買った人であればわかると思うが、本作に記されているほどの金額ではないにせよ、大きな買い物をすると人生が激変する、それも、これまでになかった他者との接点が新たに構築され、自らの生活が激変する。さすがに成功した漫画家とあってその規模がもの凄いことになっているが、それより規模は小さいものの、家やマンションを買った人であればわかる世界が本書には展開されている。

それは決して後悔の話でも、失敗譚でもない。新たな可能性を示す話である。