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浅野和生著「ヨーロッパの中世美術:大聖堂から写本まで」(中公新書)

ヨーロッパの中世美術 (中公新書)

紙の書籍を買うか電子書籍を買うかの論争は答えの出ない論争であるが、本書の場合は明確な回答が出ている。

電子書籍である。

本書に掲載されている美しいカラー写真は電子書籍版であるからこそ詳細に味わうことができる。

中世ヨーロッパは暗黒の時代と評されることの多い時代でもあるが、宗教関係の美術はなかなかに鮮やかな美術が花咲いた時代である。絵画や彫刻の質について古代ギリシャ古代ローマと比しての低下を感じるところもあるが、それらを踏まえても、中世ヨーロッパ世界の彩りは今も残っている。

本書はこうした中世ヨーロッパの美術を、修道院、巡礼、聖堂、写本といったトピック単位にまとめて一冊にまとめた書籍であり、本日の記事の冒頭に挙げたように電子書籍で読むことによって、より詳細な描写を堪能できるはずである。

また、本書に記されているのは、聖遺物やイコンといったジャンルについてのエピソード、そして、観光案内である。本書刊行は平成21(2009)年7月のことであり、民主党恐慌の始まる前、COVID-19からは10年以上前、すなわち、民主党によって経済が破壊される前、健康上の懸念も気にすることなく、日本人がまだ海外旅行を気軽にできていた頃である。その頃の海外旅行を思い起こすという意味でも本書は貴重な一冊である。