平安時代叢書がそれまでの藤原摂関家の描写から院政期の描写に移る、「平安時代叢書 第十五集 鳥羽院の時代」と「平安時代叢書 第十六集 平家起つ ~平家ニ非ズンバ人ニ非ズ~」を執筆中に大いに参照した論文集である。
以下に本書に取り上げられた論文を記す。
詳しくは平安時代叢書を読んでいただきたいが、保元の乱と平治の乱を経て平家政権が成立したことで、この国の政治と経済は新たな方面へと進むこととなった。具体的には、貧困からの脱却を前提とした経済発展と、その引き替えとしての格差拡大がこの時代を席巻した。
歴史にIFは厳禁と言うが、このまま平家政権が存続し続けたならば、モンゴルの侵攻が始まるまでの日本は東アジア経済圏と呼ぶべきより大きな経済圏の一部を担うようになり、格差拡大を代償とする経済発展は経験したであろう。ただ、国民生活の自由さという点では合格点を付けることはできないし、その後の源平合戦の勃発も歴史の必然となっていたと思われる。ただし、勝者が史実通りに源氏であるとは言い切れない。
本書に掲載された数多くの論文には、源平合戦前の面々の足跡が色濃く描かれている。その一つ一つが、かの時代を生き抜いた人達の思いを強く体現している。