德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

倉本一宏著「増補版 藤原道長の権力と欲望:紫式部の時代」(文春新書)

増補版 藤原道長の権力と欲望 紫式部の時代 (文春新書)

今年の大河ドラマ「光る君へ」。このドラマでは紫式部の時代を扱った作品であり藤原道長が重要人物として登場している。

今から1000年前の日本国の最高実力者であり、藤原摂関政治のピークを築き上げた人間ということもあって、藤原道長は例外なく日本書の教科書に取り上げられているし、子供向けの伝記マンガにも藤原道長は間違いなくラインナップされている。

それでいて、藤原道長の業績については取り上げられることがほとんどない。藤原道長が何をした人なのかを訊ねても、明瞭に答えることのできる人はほとんどいない。歴史研究者でない方で藤原道長の業績を滔々と述べることができる方がいるとしたら、德薙零己のかの名作、平安時代叢書第十集「源氏物語の時代」と第十一集「欠けたる望月」を読んだ方々だけである。ただ、作者本人が書き記すのもどうかとは思うが、平安時代叢書は大型作品であり、また、平安時代を全部書くという歴史小説であるため、藤原道長については十分に書き記しているものの、詠み終えるにはかなり時間を要するであろう。

そこで本書である。本書は藤原道長にフォーカスを当て、藤原道長がどのような形で権力を握り、どのような形で権力を行使したかを、詳しく、それでいてコンパクトにまとめている優れた一冊である。

政治家藤原道長、人間藤原道長を詳しく知りたい方は、本書がお勧めである。

もしくは平安時代叢書がオススメである。