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今尾恵介著「地名崩壊」(角川新書)

地名崩壊 (角川新書)

私はさいたま市に住んでいる。しかし、さいたま市誕生から23年を迎えた現在に至ってもなお、この市名にはまだ納得できていない。さいたま市誕生後に引っ越してきた立場で言っていいことではないが、自分は浦和市に住んでいると思っているし、旧大宮市域については同じ市内だという意識はない。

自分が埼玉県に住んでいるという意識はある。埼玉県を代表する都市の名前を新たに創出するとき、埼玉県であることを示す都市名としなければならないことは理解できる。だが、埼玉の語源である崎玉(さきたま)とは埼玉県北部、利根川に接した地域の名称であり、県内の地名を県名に採用したところまでは理解できても、崎玉と無縁の地域の都市名に付けるには相応しくない。

それでも、さいたま市というのは地名変遷においてまだマシな方だと言える。少なくとも県外の人にとってどこの都市であるかを容易に理解できる地名である。地名変遷において新たに付される名の中には、どこにある都市であるのかを理解できない地名、歴史と断続した地名、さらには歴史に残した土地の記録が失われた地名が多数登場するようになった。

そのような地名が果たして正しいのだろうか?

本書はそのような地名の変遷に対する警鐘を鳴らしている一冊である。おもしろ地名を網羅した書籍という側面もあるが、地名を変えること、そして、地名に大きな影響を与える駅名を付すことについて見直してみたい、そう思わせる一冊である。

ちなみに、冒頭に記した浦和という都市は、北浦和南浦和東浦和西浦和武蔵浦和中浦和、浦和美園と、本書で非難される駅名を揃えた都市である。実際に住んでいる立場で言わせていただくと、この駅名を変えられると、かなり困る。それもまた、本書で批判されているブランドにかかわる話であると言われればそれまでであるが。