平安時代叢書は現在、第十九集の公開を開始している一方、筆者は第二十集の執筆を始めたところである。時代としては鎌倉幕府成立以後の鎌倉と京都の関係であり、文字通り平安時代が終わって鎌倉時代が始まる頃である。
- 承久の乱と朝廷
- 後鳥羽院~万能の君の陥穽~…美川圭
- 九条道家~院政を布いた大殿~…井上幸治
- 西園寺公経~当世の重臣、比肩すべき人無し、諸事思うがごときの人なり~…山岡瞳
- 藤原秀康~鎌倉前期の京武者と承久の乱~…長村祥知
- 藤原定家~歌の切り棄て「かた腹いたや」~…谷 昇
- [コラム]動揺する仁和寺御室…金正文
- 執権政治をめぐる群像
- 源実朝~青年将軍の光と影~…坂井孝一
- 北条政子~朦朧の御台所~…黒嶋敏
- 北条義時~義時朝臣天下を并呑す~…田辺旬
- 北条泰時~東西文化を融合させた宰相~…菊池紳一
- 北条時房と重時~六波羅探題から連署へ~…久保田和彦
- 九条頼経・頼嗣~棟梁にして棟梁にあらざる摂家将軍の蹉跌~…岩田慎平
- 竹御所と石山尼~「家」をつないだ女性たち~…小野翠
- 三浦義村~八難六奇の謀略、不可思議の者~…真鍋淳哉
- 大江広元と三善康信(善信)~京・鎌倉をむすぶ文士のつながり~…佐藤雄基
- 宇都宮頼綱~京都で活動した東国武士~…野口実
- [コラム]鎌倉幕府と陰陽師…赤澤春彦
- 顕密仏教と禅律僧
- 慈円~法壇の猛将~…菊地大樹
- 聖覚~エリート学僧の挫折~…平雅行
- 定豪~鎌倉幕府の政僧~…海老名尚
- 円爾~公武の帰依と南宋文化~…原田正俊
- 叡尊~宗教的「平和」運動と鎌倉下向~…細川涼一
- [コラム]東大寺宗性――学僧多忙…横内裕人
鎌倉幕府は新たな権力として誕生したが朝廷を凌駕する権力として誕生したのではない。あくまでも一人の貴族である源頼朝の周囲を固める組織であり、国政の全権を握ることは前提となっていなかった。
その鎌倉幕府がいかにして国政を握ることになるのかは平安時代叢書のこれからを楽しみにしていただきたいが、ヒントを挙げるとすれば、本書である。本書に取り上げられている論文集である。
いかにして鎌倉幕府が強大となり、朝廷を凌駕するに至ったかのヒントが本書にはある。