本書は令和改元直後の令和元(2019)年5月に発足した「令和の新教養」研究会における議論や、および、同研究会のメンバーの論考をまとめた一冊である。
令和改元以降としても、平成から続いていた「失われたn年」の問題は未だ収束せず、さらにその翌年からはCOVID-19が全世界で猛威を振るい、その後にはロシアのウクライナ侵略が発生している。
本書はその都度提言をしているが、1970年代あたりの経済学の知識しか持たない人がその提言を聞いたら、そして、本書を読んだら、憤怒極まりない内容と捉えるであろう。何しろ自分が信じてきたことが全否定されるだけでなく、その信念に基づく行動は無益どころか有害でしかないことが明言されているのだ。しかし、それは憤怒のほうが間違っている。緊縮策を良しとし、新自由主義を良しとし、脱成長を良しとする古い学説に従って行動してきた人達が生みだしたのが現代社会であり、学説が間違っていることに気づかず、あるいは気づいても間違いを認めることができないために直そうとせずにいたために、現在の日本はこのザマになってしまった。
しかし、本社は希望も存在している。
それまでが過ちであると主張する人が増えてきている。その人達が権力を握るようになった時代を迎えたならば社会は改善されるであろう。