德薙零己の読書記録

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大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 6」(講談社)

源氏物語 あさきゆめみし 完全版(6) (Kissコミックス)

あさきゆめみし完全版第6巻は

  • 第三十一帖 真木柱(まきばしら)
  • 第三十二帖 梅枝(うめがえ)
  • 第三十三帖 藤裏葉(ふじのうらば)
  • 第三十四帖 若菜上(わかなじょう)

が範囲である。なお、源氏物語の帖としては、第三十四帖「若菜上」と第三十五帖「若菜下」を第三十四帖「若菜」と一つの帖とし、第四十一帖にタイトルだけがあるものの原文の残っていない「雲隠」を充てるのが一般的、あるいは、そのほうが源氏物語の作品としての魅力を増すものであるが、当ブログの記事では若菜を上下に分ける方式の帖を採用する。

また、完全版第6巻の終わりが「若菜上」の終わりと合致し、それがまた続きを読みたくなるところで終わりを迎えているため、読者に第7巻を一刻も早く読みたいと思わせるようになっている。このあたりはさすが講談社とするべきか。

さて、あさきゆめみし完全版第6巻は光源氏が貴族としてこれ以上ない栄誉を獲得し、最大級の権勢を築き上げているところから、だんだんとピークアウトしつつあるところを描いている。

光源氏は恋愛に不自由していない人物であるがために、光源氏以外に恋愛に苦悩する男性が登場すると、特に読者が男性である場合はそちらのキャラクターニシン近刊を抱くようになるものである。たとえそれが報われぬ恋であろうと、最愛の女性の関心が光源氏のもとに向かってしまっていてこちらを振り向いてくれないとなっていようと、それでも自分の恋愛を貫く姿勢は深い読後感を覚えるものである。その結果として、最愛の女性を悲しませることになることもあれば、最愛の女性の苦しむところを見ないために自分が身を引くこともあるが、そのどちらも理解できる話である。もっとも、前者の場合は理解はできても同意できないが。

ところが、その光源氏が恋愛という側面でまさに栄華を崩し始めるのが完全版第6巻である。添付の画像の頃の光源氏は恋愛弱者の苦悩を知ることもなかった。しかし、本巻の終わりを迎える頃になると、光源氏の転落が始まるのである。

本巻の時点ではまだそれを知らない。