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高田貫太著「海の向こうから見た倭国」(講談社現代新書)

海の向こうから見た倭国 (講談社現代新書)

日本も、朝鮮半島も、古代史において大きな問題が存在する。文献史料が存在しないのだ。現存する日本の文献史料の最古は古事記日本書紀で何れも8世紀初頭の成立であり、朝鮮半島にいたっては三国史記となるがこちらは12世紀に入ってようやく登場する。日本書紀は他国の歴史書を頻繁に引用しており、それらの歴史書中には百済の歴史書も含まれているので、おそらく何かしらの文献史料は存在していたのであろうが、現存していない以上、文献史料以外に頼らざるを得なくなる。

そこで、文献史料以外から朝鮮半島と古代日本の関係を眺めるとどうなるか?

本書はこうした観点から古代の朝鮮半島と古代日本の関連性をまとめた一冊である。本書の主軸は古代朝鮮半島がいかに古代日本とつながりを有していたかであり、本書のタイトルは大言壮語に感じるが、虚偽ではない。

日本列島と朝鮮半島との関係は相互に断絶したものではなく、極めて親しい関係であった。ただし、日本列島は大和朝廷によって統一国家が誕生し。朝鮮半島南部にも勢力を拡げたのに対し、朝鮮半島では国家が林立し、高句麗百済新羅という三ヶ国による分裂時代、日本の植民地である任那を加えれば四つの地域による争いの時代を迎えた。

日本の歴史だけを見ると、どうしてこの時代の日本は理解できない選択をしたのだろうかと疑問を感じることが何度か観られる。しかし、その多くは国外に目を向ければ非合理ではなく合理的な選択となる。本書は朝鮮半島を主軸にしているが、朝鮮半島をはじめとする国外から日本列島を眺めると、日本の歴史の非合理が納得できる選択となることは珍しくない。そのことを本書は教えてくれる。