天下を掴んでいた平家は都落ちをし、一度は天下を掴んだかのように見えた木曾義仲は戦場に散り、戦乱に加わらなかった奥州藤原氏は源平合戦終結後に滅亡した。最後に源頼朝が生き残り、鎌倉幕府が成立した。
この四者の間に何の違いがあったのか?
源頼朝は超一流の政治家であったのは事実である。ただし、この人の軍勢指揮能力は低い。あまりにも低い。この人が指揮を執った戦いで勝利を収めたのは、源平合戦に於いてはゼロ、源平合戦後の奥州遠征も物量にモノを言わせての成果であり、この人は基本的に鎌倉に留まり続ける人であり続けていた。
残る三者は基本的に自分が戦場に出ていた。戦場に出て戦っていた。戦って敗れて歴史の敗者となったが、最終的な敗者となるまでの勝敗だけを見ると源頼朝より劣っている人はいない。戦場を基準として実力有無を判定するならば、源頼朝は四者の中で最下位とするしかないのである。
それなのに、歴史の勝者となったのは源頼朝であった。
いったい何が源頼朝を最終的な勝者と誘ったのか?
一言で言うと、環境である。
平家にも、木曾義仲にも、奥州藤原氏にも、源頼朝を歴史の勝者とするのに貢献した環境が存在しなかった。源頼朝だけが、自分の元にある環境に気づき、その環境を活かして戦乱の勝者たる道を選ぶことに成功したのである。
前もって記しておくが、本書は源平合戦の解説書ではない。しかし、本書を読むことで、源平合戦をはじめとする歴史的出来事、そして、現在のビジネスシーンにおける勝敗の理由について、必ずしも実力とは限らないこと、何なら実力はさほど重要な要素ではないことが見えてくるはずである。



