德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

播田安弘著「日本史サイエンス〈弐〉:邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く」(講談社ブルーバックス)

日本史サイエンス〈弐〉 邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く (ブルーバックス)

前作に続き、日本史の出来事を理系的素養の側面から分析して解を示す書籍であり、第2巻でもある本書もまた、日本史上の出来事から三つの出来事を取り上げている。豊臣秀吉朝鮮出兵日露戦争日本海海戦、そして、禁断とも言うべき邪馬台国論争である。

ちなみに、前作の記事はこちら↓

rtokunagi.hateblo.jp

本書の順番と異なるが、まずは豊臣秀吉朝鮮出兵を考えると、日本軍は亀甲船の前に敗れ去ったとなっているが、本書はそれに疑問を呈している。当時の朝鮮半島の造船技術で亀甲船を作ることができたのかという疑問である。何しろ、日本側の記録はおろか、朝鮮半島の側にも記録が無い。ただ、船の設計図に関する記録は発見されていることから、実在したならば日本軍は海戦で苦戦しただろうとしている。それよりも問題であったのが補給問題で、中国大返しの頃の豊臣秀吉はどこに行ってしまったのかと言いたくなる内容で、このときの朝鮮半島の日本軍はまともな補給を得ていなかったことを本書は証明している。

日本海海戦で日本が完勝できた理由は、東郷平八郎の見事な戦術によるものでも、大和魂によるものでもなく、純粋に日本軍の海軍力が圧倒していたからである。連合艦隊の軍船の数も質もバルティック艦隊を上回っており、射程距離も連合艦隊が上回り、砲弾の命中精度も連合艦隊が上回り、船の航行能力も連合艦隊が上回っていた。東郷平八郎はたしかに有能な指揮官であったし、東郷平八郎以外の人が指揮官であったらここまで完全に成功していたかどうかは怪しい。しかし、それでも最終的には日本の勝利に終わっていただろう。奇跡ではなく科学の勝利なのだ。

そして、邪馬台国論争についてであるが……、いや、これは敢えて記さない方がいいであろう。中国大陸では三国志の時代の日本国がどうであったかを科学的見地で捉えた結果が本書にあるとだけ記しておく。この問題は深く記してはならない。