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塩野七生著「海の都の物語:ヴェネツィア共和国の一千年・下(塩野七生ルネサンス著作集5)」(新潮社)

海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年(下)―塩野七生ルネサンス著作集5―

東地中海の絶対的な海の王者となったヴェネツィア共和国の前に、オスマントルコという強大な敵が現れる。海に生きるしかない小国家ヴェネツィアにとって、莫大な軍勢を抱えて海も陸も暴れ回るオスマントルコは驚異でしかなかったが、ヴェネツィアはそれでもどうにか持ちこたえる。

しかし、オスマントルコへの対抗に並行して大航海時代の到来がヴェネツィア共和国を襲いかかる。国家の全力をつぎ込んで守り抜いた東地中海の権益が、東地中海そのものの価値の低下によって失われていく。

ヴェネツィア共和国最大の要塞というべきクレタ島をめぐる戦いは四半世紀もの長きに亘って繰り広げられ、ついに陥落してヴェネツィア共和国クレタ島を失う。

ヨーロッパのトップレベルを走っていた技術も時代とともに失われ、貴族ですら物乞いを余儀なくされるほどにヴェネツィア共和国全体が徐々に貧困へと落ちていく。進取の精神が失われ、社会が徐々に保守化したヴェネツィア共和国は少しずつ平凡な国へとなっていき、ついにナポレオンの前に国家としての命運が終わることとなる。

ヴェネツィア共和国が国家としての隆盛を迎えた理由と衰退を迎えた理由がわかるなら、衰退を迎える理由を選ばず隆盛を迎える理由を選ぶことで繁栄を築き上げることができる。理論上は。

しかし、ヴェネツィア共和国は隆盛を迎えた理由と衰退を迎えた理由が同一なのだ。これではどうやって隆盛のみを選び衰退を遠ざけることができようか。