日本の教育と学歴に焦点を当てた、1992年刊行の書籍である。つまり、30年前の学歴問題をまとめた書籍であり、必ずしも最新の社会問題についての考察を述べている訳では無いことに注意が必要である。
と同時に、現在学歴社会の構造がどうして現状のようになっているのかを知るための重要な一冊であるとも言える。現在の大学生や大学受験生と、その一つ上の世代、具体的にはバブル時代に大学受験を体験した世代とでは学歴に対する大きな溝があるように感じるが、その溝の理由についても本書を読むことで理解いただけるはずである。
本書では、士族の生きる道として学歴が必要になった明治維新後から、旧制中学・高校を卒業しても職業選択が難しくなった明治後半への変遷を詳細に描写している。学校教育の価値や学歴の価値がどのように形成されていったのか、興味深い視点で探求されている。その延長上に戦後の学歴社会があり、その後の形として現在の学歴社会がある。それらは断絶しておらず一つの流れとなっている。
本書は、日本の教育に興味を持つ人、そして、学歴社会に飛び込む人にとって貴重な一冊であるといえる。