いささめに読書記録をひとしずく

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永嶺重敏著「読書国民の誕生:近代日本の活字メディアと読書文化」(講談社学術文庫)

読書国民の誕生 近代日本の活字メディアと読書文化 (講談社学術文庫)

図書館司書であれば絶対に知っている英文がある。

  • Bools are for use.
  • Every person his or her book.
  • Every book its reader.
  • Save the time of the reader.
  • Library is a growing organimsm.

私が図書館司書資格をとったときは二番目が Books are for all. であったが、言わんとするところは同じである。

さて、読書というのは文字を読めればそれだけで可能となるものではない。読むべきものがなければ読めないし、読む時間がなければ読めない。

出版もまた製造業のひとつであり、製造物としての出版物は印刷して製本した場所、たとえば製本工場に近ければ近いほど手に入りやすく、遠くなると手に入れるのが困難となる。更級日記を思い浮かべていただければご理解いただけるであろうが、それは平安時代に限った話ではない。現在でも同じ雑誌であるのに地域によって店頭に並ぶ曜日が異なるというのがあるが、明治時代は図書や新聞、雑誌の流通事情が現在よりはるかに厳しく、東京の書店の店頭に並んでから一週間を経てもなお配本されていない地域があるのも珍しくなかった。おかげで、雑誌が懸賞文の募集するのに締め切りを設けても、地域によっては配本されたときにはもう締め切りを過ぎていて応募どころではなかったという例も珍しくなかった。読書欲を満たすだけのコンテンツに接することができ、全国的にほぼ同タイミングで書籍、新聞、雑誌が届くというのは、実は近年に入ってからの話である。

一方、忘れてはならないのが本を読む時間である。本を読む時間というのも、近年に入るまでは簡単に獲得できるものではなかった。特に問題なのが移動中。徒歩での移動が当たり前である時代、移動中に本を読むなど二宮金次郎しかできなかった。それが、鉄道の普及によって移動中の読書が可能になった。あるいは、移動中の退屈を紛らわせる必要が生まれた。周囲に騒音をばらまくことを気にしない人はしゃべることで時間をつぶすが、周囲二期を配る人はそのようなことなどしない。読書は周囲に迷惑を掛けない最高の時間つぶしになった。こうなると、書籍、新聞、雑誌を売るターゲットの中に、鉄道で移動する人が加わる。書店に足を運んでもらうのではなく駅の構内で売るのだ。

読書を成立させるには読書ができる環境を作り出さなければならない。作り出して、その環境下で書籍を、新聞を、雑誌を売る。そのビジネスを構築して、この国の出版業は発展してきた。

では、今後はどうなるか?

それはまだわからない。