本書について書き記す前に、二点、前提事項として記しておくべきことがある。
一点は、本書刊行が2013年、すなわち10年以上前であるということ。
もう一点は、ITと新社会デザインフォーラムがNTTデータと野村総合研究所という、日本のIT業界に身を置く人間であるならば絶対に無視することのできない巨頭がタッグを組んだ組織であるというということ。
以上二点である。
本書は、いかにしてIT企業の魅力を高め、社会における存在感を指し示し、短期的には多くの学生から魅力ある職業として認知され就職先に選ばれること、長期的には産業を創造し発展させ社会を豊かにする一翼をいかに担うかを検討して、提言した書籍である。
この書籍を10年後に読み返すと、本書の提言の少なくない部分が成就していることが読み取れる。IT企業に就職することを願う若者は多くなり、プロラグミングスキルを身につけるための塾も登場するようになった。就職してからスキルを身につけるのではなく就職する前にスキルを身につけ業界に飛び込んでいく者が多くなったのである。
さらに、他業種からの転職も幅広く見られるようになった。高校や大学でITに関する専門知識を学んだわけでもなく、何なら、そもそも在学中はここまでITが浸透していなかった時代であり、ITに関するスキルを身につけていた者が少数であるという時代に就職した者が、それまで身につけたスキルに加えてITに関するスキルを身につけ、双方を融合した人材となることで、社会における自らの強みを作り出して転職市場に流れてくることも珍しくなくなった。
この10年間の社会の移り変わりを振り返る前に本書に目を通すと、時代を創り出してきた者の汗と苦労が見えてくる。それは、この社会を以前よりも便利に、豊かにしてきた成果でもある。
