いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2026-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大村大次郎著「脱税の日本史」(宝島社)

何とも衝撃的なタイトルの一冊である。 しかし、読み進めていくと、それぞれの時代の経済の情景が見て取れる。そして、時代の勝者がどのようにして経済的基盤を築き上げ、あるいは経済的な豊かさを庶民にもたらしてきたかが広がってくる。後世の人が英雄と捉…

ウォルター・アイザックソン著,井口耕二訳「イノベーターズ:天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史(1・2)」(講談社)

19世紀の詩人バイロン卿の娘、エイダ・ラブレス。 この人のことを知る人は御世辞にも多いとは言えない。しかし、この世の全てのIT関係者は彼女の存在を知っておくべきである。 なぜか? 彼女は人類初のプログラマーなのだ。チャールズ・バベッジの解析機関に…

宇野重規著「保守主義とは何か:反フランス革命から現代日本まで」(中公新書)

この国は、保守を自称する政党が政権を握ったことはない。扇千景氏が党首を務めた当時の保守党が政権与党になったことがあるが、長らく政権与党であった、そして現在でも政権与党である自由民主党は、保守政党と扱われることがあっても保守を自称する政党と…

中北浩爾著「日本共産党:「革命」を夢見た100年」(中公新書)

日本共産党の歴史は100年を超える。本書刊行は結成から100年を迎えたタイミングで刊行された一冊である。 本書の最大の功績は、日本共産党をイデオロギー的な賛否の枠組みから切り離し、政治組織としての論理で分析した点にある。著者が繰り返し問うのは、「…

産経新聞政治部著「日本共産党研究:絶対に誤りを認めない政党」(産経新聞出版)

奴らはまた人を殺した。 二年前に警備員を殺したことを全く気に止めていないのか、今度は高校生の少女を殺した。 それだけでも大問題なのに、奴らは今回の殺人について何ら謝罪も反省も見せることなく、時が過ぎ去るのを待つかのように沈黙を貫いている。 少…

大名力著「英語の発音と綴り:なぜwalkがウォークで、workがワークなのか」(中公新書)

大学一年で第二外国語としてドイツ語を学んだ人は、講義の初日にいきなり戸惑うはずである。書いてある通りに発音していいということに。Nameはネイムではなくナーメであるし、Baseはベイスではなくバーゼである。 そしてこのように感じる。 英単語のスペル…

ダリン・M・マクマホン著,東郷えりか訳「〈平等〉の人類史:先史時代からアイデンティティ・ポリティクスまで」(作品社)

以外と思うかも知れないが、格差と平等は両立する。 格差を減らすと不平等が拡大する。 不平等を減らすと格差が拡大する。 不平等の対義語である平等は、格差と両立する。 たとえば、「すべての人間は平等に生まれた」と言う言葉をトマス・ジェファーソンは…

ジョエル・シュミット著,西村昌洋訳「ローマ帝国の衰退」(白水社 文庫クセジュ)

ローマ帝国の滅亡はいつなのか? 東西に分裂したときか? 西ローマ帝国の最期の皇帝が退位したときか? コンスタンティノポリスが陥落して東ローマ帝国が地上から姿を消したときか? 本書はその問いに対する答えを示さない、いや、地球上の誰もが、さらには…

Teamバンミカス著「まんがで読破・わが闘争」(コルク)

一点だけ安心していただきたい。 これは(名前も書きたくない)の書いた(正式書名も書きたくない)を解説する本ではない。(名前も書きたくない)がどのように誕生したかを漫画にした本である。 (名前も書きたくない)がどこに生まれ、第一次大戦をどのよ…

古荘純一著「境界知能の人たち」(講談社現代新書)

歴史を振り返ってみたとき、何度か「この人はなぜこのときこのような判断や行動に出たのだろう?」と感じることがある。それは決して褒め言葉ではない。歴史を学ぶ上で不可避である、二度と繰り返してはならない悲劇に接したときの心境である。平安時代叢書…

ハリー・クリフ著,熊谷玲子訳「物質は何からできているのか:アップルパイのレシピから素粒子を考えてみた」(柏書房)

天文学者のカール・セーガンの名言「アップルパイをゼロから作りたかったら、まず宇宙を発明しなければならない」という言葉をより深く掘り進めていくと、今に生きる我々を構成する元素は、ビッグバンの瞬間、あるいは死にゆく星の中心にたどり着く。 そして…

德薙零己「おじいちゃんといっしょ 58:カラーテレビ?」

水曜日、こちらの書籍を紹介した。 rtokunagi.hateblo.jp テレビという新しい電化製品の開発に取り組んだ人たちの足跡である。 その人たちの中に、本作の主人公である佐藤善次(昭和12年生まれ・本作時点で21歳)さんと、弟の佐藤隆三(昭和15年生まれ・本作…

西部邁著「どんな左翼にもいささかも同意できない18の理由」(幻戯書房)

沖縄で一人の少女が殺された。 二年前も沖縄で警備員が殺された。 殺した連中はとてもではないが反省しているとは言えないだけでなく。謝罪の態度すら見せていない。自分たちは被害者であると言いたげな態度で終始し、連中は今まさに怒りの集中砲火を浴びて…

小代有希子著「テレビジョンの文化史:日米は「魔法の箱」にどんな夢を見たのか」(明石書店)

おじいちゃんといっしょの佐藤善次さんは、弟を養うために15歳で高校を退学し、テレビを作る工場で働き始め、65歳で定年退職するまで50年間その会社で働き続けたという経歴である。 おじいちゃんといっしょ 5: アルバム? 作者:德薙零己 Amazon 昭和12(1937…

ジェラルド・グローマー著「『音楽の都』ウィーンの誕生」(岩波新書)

オーストリアの首都、ウィーン。その名を聞いたとき、今に生きる我々は本書のタイトルにあるように「音楽の都」というフレーズを思い浮かべる。 しかし、そのイメージはウィーンという都市が誕生したと同時に生まれたものではない。都市ウィーンの誕生は古代…

德薙零己著「厨子王丸」

平安時代叢書は先週金曜日で一区切りを迎えました。 新作「厨子王丸」。いささめにて新作を公開します。 舞台は平安時代。 テイストは平安時代叢書。 主題は安寿と厨子王(あるいは山椒大夫)。 説話とも、森鴎外とも違う解釈で、厨子王丸こと岩城正道を追い…

ロルフ・ドベリ著,中村智子訳「Not To Do List: 失敗を避けて、よりよい人生にするためのやってはいけないことリスト」(サンマーク出版)

これまでどれだけの書籍が、成功への流れを、また、成功した人たちの伝記を刊行されてきたことか。そして、どれだけの人がそうした本を読み漁り、成功者たちの習慣を真似しようとしてきたことか。たとえば早起きであったり、瞑想であったり、読書であったり…

デイヴィッド・シュピーゲルハルター著,宮本寿代訳「統計学の極意」(草思社)

日本では、警察官は必ず連絡が取れなければならないことになっている。一人や二人と連絡が取れないのであれば何か特別な事情があるのだろうと考えるところであるが、それが地域全体に起こっているとしたらどうなるか? その地域にいるはずの全ての警察官と連…

森鴎外著「山椒大夫・高瀬舟」(新潮文庫)

いま、一つの企みを立てている。 全ては本日の夕方に平安時代叢書のラストを迎えることにある。 来週からはどうするのかを考えたときに思い浮かんだのがこの作品、より正確に言えば山椒大夫である。 山椒大夫と聞くと森鴎外の本作を思い浮かべる人が多いであ…

保立道久著「歴史のなかの大地動乱:奈良・平安の地震と天皇」(岩波新書)

15年前の昨日は混乱の渦中にあった。 15年前の今日も混乱は収まらなかった。 その混乱の中で一つの過去の記録に着目された。 貞観11(869)年5月26日に発生した巨大地震、そう、貞観地震である。 東日本大震災は千年の一度の大災害と言われたが、その千年前の…

矢田俊文著「中世の巨大地震」(吉川弘文館 歴史文化ライブラリー 264)

東日本大震災の発生から15年を迎えた。あの日、我々は「想定外」という言葉の無力さに直面した。そして、現実を突きつけられた。果たしてそれは本当に想定外だったのかという現実である。 その問いに対し、本書は古文書というタイムカプセルを通じて、峻烈な…

吉永良正著「「複雑系」とは何か」(講談社現代新書 1328)

昨日記した「SIMPLE RULES」は、書籍のターゲットとしてはビジネスパーソン向けであるが、中に記されているシンプルなルールの中には、自然界のシンプルなルールが存在する。 rtokunagi.hateblo.jp 空を飛ぶ渡り鳥の群れを思い浮かべていただきたい。先頭を…

ドナルド・サル&キャスリーン・アイゼンハート著,戸塚隆将監訳「SIMPLE RULES:「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える」(三笠書房)

現在開催されているワールド・ベースボール・クラシックはNETFLIXが独占放送をしており、地上波は無論、BSでも放送していない。 このことに対する是非は多々あろうが、本日の記事の主目的はそこではない。 本日の記事の主目的はNETFLIXをはじめとする企業が…

門奈直樹著「民衆ジャーナリズムの歴史:自由民権から占領下沖縄まで」(講談社学術文庫 1520)

マスメディアに対する蔑称として「マスゴミ」なる語が広く使われるようになったのはいつからであろうか。 かつて、マスメディアは庶民の代弁者であり、庶民の味方であり、権力に立ち向かう存在であった。 現在、マスメディアはむしろ庶民の敵であり、むしろ…

ブライアン・ウォード=パーキンズ著,南雲泰輔訳「ローマ帝国の崩壊:文明が終わるということ」(白水社)

私が平安時代叢書を書いていることを知っている人からすると納得していただけるであろうが、私は文学部史学科出身である。 私が平安時代叢書を書いていることを知っている人からすると納得できないであろうが、私の大学時代の専攻は西洋史であり、卒業論文の…

クリス・アンダーソン著,倉田幸信訳「ドローン・エコノミー:データ取得の革命がビジネスを変える」(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文)

この論文が発表されたとき、ドローンが平和的な産業利用、特にデータのデジタル化がもたらすビジネス革命のシンボルとして位置づけられていた。 2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵略戦争以降、ドローンにそのような平和的側面を感じる人は少ない…

カート・アンダーセン著、山田美明&山田文訳「ファンタジーランド:狂気と幻想のアメリカ500年史【合本版】」(東洋経済新報社)

大航海時代から数えるとアメリカの歴史はおよそ500年、アメリカ合衆国の建国からはおよそ250年。新大陸というフレーズから新しい国であるかのように思われるが、アメリカという国はそれなりに古い歴史を持つ国である。 本書はその500年間の歴史を振り返る一…

クリス・アンダーソン著,関美和訳「MAKERS:21世紀の産業革命が始まる」(NHK出版)

德薙零己著「SE山城京一のドラッカー講座」のVol.1のラストでは、山城京一がメイカーフェアを提唱するところで終わる。 イノベーションの7つの機会: Seven Opportunities for Innovation SE山城京一のP.F.ドラッカー講座 作者:德薙零己 Amazon ドラッカー講…

ピーター・ティール&ブレイク・マスターズ著,関美和訳,瀧本哲史序文「ZERO to ONE:君はゼロから何を生み出せるか」(NHK出版)

德薙零己は平安時代叢書第八集「天暦之治」でこのように書き記した。 平和というのは、高尚な理念で考えるから素晴らしいものという概念になるのであって、経済で考えればより儲けやすい環境というだけである。何が儲かると言って、戦争をしないことほど儲か…

山形浩生著「翻訳者の全技術」(星海社)

結論から記す。「安心の山形訳」とは、山形浩生氏が優秀な翻訳者であるだけで成り立っている評価ではない。山形氏自身がそもそも文章を書き記すことに対して素晴らしい才能を発揮する人であり、その人が翻訳という形でこの国の書籍文化に貢献しているのが現…