平安時代叢書でも最大のボリューム数となっている「平安時代叢書 第十七集 平家物語の時代 ~驕ル平家ハ久シカラズ~」、「平安時代叢書 第十八集 覇者の啓蟄 ~鎌倉幕府草創前夜~」にもかなり引用した論文集である。
本書掲載の論文の構成は以下のとおりとなっている
- 列島を覆う戦雲
- 源頼政と以仁王~摂津源氏一門の宿命~…生駒孝臣
- 甲斐源氏~東国に成立したもう一つの「政権」~…西川広平
- 木曾義仲~反乱軍としての成長と官軍への転換~…長村祥知
- 源義経と範頼~平氏追討の戦い~…宮田敬三
- 平宗盛~悲運の武家の棟梁~…田中大喜
- 平氏の新旧家人たち~相伝家人と門客~…西村隆
- 藤原秀衡~奥の御館と幕府構想~…三好俊文
- [コラム]乳母と乳母子――頼朝と義仲…糟谷優美子
- 鎌倉幕府の成立と東国武士
- 源頼朝~天下草創の光と影~…元木泰雄
- 大庭景親~石橋山合戦の平家方大将~…森幸夫
- 城助永と助職(長茂)~北越の「御館」武士~…高橋一樹
- 千葉常胤~列島を転戦した清盛・西行と同い年の東国武士~…野口実
- 和田義盛と梶原景時~鎌倉幕府侍所成立の立役者たち~…滑川敦子
- 北条時政と牧の方~豆駿の豪傑、源頼朝からの自立~…落合義明
- 源頼家~「暗君」像の打破~…藤本頼人
- [コラム]九州の武士たち――原田種直・菊池隆直・緒方惟栄…清水亮
- 内乱期の女院・貴族と僧たち
- 八条院~〈鍾愛の女子〉の系譜~…高松百香
- 藤原兼実~右大臣から内覧へ~…高橋秀樹
- 源通親~権力者に仕え続けた男の虚像~…佐伯智広
- 法然と貞慶・明恵~仏教改革の群像~…平雅行
- 重源~王法仏法の興隆をめざして~…久野修義
- 栄西~日本禅宗の原型~…中尾良信
- [コラム]流人頼朝の側近たち――挙兵に加わった文官・神官…下村周太郎
源平合戦は歴史の必然であった。より正確に言えば、平家政権に対する怒りと増大する格差、そして、未来の見えない混迷が反平家のうねりを生みだした。そこまでであれば歴史的事件の一つとしてカウントされることはあっても、ここまで大きな取り上げられ方はしなかったであろう。
源平合戦はあまりにもドラマティックであった。平家の滅亡があまりにも素早く、あまりにも壮大で、あまりにも予想外であった。そのために源平合戦は歴史のうねりとして頻繁に取り上げられることとなる。
本書は源平合戦を彩った面々の足跡を追いかける論文集である。私の平安時代叢書と違い数多くの方がそれぞれの人物を主役として扱う名文を作り上げ、源平合戦という時代の壮絶さを物語っている。