德薙零己の読書記録

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酒井隆史著「ブルシット・ジョブの謎:クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか」(講談社現代新書)

ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか (講談社現代新書)

本書はデヴィッド・グレーバー著「ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論」(岩波書店)の邦訳を担当された酒井隆史の著作である。

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どうして社会的価値の高い仕事ほど報酬が低いのか?
報酬の高い仕事を誰も見ない書類をひたすら作成するだけの仕事。
無意味な仕事を増やすだけの上司。
偉い人の虚栄心を満たすためだけの秘書。
嘘を嘘で塗り固めた広告。
価値がないとわかっている商品を広める広報。
いずれも、今すぐ無くなったところで社会は困らない。その職に就いている人は失業してしまうからダメージがゼロであるとは言えないが、必要不可欠な仕事であるかと言われると、その答えはNOである。

それでいて、これらの仕事は高給である。高給であるために多くの人が就業を望み、需要に応える形で供給も増えていく。必要不可欠ではない仕事は年月を重ねるにつれて増えていく。

また、遊んで暮らせるとまでは言わないが就業状況は厳しいとまでは言えない。上記の職場の多くは労働基準法を守っている。

残酷な言葉となるが、上述の職業とは逆の必要不可欠な職業というのは多くが激務であり、医師などの一部の職を除くと報酬も高いとは言えない。もっと言えば、就業状況と課せられている責任を考えると現在日本の医師も高い報酬であるとは言えない。

理想としては、必要不可欠な仕事ほど優遇され高給で遇されるべきである。

しかし、そのような御伽噺が成立する社会など存在しない。

本書は書き記す。ブルシット・ジョブの現実を、そして問題を。

だが、その解決策は不十分とするしかない。本書は入口である。