德薙零己の読書記録

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清水洋著「アントレプレナーシップ」(有斐閣)

アントレプレナーシップ

アントレプレナーシップ。日本語では「創業者精神」と訳される概念は、現代のビジネスにおいて必要不可欠な概念であることに異論のある人はいないであろう。しかし、このように考える人は少ないのではないであろうか?

アントレプレナーシップは古代から変わることのない概念であり、古代から絶えず人類に存続し続けてきた概念である。その繰り返しが人類の歴史である、と。創業は何もビジネスに限定した話ではない。

政治においても、社会生活においても、創業者精神は消えることの無い概念である。それこそ、前例踏襲に拘り続ける社会であろうとも、創業者精神は消えることの無い概念である。平安時代叢書と題して平安時代歴史小説で全部書くということをしているから言えるが、有職故実に通じていること、すなわち前例踏襲のスペシャリストになることが良しとされる社会である平安時代でありながらも、各時代、各年代にアントレプレナーシップを発揮し続けてきた人達がいて、その人達が時代を作りあげてきた。その中には歴史に名を残すことない一庶民もいる。

そうしたアントレプレナーシップの発揮の結果が社会をより向上させるものとなる。現代のビジネスというのはアントレプレナーシップを発揮する局面がかなり多く、広く存在し、そして、アントレプレナーシップががより多くの成果となって戻ってくる環境であるために、ビジネスを学ぶ視点からアントレプレナーシップを学ぶことが多いが、アントレプレナーシップ自体はビジネスの専売特許であるというわけではない。

ところで、何度か書き込んだことがあるが、私はサッカーを観に行くとき、ホームなら1冊、アウェイなら2~3冊の本を持っていく。公共交通機関を乗り継いでのスタジアムまでの移動時間、そして、サッカースタジアムの観客席というのは、なかなかどうして、試合開始前は絶好の読書スペースなのである。ちなみに試合前の野球場の観客席で読書をすると打撃練習での打球が飛んでくるので危険であるのでお勧めしない。ただし、どんな本で向いているというわけではない。スタジアムにまで足を運ぶ理由の第一は試合を観ることであり、読書は副次的なものである。読書に没頭するようなことは許されないし、「n月n日までに読まねばならない本」という使命感を伴った書籍も許されない。

本書はそうした制約下のもとでも有用な書籍である。本書は細かな章立ての組み合わせで成立している書籍であり、タイミングに合わせて読書を中断させることが容易である。そして何より、アントレプレナーシップを学ぶことによって目の前で繰り広げられているフットボールプレイヤーやサポーター達の一つ一つがアントレプレナーシップの発揮であることを気づかされる。