高校の世界史の教科書はその多くがヨーロッパ史にページを割いている。それに異議を唱える向きは多いが、それでもヨーロッパの歴史を特別視して、ヨーロッパは特別な地域であるとの概念が成立している。
その概念は世界史の教科書に限らず社会科学の多くの書籍についても適用される。政治も、経済も、法も、ヨーロッパとその延長上の地域として北米大陸が最優先で考慮され、その他の地域は主流から離れたその他の地域という扱いになることが多い。20世紀以降にその他の地域の中から日本が例外的に取り上げられるようになったが、それもまたヨーロッパの延長としてである。
その概念に真正面から異議を唱えるのが本書である。著者は伝統的なヨーロッパ例外主義説に異議を唱え、18世紀以前はヨーロッパと中国は経済的に類似していたと主張するのが本書である。
その上で著者は18世紀の双方の社会の経済的、社会的、政治的側面を幅広く比較し、類似点と相違点とを浮き彫りにすることで、類似性を持っていた双方の社会が分岐していった経緯を書き記している。
上記にも記した例外地域である日本。その歴史は中華経済圏に中に組み込まれたものと捉えるべきか、近いゆえに似た環境となり似た歩みとなったのか。分岐の過程で独自にヨーロッパ寄りになっていった、あるいは狭いながらもつながっていたヨーロッパとの接点を活かして中華経済圏から離脱したとするべきか。それを考えさせられる一冊でもある。
あと、ド・フリースを何度も空目する。