近年、ITエンジニアになりたいという人が増えている。私もITエンジニアの一人として嬉しい話であるが、一方で、ITエンジニアになったあとのキャリア構築という点でまだまだルートの構築ができていないのが現実である。もっとも、ITエンジニアという職業はドラッカーの述べた知識労働者であり、ITエンジニアになったあとでどのような人生を過ごし、どのような仕事をし、どのような強みを手にして社会で生きていくのかは誰かの用意したレールの上を走るのではなく、自らルートを開拓しなければならない宿命を持っている。
本書は、ドラッカーの著作の中から抜粋して、ITエンジニアが日々を過ごすにあたってどのように学び、仕事に活かし、自らのキャリアを構築していくべきかを50のポイントに絞って挙げている一冊である。そのどれもがわかりやすく、実際にITエンジニアである私から見ても腑に落ちるところの数多いポイントである。
難点を挙げるとすれば、仕事をする上での具体例がさほどないということが挙げられるが、この世には幸いにして、ドラッカーの著作と主張をわかりやすく漫画でまとめている作品がある。平安時代叢書の作者としても名を刻んでいる德薙零己氏の「SE山城京一のドラッカー講座」がそれである。本書と並行して読み進めていくとより深く学ぶことができるはずである。
