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数土直紀著「日本人の階層意識」(講談社選書メチエ)

日本人の階層意識 (講談社選書メチエ)

先に平等についてトマ・ピケティとマイケス・サンデルが語った書籍についての記事を公開した。

rtokunagi.hateblo.jp

さて、ここ日本において、日本人の中でどのような平等意識が形作られているかを考えるとき、合わせて考えなければならないのが、そもそも平等意識と対比をなす格差意識がどのようなものであるかという点である。本書はその概念を「階層意識」として調査し、分析した書籍である。

日本は長らく一億総中流という概念が流布していたが、その概念は時代とともに破壊されつつある。恵まれている人はより恵まれた暮らしを、そうでない人はそうでない暮らしを続けねばならなくなるだけでなく、そこには断絶が存在する。それも、上から下に落ちることを忌避し、下から上に上がることを上は徹底的に拒絶するという断絶である。

たとえば本書にあるように、学歴と職業の関係について考えてみると、日本人は学歴や職業に基づいて自分の階層を判断する傾向が強い。それこそ、10年前、20年前、30年前に卒業した大学名が自らのアイデンティティとなり、その学歴に応じた就職をすること、その職業であることを自らの寄って立つところとなることが珍しくない。

また、地域による階層意識も無視できる話ではない。東京や大阪などの大都市圏に住む人が当たり前と思っていることが地方では異なるし、大都市圏の内部や地方でも地域によって異なることが多い。

そして、個人の問題がある。特に競争社会を生き抜いている人、生き抜いてきた人は、自分の階層意識を高く評価する傾向が見られる。競争こそが自らの尊厳であり、競争に勝ち抜いたことが自己存在理由となることすらある。

平等を考えると公平ではなくなるが、その根底には、公平を求める意識があり、本書で言う階層意識が存在している。平等を成就させるためには階層意識を見つめ直さなければならない。その上で、階層意識の作り出す断絶を乗り越える環境を用意しなければならない。