私が本書を読み終えたのは2020年の大晦日、すなわち、COVID-19の猛威が吹き荒れた最初の年の大晦日である。
一方、原著 "The Future Is Faster Than You Think: How Converging Technologies Are Transforming Business, Industries, and Our Lives" の刊行は同年1月である。原著刊行時点では本書読んだならば、第1章に記された未来の交通事情や通勤事情に希望を抱いたと同時に未来のことと考えたであろう。
ところが、同年12月になって販売された邦訳を読んだとき、第1章に記された交通事情や通勤事情を実体験することとなった。
これは希望の結果ではない。
COVID-19が人類に絶望を叩き込んでいる最中に、人類がCOVID-19を退治するために生みだした抵抗の結果だ。
もっとも、第2章以降に記された今後の未来については希望を抱かせる内容になっている。その未来が実現したときの人類は必ずCOVID-19に勝利していると確認している。
未来とは絶望ではなく希望であるべきだ。そして本書は、希望を描き出している。本書は、指数関数的に加速するテクノロジーの波が、私たちの日常生活と社会全体にどのような影響を与えるかを調査している。そして、交通、小売、広告、教育、健康、娯楽、食品、金融など、私たちの生活のあらゆる部分をどのように改革していくのか、そして人類を未知の領域へと導き、私たちが知っている世界をどのように再構築していくのかを描き出している。
今後10年間で、私たちは過去100年以上の激変を経験し、より多くの富を生み出すだろうとしている。テクノロジーは想像をはるかに超えるスピードで加速しているとており、本書刊行から四年を経た現在、その大部分は成就に近づいている。
次の10年は前例のない大変革と富の創造の時代である、という著者たちの大胆な予測は、刺激的であると同時に恐ろしくもある。テクノロジーは想像をはるかに超えるスピードで加速している。このスピードを止めることはできない。できるのはテクノロジーの波に乗ることである。