德薙零己の読書記録

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繁田信一著「わるい平安貴族:殺人、横領、恫喝…雅じゃない彼らの裏の顔」(PHP文庫)

わるい平安貴族 殺人、横領、恫喝…雅じゃない彼らの裏の顔 (PHP文庫)

本書は2007年に「王朝貴族の悪だくみ:清少納言、危機一髪」として刊行された書籍の改題新刊であり、また、同著者の「殴り合う貴族たち」(角川ソフィア文庫)の続巻でもある。

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前著と同じく本書も平安貴族の悪事を歴史資料からピックアップして一冊の書籍にまとめているが、本書は前巻よりも悪事の度合いが増している。横領、恐喝、脱税、文書偽造。文書偽造と言っても単に書き換えるのではなく、書き換えを強要して文書を作らせたあと、偽造文書を書かされた者を殺害している。

本書が主として取り上げている貴族は前著と違って受領層である。つまり、貴族としての地位は前著に登場した面々より低いが、その代わり、より粗雑でより粗暴な行動を見せるようになっている。そしてその地位の貴族というのは、まさに平安時代の文学として真っ先に思い浮かぶ源氏物語の著者の紫式部枕草子の著者の清少納言の父も含まれる。

紫式部の父の藤原為時や、清少納言の父の清原元輔が本書で取り上げられているような悪事を働いた貴族であるとは断定していない。ただ、全く見知らぬことではなかったはずである。

さて、今年の大河ドラマではこのあたりのことをどのように描くであろうか?